#104 Mistletoeとヤドリギ
11月後半になると、自然とクリスマスソングを聴くことが増えてきます。この時期は、毎年の楽しみとしてNetflixのクリスマス映画の新作を観るのも恒例になっています。
クリスマスソングの中でも、毎年必ず聴いているのが、ジャスティン・ビーバーの “Mistletoe” です。ただ、この曲の邦題は「君とホワイト・キス」で、なかなか思い切った意訳になっています。原題の “Mistletoe” は日本語で「ヤドリギ」。実はこの言葉、英語のクリスマスソングにはたびたび登場します。
ジャスティン・ビーバーの曲では “But I’ma be under the mistletoe” “With you, under the mistletoe”
また、Ed Sheeran と Elton John のMerry Christmas(これまた大好きな曲!)では “So kiss me under the mistletoe” “So just keep kissing me under the mistletoe”
さらに、Kelly Clarkson & Ariana Grande が歌う Santa, Can’t You Hear Meにも “Keep the mistletoe” というフレーズが出てきます。
「君とホワイト・キス」という邦題になったのは、日本ではヤドリギが、クリスマス、またはその下でキスをする習慣との結びつきが、すぐには想像しにくいからなのだろうと思われます。
そもそもヤドリギとは何か。Wikipediaによれば、ヤドリギは寄生植物で、地面に根を張らず他の木の枝の上に生育する常緑の多年生植物だそうです。他の樹木の幹や枝に根を食い込ませて成長しますが、一方的に養分や水を奪うわけではなく、自らも光合成を行う「半寄生植物」であるとされています。常緑であるため、冬に寄生先の木が葉を落とすと、その姿がよりはっきりと見えるようになります。
そのことから強い生命力の象徴として、西洋・東洋を問わず神が宿る木と考えられていたとも言われています。特にセイヨウヤドリギについては、北欧の古い宗教観に基づき、映画や文学にもたびたび登場し、クリスマスにヤドリギを飾り、その下でキスをするという習慣があるそうです。
こうした背景を踏まえると、私たち日本語話者は、ヤドリギに対する認知言語学でいうところの「百科事典的意味」を十分には共有していないのではないかと感じます。
野村(2014)は意味について、「意味はことばの内にあるのではなく、言語使用者の頭/心の中でさまざまな知識を動員して構築される。ことばは、そうした知識体系へのアクセス・ポイントにすぎない」と述べています。
たとえば「父」ということばの意味を考えると、その必要十分条件は〈男性・一世代上・直系〉といった特徴で定義され、これは「辞書的意味」と呼ばれます。一方で、〈外で働き、家のことは母親に任せがち〉〈住民票では世帯主として記載されるのが普通である〉〈年頃の娘に疎まれがちである〉といった、その語が指し示す対象にまつわる知識は「百科事典的意味」と言えるでしょう。
私はこの百科事典的意味の差を見る際に、画像検索が有効だと授業でよく話します。実際、「ヤドリギ」と日本語で検索した場合と、“mistletoe” と英語で検索した場合とでは、以下に添付するように、出てくるイメージが明らかに異なっていました。
そんなふうに英語のクリスマスソングを聴くうちに、私の中ではMistletoeとクリスマスの距離が少しずつ縮まってきたように感じます。そして今、Mistletoeのブローチを買おうかな・・・とひそかに探しているところです(笑)
ヤドリギ検索結果
日本語で調べると木に寄生しているその様子が映し出されることが多い。クリスマスとの繋がりは薄いことが分かる。
Mistletoe検索結果
サイトの国を制限していないので、日本語の記事も出てきてしまうが、一気にクリスマスらしさが読み取れる。