CLのH田でございます。パーティとしては二度目の南アルプスは,黄金のルートたる白峰三山縦走となりました。天候にこそ恵まれるタイミングは少なかったものの,イベント・行動ともに学びある良き山行になったかと思います。というかそうあって欲しい。ちなみにこのBLOGは山行から長くたってから書いているがため,記録に残していた肝要なイベント以外のこまやかな心象の描写に欠ける点についてはご容赦願います。
参加者:H田(CL),Tザワ(SL),A山,K蔵,N井
Day 0 行動時間 とてもながい
例のごとく18きっぷで甲府駅までGO。朝7:30集合予定だったのだが,Tザワがお寝坊さんだったため出発は少しゆっくりとなった。丸々半日を電車に揺られるのとターミナルでの虚無タイムに費やし,甲府に着いたのは夜20:30ごろだった。この後急いで21:00閉店のスーパーへ買い出しへ行き,Tザワが予約してくれたホテルで各自吉野家やモスバーガーを頬張った。ほんとはレストランにでも行こうかと思っていたが,みな疲弊してたうえなんか甲府の町が夜21:00にしてそこはかとなく暗かったため,駅前のファストフードで済ますことになったのだった。
そういえば中津川では栗きんとんが名産だったらしい。自分はきんつばを食べたような……気がするが……。この日のコンテンツはこんなものだ。
太いやつ
行程
Day1
08:58 奈良田温泉バス停(入山)
09:19 ゲート
09:30 乱入・撤退
10:20 ゲート再突入
11:00 大門沢登山道入口
13:36 大門沢小屋〈CS1〉
Day 2
04:20 大門沢小屋〈CS1〉
07:27 大門沢下降地点
08:47 農鳥岳
10:18 西農鳥岳
11:25 農鳥小屋
13:03 間ノ岳
15;26 中白根岳
16:04 北岳山荘〈CS2〉
Day3
03:41 北岳山荘〈CS2〉
04:59 北岳
06:07 肩ノ小屋
07:52 白根御池小屋
09:55 広河原山荘〈下山〉
Day 1 奈良田~大門沢小屋 行動時間 05:30 ↑1424m ↓502m
04:45 ホテル出発
この日は移動の日。前日に散々公共交通に乗り散らかしてうんざりだったが,Day1はDay1で入山までに3時間overの公共交通タイムがある。早朝にホテルを発ち,甲府駅ー<身延線>ー下部温泉駅ー<はやかわ乗合バス>ー奈良田温泉,として入山地点の奈良田まで到着。余談だが,奈良田のある山梨県早川町は乗り入れる道路が今回も通った山梨県道37号線しかなく,日本一孤立した町として地理クラスタでは有名なようである。なお白峰三山を越えればPOWER脱出も可能な模様。
08:58 奈良田
しばらく林道歩きである。とはいっても道路は綺麗に整備されていて,どうしてかと思えばリニア中央新幹線の作業車が通るようであり,何度もデカトラックと狭い道ですれ違うことになり少し怖かった。終点には作業用隧道?の入り口があり,大変かっこよかった。気温もこの時点ではさほど高くなく,みなこれからの山行に思いを馳せてわくわくしながら歩いていたように思う。この後とんでもない恐怖に出会うとも知らず……
09:19 ゲート
ここから登山道に入るのだが,歩き始めて十数分後……。
V V V V V V
W A R N I N G !
