「環境調和」を大きなコンセプトとして、二酸化炭素の利用や植物由来原料など入手容易で豊富な資源を原料とする高分子材料の開発を目指しています。また、形状記憶性、自己修復性、ケミカルリサイクル性を有する高分子を無溶剤や水系、光照射によって合成する研究に取り組んでいます。4R(リデュース・リユース・リサイクル・リニューアブル)を目指した新しい機能性高分子材料の開発をテーマとして研究する中で、環境に配慮した材料開発への興味や意識が高まることを期待します。
変形・修復できる3Dプリンター用液状樹脂
ウレタンメタクリレート類は光硬化性モノマーのひとつであり、それらを含む光硬化性樹脂はウレタン基の水素結合に基づく分子間力によって優れた機械強度を示すことが知られています。 本研究では、外部刺激に応答して自己修復や形状記憶などの挙動を示す光硬化性樹脂を種々のヒドロキシウレタン誘導体から合成し、3Dプリンター用造形材としての応用を目指します。
キーワード: ウレタンメタクリレート; ヒドロキシウレタン; ソフトマテリアル; 光硬化性樹脂; 形状記憶; 自己修復
傷ついても修復し、壊れても再生できる光学材料
近年、カーボンニュートラルや海洋プラスチック問題を解決するために、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みが改めて注目されています。しかし、リユース可能な耐久性に優れる材料が廃棄物となった場合、それらをリサイクルするために大きなエネルギーが必要であることが問題です。本研究室では、高い耐久性とともに容易に分解可能な高分子材料の開発を目指し、優れた光学特性や機械特性のみならず、自己修復やケミカルリサイクル可能なポリジチオウレタン(PDTU)を創出してきました。
ジイソチオシアナート類とジチオール類に触媒量の塩基を添加して室温で反応を行うと重付加が進行し、対応するポリジチオウレタン(PDTU)が合成できます。一方、このPDTUは加熱によって低分子量体に分解されますが、室温で再度反応させることで分解前と同程度の高分子量体に再生されるため、ケミカルリサイクル可能なポリマーと言えます。さらに、このPDTUを素材としたポリマーフィルムが高い透明性や屈折率などの優れた光学特性および高い延伸性や柔軟性などの優れた機械特性を示すだけでなく、切断された断面を互いに押し当てると数分程度で接合し、常温常圧下で1日以上静置することで切断部が完全に修復します。
キーワード: ポリジチオウレタン; 自己修復; ケミカルリサイクル; 高屈折率ポリマー; 光学フィルム