#116 文字論について
まだ語用論学会で発表した内容について、いただいたコメントをもとに色々と考えています。
ソーシャルメディアでは、「(笑)」「w」「草」が状況に応じて使い分けられている可能性や、それぞれの機能を考えるうえで、これらを「文字論」として位置づけるとより説得力が増すのではないか、という指摘もいただきました。
正直、文字論という観点はこれまで考えたこともなかったので、堀田隆一先生の hellog の記事(2010-06-23 #422「文字の種類」)を参考に、ここで少し整理してみたいと思います。
堀田先生によれば、「文字体系を扱う分野を文字論(grammatology)と呼ぶ」そうで、古今東西の文字体系は〈文字と発音の関係〉から大きく次のように分類できるといいます。
まず、文字が発音に対応しない非表音文字(non-phonographic)と、発音に対応する表音文字(phonographic)。
非表音文字には、絵文字(pictographic)、表意文字(ideographic)(例:アイロンのマークは絵文字、禁止を示すバツ印は表意文字的)、そして表語文字(logographic)(漢字が典型的)がある。
一方、表音文字には、音節文字(syllabic)(日本語の仮名)と音素文字(alphabetic)(ギリシャ文字、ローマ字など)が含まれます。
また堀田先生は、これらの分類は歴史的な文字体系の進化の順序にも対応していると述べています。
こうしてみると、「草」はもともと「(笑)」(wara)から文頭の w が連続して www になる“視覚的な形” に由来し、その並びが草のように見えることから漢字の「草」が絵文字的に転用されたもの、と整理できそうです。つまり、草そのものを指しているわけではなく、共有された慣習の中で “笑い” を指し示す記号として再解釈されたケースだと考えられます。
その意味では、「草」は純粋な表意文字というより、視覚的イメージと慣習的な意味づけが結びついた「記号的な使われ方」が定着したものといえるかもしれません。ただ、絵文字のようなピクトグラムでもなく、語彙的な意味をもつ表語文字とも異なる、中間的な位置づけにあるようにも感じられ、ここは今後さらに考えていきたいところです。
参考
https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2010-06-23-1.html
keywords
[文字論]