歌舞伎座でご覧いただける芸術品をご紹介します。
劇場のイヤホンガイドでも幕間(休憩時間)に音声にてご案内いたします。
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当月の逸品
かわばたりゅうし
川端龍子(1885-1966)
あおじし
青獅子
昭和25年
イヤホンガイドの幕間放送でご紹介いたします👂
歌舞伎座1階ロビー ショーケース
話題の映画『国宝』は、ひとりの歌舞伎俳優が「人間国宝」と呼ばれる存在へと歩んでいく姿を描いた物語です。 厳しい稽古を重ね、伝統を受け継ぎ、舞台の上でその芸を極めていく——。その過程は、現実の「人間国宝」が歩んできた道と重なります。
「人間国宝」とは、歌舞伎や能などの芸能、陶芸・漆芸・金工などの工芸の分野で、 演じること・作ることを通じてしか伝えられない日本のわざを極め、次の世代へ継承する人々です。その高度な技を認められた人だけが、この称号を与えられます。
2025年夏、新たな「人間国宝」に認定されることとなった工芸家お二人の作品をご紹介します。
★一階ロビー 東側 イヤホンガイドカウンター前 ★
金属を打ち、削り、刻むことで生まれる精緻な造形。奥村さんは鍛金・彫金を自在に操り、文化財修復にも携わるなど、伝統と未来をつなぐ金工の匠として高く評価されています。
1995年 第42回日本伝統工芸展 文部大臣賞受賞(文化庁買上)
2007年 第36回伝統工芸日本金工展 文化庁長官賞受賞
2012年 第52回東日本伝統工芸展 東京都知事賞
2016年 第45回伝統工芸日本金工展 宗桂会賞
2017年 第57回東日本伝統工芸展 東京都知事賞
2023年 第70回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞
2024年 第52回伝統工芸日本金工展 MOA美術館賞
ろうぎんじしんせいせきるこばこ
祈りをかたちにした匠
アフガニスタンのバーミヤンの失われた石仏の「再生」への祈りを込めた小匣。
そこには、伝統の彫金技術と素材への深い理解が注がれています。
刀装具にも使われた合金の美
地の灰色には、銀と銅を配合した合金「朧銀(ろうぎん)」を使用。配合比率によってグレーの濃淡が変化し、自然に浮かぶ白い“ふ”のような表情が魅力です。
「四分一(しぶいち)」――銅3:銀1の割合の、銅をベースにした伝統的なこの合金は、日本刀の装飾などの金工の地金として用いられてきました。
希少な青の美しさ
ラピスラズリは、青一色が大変珍しい石。古来、日本画の顔料としても重宝され、時を経ても色褪せません。
この作品では石に穴を開け、金の釘を打ち込んで留めるという高度な技が施されています。
金を操る匠の技
金を糸のようにねじって柄を縁取るのは「撚線象嵌(よりせんぞうがん)」という技術。細く均一にねじった金線をつぶさずに地の金属へはめ込む、至難の技法です。
さらに、水玉のあしらわれた金の部分には「布目象嵌(ぬのめぞうがん)」が用いられています。地金に縦横斜めの細かい溝を刻み、厚めの金箔を食い込ませて留める方法で、古代から刀装や装飾品を彩ってきました。
金の水玉模様は、アルミ箔ほどの厚さの金箔から一つひとつ切り抜いたもの。 伊勢型紙を彫る錐(きり)を用いたものですが、刃が金に負けて傷むほどの作業を繰り返し、この繊細な表情を生み出しています。
エキゾチックな異国の雰囲気を漂わせつつ、日本の緻密な彫金の伝統が息づくこの作品。奥村さんならではの現代の祈りと古典技法の響き合いをご堪能ください。
★一階ロビー 西側 ドリンクコーナー前 ★
石川を拠点に九谷焼の可能性を切り拓いた陶芸家。 銀箔を釉薬の下に施す「釉裏銀彩(ゆうりぎんさい)」を確立し、繊細な色釉と銀彩の輝きを融合させました。 その作品は、光を透かすように輝く幻想的な美で知られています。
1982 第29回 日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞
1990 第37回 日本伝統工芸展 文部大臣賞
2010 第57回 日本伝統工芸展 日本工芸会保持者賞
2011 紫綬褒章
2019 旭日小綬章
すみじしおんゆうりぎんさい つぼ
銀は"九谷焼"に向かない?
すぐに酸化し黒くなってしまう銀は、「焼き物の世界では扱うのが難しい」素材の一つ。ですが、この作品では銀の輝きの美しさを保ち続けています。
九谷焼に革新をもたらす
中田一於さんは扱いにくかった銀を透明な釉薬(うわぐすり)で封じ込める技術を生み出しました。この工夫によってはじめて、九谷焼でも銀は変色せずに輝きを保ち続けることができるようになりました。
その評価は「人間国宝」に
中田さんが確立したこの技術「釉裏銀彩(ゆうりぎんさい)」は、磁器の世界に銀の輝きを取り入れた画期的な技法として高く評価。この功績を認められて「人間国宝」と認定されたのです。
ペーズリーのリズムと色彩
この作品は中田さん自身が好きなペーズリー柄をモチーフとしたもの。大小さまざまなペーズリー柄の銀箔をランダムに組み合わせ、動きのある構成をつくり出しています。さらに縁には細やかな文様を刻み、釉薬を重ねることで、深みのある表情が生まれました。
“お気に入りの一作”
紫苑色を重ねることで深みのある輝きを放ち、幻想的な表情を見せています。「今までの自分の作品とは違うが、特に気に入っている」と中田さんが語る、思い入れの強い一作です。
イヤホンガイドではMAKU-AI美術館として、毎月館内の展示品についてご紹介してまいります。
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