#110 さまざまな情報収集のかたち
昨日は、外務省職員・外交官のお話の中で、特に印象に残った点をご紹介しました。その中でも強く心に残ったのは、外交の対象となる国についての情報収集には、HUMINTとOSINTという大きく二つのアプローチがあるという点です。
ざっくり言えば、HUMINTはHuman Intelligenceの略で、人との直接的なやり取りを通じて情報を得る方法を指し、OSINTはOpen Source Intelligenceの略で、テレビなど公に発信される報道を通じて情報を収集する方法を指します。そうした中で、外交の現場では案外OSINTが重視されているというお話に、個人的にも強い興味をひかれました。
そこには、おそらくテレビ報道がいまだに人々の世論形成に大きな影響力を持っているという背景があるのだと思います。また、テレビで報じられるということ自体が、「公」を意識した情報の切り取りであり、それはその時代の社会のあり方や価値観を反映したものでもある可能性が高いと感じました。
多々良(2017)は、「メディア報道というものは、出来事のある側面を特定の視点から取捨選択しながら描写しているため、文化により同じ出来事が異なる『物語』へと編集されていると言うことができる」と指摘しています。この視点は、OSINTの意味を考えるうえでも示唆的です。
さらに、このような情報収集のあり方が、技術革新によって変容してきたことも、のちに調べて分かってきました。福田(2016)は、情報収集の手段について次のように述べています。
「この情報収集のためのインテリジェンス活動の手段にはさまざまなものがあるが,その基本は人が直接的に組織や集団の中で活動しながら情報収集する、いわゆるスパイ活動のようなHUMINT(Human Intelligence)であった。新聞や雑誌、またはテレビやラジオのような放送メディアや政府関係資料、学術情報などの公開情報をもとにしたOSINT(Open-Source Intelligence)も重要な情報収集である。その後、情報技術の進化により、有線、無線の通信技術や衛星技術を用いた情報通信の傍受を行うSIGINT(Signals Intelligence)がインテリジェンス活動の主流となった。さらには、人工衛星や監視カメラ等の技術による画像収集を行うIMINT(Imagery Intelligence)も技術の進化に伴い、発展し続けている。」
こうして見てみると、情報収集の手段はますます複雑化していることがわかります。私たちは、こうした多様なアプローチの存在を意識しながら、それらをどのように組み合わせて理解すべきなのか、そもそも「真実」とは何なのか、そして本当に偏りのない見方など存在しうるのか…そんなことまで考えさせられてしまいます。
参考
多々良直弘(2017)「報道の社会言語学」井上逸兵編『社会言語学』61-81. 朝倉書店
福田充(2016)「メディアの進化と『危機管理』化する社会」『マス・コミュニケーション研究』89, 45-60.
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