Λ Λ Λ Λ Λ
なんとクマが登山道に現れたのである。
まずTザワが子熊を視認,即撤退を決断しゲートまで後ずさりすることに。子熊は私たちが現場を去るより早く崖下へといなくなってしまったので再遭遇の恐れに関しては何もわからない状態だったが,とにかく母熊を警戒しての判断。ちなみに撤退中に他大のワンゲルとすれ違った。一応クマいましたよとは伝えたのだが,そうですかといってそのまま行ってしまった。
一旦ゲートまで戻り,さっきの隧道の入り口で警備をやっていたおっちゃんにクマ遭遇の旨を話すとすでに今シーズンで3度目の遭遇報告だったとのことであった。はじめはこのまま甲府戻って北岳だけでもいくか……?などとも考えがよぎったが,結局クマが移動するまで時間をおいてから再突入することにした。撤退時点での時間は09:40ごろ。
10:20 ゲート(再突入)
工事のおっちゃんによると,今から登山道を大型のタンクローリーが通るのでそれの後ろを行けばよいとのことなのでこれに合わせて再出発。幸いこれきりクマの気配を感じることはなかった。
登山口までは工事車両が入るような道があり,まだ山道という感じはしない。
11:00 大門沢登山道入口
登山口自体は質素なもので,山道が始まった。日が昇ってきて気温が上がってきたため,川傍の樹林帯の道は涼しくて歩きやすかった。メンバーもこの日はさほど疲れを見せることなく歩いていたと思う。
一応念のため降りていく隊にはクマがいたというコトだけ伝えて気を付けてもらうようにした。
13:36 大門沢小屋
ゲートを再びくぐってからはつつがなく進んでこれたのだが,小屋も目前というところになって事件発生。小屋に河原から上がる道は土手を九十九折りで上るような形になっていたのだが,N井が足を滑らせ土手を一メートルほど滑り落ちてしまった。幸い崖はすぐなだらかになっていたのとホールドがありすぐ復帰できたが,N井はかなりトラウマになってしまったようだ。本人曰くもうすぐ着くというところで気を抜いてしまったというコトだった。
小屋についてからは予報の雨に備えて木陰にテントを張る。
だらだらして16:00ごろからごはんを作って貰た。電波はあり,翌日は雨こそ降らないが微妙な天気っぽいという感じだった。CLはこの日少し体調を崩しておりテントでやさしいせかいを享受していた。していると後輩らが完璧な夕飯を生成し待っていてくれたのでとてもありがたかった。
CLの体調不良は症状は高山病のそれとよく似ていたが,軽度だったので熱さゆえの脱水なのか,寝不足なのかは断定できなかった。ちなみに翌日から代わりばんこにメンバーが体調を崩すようになった。
19:00 就寝
翌日は行動時間長いので3時起きを指示。実際雨こそ弱かったが夜中はずっと紫電が音もなく閃いており大変怖かった
Day 2 大門沢小屋~農鳥岳~間ノ岳~北岳山荘 行動時間 11:44 ↑2201m ↓1007m
04:20 大門沢小屋 発
3時起きで行動開始。少し撤収に手こずったか出発が遅くなったが,万全の状態で行動を開始できた。リヒト山行にも慣れたもので,1時間間隔ほどでレストを取りつつ標高を上げ続ける。
問題の地点 写真より暗かった
沢を詰め上がる間に,暗かったため一度徒渉地点を見逃し,そのまま沢沿いを登ってしまったところがあった。(左写真)
沢沿いの道から尾根に出ると朝日が昇り,富士も見ることができた。日が照ってきたので日焼け止めと帽子・サングラスの着用を促し,稜線まで上がる。
意外とこの道が長く,もうすぐ稜線というところまで来るとメンバーも疲弊し,N井の靴ずれを治療するというところで長めのレストにした。このころより崖下からもくもくとガスが昇ってきており,以降の天候に不安を生じさせた。
07:27 大門沢下降地点
やっと稜線。この時はまだガスもさほどひどくなく,農鳥岳の山頂は一応見られた。このあたりから某N大のワンゲルメンバーと追い越し追いつきで行動していた。メンバーは彼らの部ティーに強くあこがれを感じたようで,うちでも作ろうという話になった。イマイチ部としての何かを持っていないなという思いはあったのでそういうの楽しくていいなと思う。
また農鳥岳までの道ではライチョウ・ホシガラスなども観察でき,いよいよアルプスっぽさを十全に感じられる環境を得て写真撮影も相当にはかどったようだった。あとはガスさえ耐えてくれれば。
08:47 農鳥岳
ピークらしいピークは初かな?正味大門沢を登ってきた疲労をメンバーからは強く感じたが,それでもピークにたどり着いた喜びはひとしおのようであった。ただ景色がよくない。かろうじて塩見岳?が雲の切れ目から見られたぐらいだ。
西農鳥までのルートは少し険しく,小石ぐらいなら降ってきそうな崖の道だった。途中韓国からいらした大人数の壮年グループとすれ違い,彼ら彼女らのように年をとっても山に登りたいものだと感じた。
