#56 おかしマジックのすすめ
昨日の国際ビジネスコミュニケーション学会のシンポジウムでは、「プロジェクトベースの国際共修:大学教育とビジネスの交差点」というテーマのもと、3人の先生方が登壇されました。それぞれ「ビジネスコミュニケーション」(柴田真一先生)、「国際共修」(村田和代先生)、「トランスランゲージング」(山本綾先生)について、具体的な事例を交えながらお話しされていました。
三者に共通していたのは、外国語の知識を運用する力の重要性に加えて、その習得を支える異文化理解や対人関係の機能面への意識やそうしたマインドセットの大切さだったように思います。国際共修(intercultural collaborative learning)の授業実践では、共通の目的に向かってプロジェクトを進める中で、さまざまな言語を交えながら課題を達成していく様子が紹介されていました(PBL; project-based / problem-based learning)。その成功の鍵の一つとして「雑談」に言及されていたのが印象的でした。
村田(2023)では、雑談について次のように説明されています。
「雑談」の対極を仮に「正談」と名付けることにします。正談は、情報伝達や問題解決を中心としたタスク遂行のための会話である一方、雑談は対話の相手との関係性を構築・維持し、参加者間のラポール形成(共感を伴う心理的なつながり)を促進し、場の空気を作ることを優先した会話です。
また、「雑談とそうでない談話は二項対立というよりは連続性があるととらえることができます」とも述べられています。
村田先生の実践はまさにこの連続性を大切にしており、授業の中でも「共食」の時間を設けたり、学生にそのような時間を取るよう促したりしているそうです。
先生はこれを「おかしマジック」と呼ばれていました。
「食」と「雑談」は、人と人との関係をつむぐ役割を果たす。そのことを、ご自身の経験を通して語られていました。たとえば大学院時代、ミーティングルームでのモーニングティータイムが自然と業務の相談や協働を促したこと。また、まちづくりの話し合いの場で、地元のお菓子が並ぶだけで「これ、あのお店のですよね」「見た目もきれいですね」「私も好きなんです」といった会話が生まれ、意見が言いやすくなったり、相手の話をもっと聞こうという姿勢が生まれたというお話も印象的でした。
そんな素敵な「おかしマジック」を、私も授業の中や日常の中で少しずつ取り入れていきたいなと思います。
参考
村田 和代(2023)『優しいコミュニケーション ― 「思いやり」の言語学』岩波新書.
Mog-lab. (2023年7月). 「円滑なコミュニケーション」の秘密は「食」にあり。〜社会言語学からの考察.
取得先: https://mog-lab.com/2023/07/post-268.html