#131 ポライトネスについて(3)
B&L(Brown & Levinson)のポライトネス理論では、具体的なポライトネス・ストラテジーとして、5つの主要な方略が挙げられています。ここでは、宇佐美(2002)をもとに、その内容を簡単に整理しておきたいと思います。
まず①は、フェイス侵害行為(FTA)の軽減を行わず、直接的な言語行動をとる場合です。緊急時など、簡潔に物事を伝えたほうがよい状況では、このような方略が選ばれます。たとえば、「お気を付けくださいますようお願い申し上げます。」よりも、「気を付けて!」のような表現が用いられるケースです。
②は、ポジティブ・ポライトネスです。相手の行動や性質を褒めたり、共通の関心を強調したり、冗談を言って相手を楽しませたりすることで、相手との心理的距離を縮めようとする方略です。
③は、ネガティブ・ポライトネスです。相手のフェイスを脅かす度合いを少しでも軽減するために、押しつけがましさを避け、相手に断る余地を与える表現が用いられます。たとえば、「傘を貸してください」よりも、「もし、よろしかったら、傘を貸していただけないでしょうか?」のような言い方がこれにあたります。
④は、伝達意図を明示的に表さず、ほのめかす方略です。依頼をはっきりと言語化せず、「今日、傘を持ってくるのを忘れてしまったんです……」のように状況を述べることで、相手に意図を推測してもらう形をとります。
そして⑤は、そもそもFTAを行わない場合です。傘を借りたいという意図を言葉にして伝えることも、ほのめかすこともしない、という選択です。
また、これらのストラテジーのどれを選択するかは、相手のフェイスをどの程度脅かすか、すなわち「フェイス侵害度(FT度)」に応じて決定される傾向があります。FT度があまりにも高いと判断される場合には、⑤のようにFTAそのものを行わないという選択がなされやすくなります。一方で、どうしても行わざるを得ない場合には、まず伝達意図を明示するか否かが分かれ目となります。侵害度が大きい場合には④のようなほのめかしといった非明示的なストラテジーが選ばれやすく、明示的に表現する場合には、①の直接的な表現か、②・③のようなFT軽減行為を伴う方略が用いられます。一般的には、侵害度が低い順に①、②、③が選択されやすいと整理できます。
参考
宇佐美まゆみ(2002)「連載:ポライトネス理論の展開(1–12)」『月刊言語』31.
keywords
[ポライトネス] [フェイス] [FTA(face-threatening act)]