#66 談話について
今日は、談話分析(discourse analysis)の定義を少し整理しておこうと思います。
橋内(1999)によると、談話分析は1960年代から1970年代初めにかけて、言語学だけでなく哲学・心理学・社会学・文化人類学・人工知能研究など、隣接する学問領域での言語コミュニケーション研究から生まれたものです。
談話というレベルで言語分析を行おうとする点では、文法研究の中心である統語論(syntax)の上位に位置し、文脈(context)との関係で言語を捉える点では発話行為論(speech act theory)を含む語用論(pragmatics)と部分的に重なります。さらに、参加者や話題など、言語形式以外の要素も取り込みながら言語を総合的に研究する点で、社会言語学(sociolinguistics)とも深く関わっています。
『明解言語学辞典』によれば、談話とは、複数の文や発話から構成される言語使用の単位であり、通常は単一の主題に関するまとまりを指します。単一の話者による独話や、不特定多数の聞き手を対象とした言語使用も含まれ、この点で会話(conversation)や対話とは区別されます。
一般言語学における談話の概念は、マイケル・ハリデーの体系機能言語学(Systemic Functional Linguistics)によって確立されました。ハリデーは、語のネットワークや範列的関係に注目し、言語を意味構造の表象として捉えました。語や文法構造は、談話の目的に応じて複数の候補の中から選択され、その対比関係が言語の意味を構築するという考え方です。
現在の言語学における談話分析は、コーパス言語学におけるテキスト分析、機能主義的文法分析、語用論的分析、そして社会言語学的な言語使用分析という、大きく4つの流れに分かれています。
参考
橋内 武(1999)『ディスコース――談話の織りなす世界』くろしお出版.
斎藤純男・田口善久・西村義樹(編)(2015)『明解言語学辞典』三省堂.
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