10:18 西農鳥岳
このあたりからメンバーが順番に疲れを露にするようになった。過酷な上りが続いたのち,余裕と思われた西農鳥までの道が存外険しかった故仕方のないことだったかもしれない。
ちなみに景色はない。ずっと霧中だ。
西農鳥まで登るといよいよ間ノ岳の山容が見えるのだが,これがまたデカい。とにかくデカい。しかも農鳥小屋ははるか下に見える。これにはメンバーも萎え散らかしており,パーティの士気が下がり始めていた。もっと発破をかけられれば良かったが,その類のリーダーシップを発揮するのは自分は苦手だったようで,うまいことやれなかった。とても反省している。
11:25 農鳥小屋
ちょっとした問題が。農鳥小屋の水を当てにしていたメンバーがいたのだが渇水のため往復90分の沢まで下りないと水がないとのことだった。自分などが水を多めに持っていたので事なきを得たが,水はちょっと多く持っておくべきかな。
さて,農鳥小屋まで下りてから見る間ノ岳の様はまさに「壁」といったところで,下回生のメンバーは疲れ果ててしまった様子だった。
少し上るとすぐにガスが視界を覆い,景観をなくした。ここらへんでN井が相当きつそうにしていたのでゆっくり歩きながら山頂を目指す。一人A山は平気そうにしていたが。
赤いのは農鳥小屋
13:03 間ノ岳
400mの標高差に打ち勝ち,2日目の核心たる間ノ岳登頂。メンバーは完全に降りるだけ想定になっていた(そんなことはない)。本来は20分ほどのレストの予定だったが,N井・K蔵などがバテていたこと,あと一日無かった景色を何とか見ようと粘ったため,想定の3倍ほど時間が過ぎてしまっていた。Part1以降レストが間延びするのは自分の悪い癖なのでPart4では時間管理が課題だなぁと思う。
さて間ノ岳山頂はとても広く,もう少し晴れていれば最高の景色を拝めただろうといった風だったのでここは心残りである。記念写真を一緒に休んでいたワンゲラーに撮って頂き,北岳山荘に向かう。意外と遠い。
15:26 中白根岳
本来は特になにもない稜線ではあるのだが,途中K蔵・Tザワが完全にバテてしまうことに。Tザワは急にレストを要求してきたのでどうしたのかと思うと眠気で意識がヤバかったらしい。遠くを歩いていたとはいえ気づけなくて申し訳ない。またK蔵も,最終盤の中白根岳で一旦もう動けないような状態になっており,体のきつさはもちろん,間ノ岳を越えたという一種の安心感が逆にメンタル面にダメージを与えたと思われる。二人とも高山病と似た症状だったが頭痛などはないというので,水分補給をさせ小間隔でレストを取ることで対処した。
N井もそうだったが,テスト明けすぐのブランクのある体で,これだけハードな工程を歩いたので相当量のダメージがあったのかなと感じるバテ方だった。
16:04 北岳山荘
度々レストをとってゆっくりやってきたので,仕方ないながら総行動時間が12時間に迫るハードな日程になってしまった。幸い4+1テンを無理なく建てられるスペースは残っており,テントを立てすぐに夕食を作った。昨日の食当で自信を付けたメンバーには飯盒炊爨などお手の物であり,この日も大変美味な食事にありつけた。疲れぎみだったメンバーも明日は歩けるというので安心した。
テン場は電波あったので,気象通報には間に合わなかったものの天気情報を入手。雨はないはずという予報だったので,明日こそはガスなき山頂に至りたいと願い,2:30起きを指示し就寝。疲れからか,とてもよく眠れた。
北岳山荘は,この時期ならさほど寒さを感じることもなく,トイレもきれいでよいテン場だったが,天水を浄化して提供しているため渇水時の雲ノ平より水量が少ないことに注意である。
Day 3 北岳山荘~北岳~広河原山荘 行動時間 06:51 ↑650m ↓1896m
03:40 北岳山荘 発
朝はまたマルちゃんを喰らい,予定10分おくれで出発。朝からかなりの登りで,切れ堕ちた崖のそばやガッタガタの階段を上るような険しい道であったが,メンバーもよく寝られ回復したようで,巻きペースですいすい上っていた。空が白んできたころには背後の間ノ岳や北には仙丈なども見えたのだが,北岳山頂には雲の帽子が……。
04:59 北岳
山頂はガスだった。どうして……。ひとまず写真を撮る。山頂は人でごった返していた。自分も久々の2泊3日の最終日のドロドロの体が不快で仕方なかったので,さっさと下りたかった。と,忘れていたがここで日の出。厚い雲のむこうにある太陽はさながら火の玉であり,幻想的な光景だった。K蔵は黒点が見えるなどととんでもないことを言っていたが,この時実は大規模な黒点群が発生していたらしい。ほんとに見えていたのか……。という訳ですべてのピークをガス中に終えることに相成った。申し訳ない……
しかし流石に山頂の景色は諦めて下り始めたとたん,雲が晴れ,大迫力のパノラマが出現!
