#130 ポライトネスについて(2)
前回の記事に引き続き、宇佐美(2002)からまとめます。
取り上げたいのは、Brown & Levinson(以下 B&L)のポライトネス理論に対してよく向けられる、「文化差を考慮していないのではないか」という批判に対し、異を唱える形で提示されている「フェイス侵害度見積もりの公式」です。
B&L では、ある発話行為 X が相手にどの程度の負担をかけるか、つまり「フェイス侵害度(Wx)」は、次の3つの要因によって決まるとされています。それは、①話し手と聞き手の社会的距離(social distance, D)、②聞き手が話し手に対して持つ力関係(power, P)、そして③特定の文化において、その行為 X がどれほど負荷の高い行為と見なされているかという重み(Rx)です*。これを式で表すと、以下のようになります(Speaker を S、Hearer を H とする)。
Wx = D(S, H) + P(H, S) + Rx
ここで重要なのは、この公式の中に、「同じ行為であっても、その行為が相手にかける負担の見積もりは文化によって異なる」という発想が、すでに組み込まれている点です。
Rx が「文化ごとの絶対的な負荷の順位」に基づく重みとして設定されている以上、B&L の理論は、必ずしも文化差を無視しているわけではない、というのが宇佐美の指摘です。
次回からは、こうした考え方が、実際の言語行動の中でどのように見えてくるのか、もう少し具体的な例を見ながら考えていきたいと思います。
……と、ここまで書いたところで、今日はこの後、大阪・梅田へ。「いのほた言語学チャンネル」のトークライブ、スナック言語学 〜呑める!言語学の話〜 に参加してきます。楽しみです。
*Wxは行為XのWeightでWx, Rxは行為Xの位置づけ(Ranking)でRxと解釈しています。
参考
宇佐美まゆみ(2002)「連載:ポライトネス理論の展開(1–12)」『月刊言語』31.
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[ポライトネス] [フェイス]