各講義は、8月24日 (月) 〜 8月28日 (金) の期間中、以下の時間割で行われます。各時限から授業を1つ選び、受講してください。参加期間中は自由に受講科目を選択・変更することができます。
*1コマ100分 × 5日間
* 対面中心ハイブリッド方式
*1コマ70分、4日間
*オンライン形式
*一般コース講師によるオムニバス
コーパス言語学(初中級)
淺尾仁彦(情報通信研究機構)
テキストデータを自在に扱うために
言語研究にコーパスを用いることの意義や限界を考えるとともに、テキストデータを扱うための実践的な技術を学びます。特定のツールの使い方ではなく、テクノロジーが世代交代しても色褪せない基本的な考え方を身につけることを目指します。具体的には、テキストデータの高度な検索や編集、頻度の取り扱い、プログラミングやAIの活用などのトピックを扱います。
フィールド言語学(中上級)
古本真(帝京科学大学)
現地調査の方法・姿勢・射程
この講義では、話者とのインタラクションを中心とした現地調査の進め方、倫理的配慮、データの扱いなど、フィールド言語学の実践に必要な基礎的知識と方法論を学びます。あわせて、慣れない環境での生活や他者との協働に伴う困難や課題についても考えます。現地で話者と向き合うことで得られる知見と、現地調査という手法がもつ限界についても検討します。
認知言語学(初中級)
渋谷良方(金沢大学)
認知言語学の基礎と発展
本授業では、認知言語学の基本的な考え方とその発展を学びます。言語と認知の関係を手がかりに、ことばの仕組みや意味の成り立ちを理解し、社会の中で言語がどのように使われ、どのように変化していくのかを考えます。さらに、実際の言語データにも触れながら、現代の認知言語学の広がりとその可能性への理解を深めます。
音韻論(中上級)
時崎久夫(札幌大学)
句と複合語の音韻論:形態統語論・類型論との接点
句や複合語の音韻について、統語論・形態論との関係を中心に考察します。これまでの理論を解説し、より簡潔で広範囲の現象を扱える説明を目指します。英語・日本語や世界の言語を対象とし、言語類型論的なアプローチから言語普遍性を探ります。生成文法を基本としますが、予備知識のない方にもわかりやすく講義します。
言語類型論(中上級)
江畑冬生(新潟大学)
言語特徴の抽象化とタイプ分けを世界の言語の具体例から考える
言語類型論では、表面上は大きく異なる世界の諸言語の特徴を抽出・分類し、その範囲や傾向を見出そうとします。記述言語学や対照言語学と相性が良い一方で、多くのことを知れば知るほど断言しにくいというジレンマもあります。講義では、主に形態論と統語論の幅広い分野のトピックについて具体例を挙げながら検討します。
心理・神経言語学(中上級)
〈前半〉広瀬友紀(東京大学)・〈後半〉太田真理(九州大学)
〈前半〉心理言語学入門:人はどのように言語を理解するのか
人はどのように言語を理解するのか、それは母語と第二言語ではどう異なるのか、音声、語彙、統語のさまざまな段階について考えてみましょう。初学者を想定とした講義形式が中心のスタイルとなりますが、実際の研究にも触れながら議論を行う機会も設けたいと思います。
〈後半〉脳が教える言葉の仕組み
本講義では、初めて神経言語学を学ぶ人を対象に、人間が言葉を使うときに脳で何が起こっているのかを、実験によって調べる方法を学びます。脳の働きを調べる実験方法や、データ分析に必要な統計の基礎も解説した上で、音韻論、形態論、統語論、意味論に関する研究を取り上げながら、言語と脳の関係について考えていきます。
日本語文法(初中級)
大江元貴(青山学院大学)
周縁から迫る日本語文法
本講義では、文法研究では周縁に置かれがちな「韻律」「身体」「場面」といった談話をとりまく諸要素に着目し、これらがいかに日本語文法と結びついているかという問題を掘り下げて考えます。文法と談話の接点を記述・理論の両面から探るとともに、談話から文法現象を発掘し説得的な記述へとつなぐ方法論についても議論します。
生成文法(初中級)
瀧田健介(同志社大学)
生成文法の考え方と統語分析の面白さ
生成文法の基本的な仮説群や特徴的な発想法について整理し、その具体的な例としていくつかの統語的現象の分析を紹介・検討します。こちらから理論や概念を提示するだけでなく、受講者が自分で分析や反証をしてみることで、より実際の研究現場での活動に近い形でその面白さが実感できるようになることを目指します。
音声学(初中級)
五十嵐陽介(国立国語研究所)
音声データの見方・測り方・確かめ方——聴取と音響分析を往復する音声学入門
本講義では、音声学の多様なアプローチのうち、耳での観察(聴取)と記録されたデータの計測(音響分析)を往復する進め方に焦点を当て、言語音を記述・分析するための基礎を学びます。具体的には、(1) 調音の仕組み(どこで・どう作るか)、(2) 音響の手がかり(波形・スペクトログラム・F0等)、(3) 分節音と韻律という3本柱を、実データの観察と簡単な分析練習を通して整理します。さらに、「測って終わり」でも「聞いて終わり」でもなく、聞こえの判断と計測結果を突き合わせて検証する観点から、測定値の読み違えや「見えているもの」と「聞こえているもの」のずれが生じる典型例も扱います。そのうえで、分析の信頼性を上げるための基本的な注意点(ラベル付け、条件統制、再現可能性など)を整理し、音声学的な観察と計測結果を研究上の根拠として提示する際の要点を確認します。
語用論(初中級)
椎名美智(法政大学)
語用論研究のための基礎知識を身につける
語用論は「言葉の意味を探る」という点では意味論と重なる部分がありますが、実際に使用された言葉に注目するという点で、意味論とは異なる視点も持っています。本講座では、語用論的分析に必要な基本的な理論的概念や方法論について概説します。必要に応じて、基礎的な文献を読んだり、データを分析したりする予定です。
形式意味論(中上級)
水野輝之(お茶の水女子大学)
形式意味論の考え方:道具立てとその背景
形式意味論の土台をなす道具立て(真理値、モデル理論的解釈、ラムダ計算、可能世界等)を、それらの歴史的な背景とともに深く学ぶ。形式意味論を一度勉強したが、もう一歩理解を先に進めたい、形式意味論の論文への解像度をもう一段階上げたい、という人にとって、最適な場を提供することを目指す。
方言学(初中級)
髙城隆一(富山大学)
言語の地域差を読み解く視点と方法
日本と世界の方言研究の歴史と成果を振り返り、言語の地理的変種の実態や研究手法について学びます。その上で、講義担当者の主な研究対象である九州南部方言など日本国内の事例を中心に、具体的な言語現象について議論します。さらに、社会言語学など隣接分野との関わりにも触れ、方言学の射程と可能性を考えます。