#65 千本ノックはじめました
今学期の英語の授業では、新しい試みとして「千本ノック」を取り入れています。初めての導入なので、私自身もまだ試行錯誤の真っ最中。学生たちにもそのことを伝えたうえで、実験的に楽しみながら練習しています。教室では、声の大きさや表情からも「けっこう楽しんでくれているな」と感じる場面が多く、少しほっとしています。
実はこの記事は一日遅れで書いています。というのも昨日、同研究室の仲間たち、そして千本ノック形式をすでに授業に取り入れている篠原俊吾先生も含めた集まりがあり、夜まで興奮冷めやらぬ時間を過ごしてしまったからです。初めてお目にかかれたのですが、授業のお話をうかがうことができ、とても嬉しく刺激的でした。
私が使っているのは、スティーブ・ソレイシィの『新装版 英会話1000本ノック 入門編』です。ノックには、英語で問いかけて英語で返す「英→英」パターンと、日本語のノックに対して英語で返す「日→英」パターンがあります。1000組の「ノックとリターン」のペアを音読・暗唱しながら、学習者同士が交代で練習する仕組みです。授業では、ペア練習の前に全体で気持ちを込めた音読を行い、声に出すリズムを全員で共有する時間を大切にしています。
たとえば、こんなやりとりです(ノック→リターン)。
See you Monday at 10 in the morning. → See you then.
Be careful of the typhoon. → Thanks. You too.
Oh! Yesterday was my 40th birthday. → Congratulations!
こうした練習の意義を学生たちに伝えたくて、千本ノック形式そのものに言及した研究を探してみましたが、意外にもほとんど見当たりませんでした。ただ、斉藤孝先生の著書の中に、関連する記述がありました。斉藤(2000)は、子どもから老人まで誰もが英語で簡単な日常会話ができるという西サモアに注目し、その英語教育の実態を紹介しています。そこでは、「とにかく大きな声で例文を暗唱する回数が桁違い」であり、その組み合わせを変えて何百回も声に出して練習するのだそうです。授業は全員が立ったままで行われ、教師が大きな声で発音し、それをクラス全員が反復する。ときにはグループごとに分かれて声を合わせるなど、徹底した身体的な反復練習が行われています。
斉藤は、自身が日本のことを英語で説明した際に、サモアの学生たちがそれをしっかり理解していた経験から、この「千本ノックのような授業」こそが、万単位のからだを使った反復練習の価値を確信させたと述べています。彼はまた、勉強はスポーツの上達と同じ構造を持つと考え、しっかりとした基本を設定し、それを千単位・万単位で反復することの大切さを、教育の根幹として強調しています。
ただ一方で、もしその「基本」や「型」が十分でない場合には、こうした徹底的な反復が思わぬ弊害を生みかねないため、誠意のある教師ほど、反復練習の極端な実施にためらいや慎重さを抱きがちになるとも述べています。
参考
斉藤孝(2000). 『身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生』NHKブックス.
スティーブ・ソレイシィ(2010)『新装版 英会話1000本ノック 入門編』コスモピア.
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[千本ノック] [英語教育] [反復練習]