こうしてこれまでのやりきれなさが全てPayされてしまったので,再び山に登るという罪を犯すことになるのであった。
06:45 草スベリ(始点)
景色も堪能できてほくほくになったので,満足してあとは帰るだけとなった。草スベリは名の通りザレて滑りやすい急登だったのだが,みんな元気だったので少しテンポよく下ることにした。するとN井がまた思いっきりコケてしまった。折角いい気分だっただろうに,また萎え萎えになっていて少しかわいそうだった。
ほぼコースタイム通りに白根御池に到着。
北岳かっこいい
お花
07:52 白根御池小屋
終盤ながらとてもきれいな水場があり,涼しく大変快適であった。人がとても多く,すれ違い待ちが最大の律速という珍しい事態に。
なんか帰りのバスが間に合いそうだったので急ぎ目で動いていた最中だったので正直焦ったがまあ仕方がない。
09:53 広河原山荘
3日間の行程を完遂し,下界に降りてきたことに下回生sは心底安心していたようだった。よく頑張りました。
ちなみに,必死の急ぎもむなしくバスは満員ということで10時のバスには乗れなかった。
甲府に戻ってから何とか銭湯にありつき,ギリギリのスケジュールで満足にご飯も食べず京都にとんぼ返りすることになってしまった。いつか打ち上げをすることを誓い,解散。なんかこの日は遅くまで麻雀をしていた気がする。
最後までハードな道のりにスケジュールとテスト明けながら無理を強いてしまったかもしれない。それでも,この山行で得た感動がみんなのワンゲラー魂を少しでも揺さぶっていたのであれば,やりがいのあった参考といえるでしょう。お疲れさまでした。
感想・反省
Tザワ:2日目が想像以上にきつく、バテた。久しぶりの山だったこと、寝不足、高山病が影響していると思う。自分のことで精一杯になっていたのでそこは気をつけたい。3日目の景色は圧巻の一言。2日目までの辛さを全肯定するものだった。このために山に登っているんだよな、と心の底から思った。
A山:山行の序盤・中盤は曇っており景色は良くなかったが他大学との交流があり新鮮で退屈はしなかった。最終日の下山し始める頃に晴れ始めパーティー山行の中で一二を争うほどの景色を見れたため満足であった。
K蔵:自分の準備不足と高山病の不慣れが露呈した登山となった。最後の登山から1ヶ月半空いたにもかかわらず一度も運動することなく挑んだため二日目後半は完全にばててしまっていた。その結果、高山病を引き起こしやすくなってしまい律速となってしまった。思い出としては三日目の景色で全てが◎となったが今後の登山では準備を怠らないようにしたい。
N井:久しぶりの山行に加え、運動不足による体力低下で辛い場面が多かったですが、熊との遭遇など目新しいことも多く記憶に残る山行になりました
H田:みんなの体力状況を参照してのうまいペース分けをできていたが不安が残る。一方,メンバーそれぞれがコミュニケーションをとって山行を楽しもうという姿勢が見られとても嬉しかった。体力的なところは個人で補填してもらうほかないが,この後の雲ノ平ではちゃんと調整で来ていたのテスト後の一過性のものであったと思う。
全体として:再序盤で超ド級のカスイベントに遭遇し,完遂どころか入山すらも危ぶまれたが,何とかこれ以外のトラブルに遭うことなく下山まで持っていけて大変幸運だった。体力面に関しては何度も触れたとおりブランクが影響していたと思うので,夏休み山行前は大文字歩荷をするなどウォーミングアップに努めるとよいかもしれない。お疲れさまでした。