「春が来ると、あの服を思い出す。」
― シェリーのその先に、MICELLEが描いた一年という物語 ―
「春が来ると、あの服を思い出す。」
― シェリーのその先に、MICELLEが描いた一年という物語 ―
「シェリー、今年もよく売れました。」
展示会が終わるたびに、そんな報告が届く。
ブランドにとって、それ以上に嬉しい言葉はない。
もちろん、秋冬にも売れる商品はある。
追加生産になる品番もある。
決して、秋冬が弱いブランドではない。
それでも。
MICELLEのデザイナー、三間啓子さんの心には、ずっと消えない小さな違和感が残っていた。
春になると、お客様はシェリーを思い出してくださる。
「あのシリーズ、今年も始まりましたか。」
そんな声が届く。
シェリーは、いつの間にか商品ではなく、季節の訪れを知らせる存在になっていた。
では、秋冬はどうだろう。
良い商品はある。
売れている商品もある。
けれど。
「あのシリーズが始まったら、秋が来る。」
そう思っていただける存在は、まだ生まれていなかった。
「次は何ですか?」
その問いは、新商品を待っているのではない。
ブランドの”次の定番”を待ってくださっている。
三間さんは、そのことに気づいていた。
だからこそ、
簡単に次の商品を作るわけにはいかなかった。
ヒット商品をつくることは難しい。
でも、本当に難しいのは、その次である。
売れた理由を分析することはできる。
色を変えることもできる。
形を変えることもできる。
流行を追いかけることもできる。
けれど。
それだけでは、ブランドは育たない。
ブランドとは、
何を新しくするかではなく、
何を変えずに守り続けるかで決まる。
シェリーが支持された理由。
それは麻調素材ではなかった。
ドルマンでもなかった。
ポリエステルでもなかった。
その奥にあった、
「大人の女性は、上質さと快適さを、どちらも諦めたくない。」
という想いだった。
その想いは、
春夏だけのものではない。
秋冬にも、きっとある。
開発は、流行を探すことから始まらなかった。
冬の服は、
なぜ重いのだろう。
なぜ肩が凝るのだろう。
なぜ暖房の効いた室内で汗をかくのだろう。
なぜ洗えないことを、当たり前だと思っているのだろう。
何十年も続いてきた”冬の常識”を、
一つひとつ疑うことから始まった。
「冬だから仕方ない。」
その一言で終わらせたくなかった。
服は、
誰かに我慢をさせるためのものではない。
毎日を、少しだけ心地よくするためにある。
その答えを探し続けた先に、一つの素材が生まれた。
その素材に、
SHEALU(シェアル)
という名前を付けた。
shear。
ease。
luxury。
起毛の美しさ。
洗えるという気軽さ。
そして、贅沢な着心地。
けれど、
三間さんたちが届けたかったのは、
素材ではなかった。
思想だった。
春夏のシェリーが、
「麻に見えるのに、ポリエステル」
だったように。
シェアルは、
「ウールに見えるのに、ポリエステル」。
見た目か。
機能か。
その二択を、お客様に選ばせたくなかった。
美しさも。
心地よさも。
どちらも手放さなくていい。
それが、MICELLEらしさだった。
ここで、多くのブランドなら、
「シェリーを超える商品を。」
と考えたかもしれない。
でも、MICELLEは違った。
超えようとはしなかった。
競争もしなかった。
シェリーは春夏。
シェアルは秋冬。
同じ思想を、
違う季節へ届ける。
ブランドとは、
代表作を更新し続けることではない。
代表作の思想を、
時代や季節が変わっても届け続けることなのだ。
シェリーが育った理由は、
商品が良かったからだけではない。
企画。
生産。
営業。
販売。
みんなが、
「これはブランドの柱になる。」
そう信じていた。
だから、お客様にも伝わった。
ブランドは、
デザイン室で完成するものではない。
工場でも完成しない。
展示会でも終わらない。
売場で育ち、
お客様の暮らしの中で、
ようやくブランドになる。
だから、シェアルも、
まだ完成していない。
本当に完成する日は、
売場でスタッフの皆様がその価値を語り、
バイヤーの皆様がその未来を信じ、
そして、お客様がこう言ってくださる日だ。
「今年も、あのシリーズが始まる季節ですね。」
その一言が聞けたとき、
シェアルは、商品ではなく、
季節になる。
春になると、
シェリーを思い出す。
秋になると、
シェアルを思い出す。
そんな一年を、お客様へ届けたい。
それは、売上を伸ばすためだけではない。
一年を通して、
お客様との信頼を途切れさせないためである。
春夏だけではない。
秋冬だけでもない。
四季を通して、
「MICELLEらしい。」
そう感じていただけるブランドへ。
シェアルは、
シェリーの後継者ではない。
春から秋へ。
一枚の服から、一年という物語へ。
MICELLEというブランドを完成させるために生まれた、
新しい主人公なのである。
※本ページは
A.WORKS 細川勝史による
ヒアリングとデータ分析をもとに構成されています。
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