#123 視線にみる理解
豊倉・山田(2017)では、これまで長く使われてきた「1秒4文字」という字幕のルールについて、その妥当性を実際に検証しています。具体的には、字数制限の異なる3種類の字幕(1秒4文字、6文字、8文字)を用意し、視聴者の視聴行動にどのような影響があるのかを、視線計測装置を使って測定しています。視線の動きは、字幕の情報を処理する際にどれだけ認知資源が必要かを把握するための重要な手がかりになるからだそうです。
結果として、「字幕部分に視線が停留する時間には、4文字と6文字のあいだでは差がないものの、4文字と8文字、6文字と8文字のあいだには差がある」ことが分かりました。つまり、1秒4文字という基準を6文字まで緩和しても、視聴行動や認知負荷に大きな変化は見られない一方で、8文字まで増えると負荷が高まり、視聴に支障が出る可能性が示唆されたというわけです。
論文では具体例として、
原文(Look, I came to Paris to escape American provincial.(2.5秒))に対して、
・4文字字幕:「パリで暮らしていても」(10文字)
・6文字字幕:「アメリカの田舎が嫌でパリにきた」(14文字)
・8文字字幕:「アメリカの保守的な価値観が嫌でパリにきた」(20文字)
といった形で、字数と表現の違いが示されています。また、実際に視線がどこに集中するのかについても図で紹介されており、私たちが普段まったく意識していない「どこを見ているのか」を可視化してくれるのがとても面白く感じました。
参考
豊倉省子, & 山田優. (2017). 字幕翻訳における文字数制限の妥当性についての検証〜1秒4文字は妥当か?〜. 通訳翻訳研究への招待, 18, 33–52.
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