宮あさか
秋の風は
体に少ししみて
何かを思い出させようとするから
私は時計台の下で
ポケットに手を入れる
図書館の明かりを
数えていたら
遠くにあなたの姿を見つけて
顔が勝手にほころんだ
だからあなたに気づかないふりをする
久しぶりに見る短いコートに身をくるんで
私のほうへ
速度を変えずに歩いてくる
夕暮れのキャンパスは
楽しげな声が響く
そっとふたりは寄り添って
並んで歩き出す
いつのまにか繋いだ手
そう私は
この温もりを待っていた
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