「降りろっ。」
ロクマヌはN軍将校の手によりセダンのトランクから無理やり引きずり出された。
「痛ぇなぁ、ここはどこだよ。」
「ここはG国の某遺跡だ。君にはここで金杯を見つけてきてもらう。もし見つけることが出来なければ死刑だ。」
「報酬は?」
「そんなものはない。」
「ないならやらない。」
N軍の将校は彼に銃口を向けた。
「やれ。やらんと撃つぞ。」
「そんなことをされたってわしゃやらんぞ。」
「わかった。貴様の勤務する大学に金100オンスを寄付しよう。」
「それだけか。」
「それだけとはなんだ。まあいい。それに加えてダイヤ鉱脈をやろう。」
「おう。それならいいだろう。」
「なんせ金杯に水を入れて飲むと一生生きられるからな。」
「さあロクマヌいけ。」
「わかったよ。」
ロクマヌは嫌々遺跡へとつながる穴へと入る。
穴へ入るとそこは地獄である。天井にはクモが縦横無尽に巣を張り、蝙蝠が飛び、床には毒蛇がうじゃうじゃおり、骸骨が散らばる。骸骨の目の部分から蛇が出てきた時、ロクマヌのドブ川のように腐り濁った瞳が真珠やダイヤのようにキラキラと光り、おもむろに銃を腰のホルスターから取り出し壁に向かい連射する。
そうすると壁が鈍い音を立て崩れ去り、下へと向かう階段が姿を現す。
彼は散文的に笑うとポケットから石ころを取り出し階段に向かい投げつける。そうすると階段の手前に正面から鎧を着た骸骨が彼の前に姿を現す。
彼はそれに手榴弾を投げつけややいそいそと後退した。その後骸骨は鎧共々砕け去り、中からルビーのペンダントが出てきた。彼はそれを基にいつの時代の兵士かルビーの加工方法をルビーから読み取り推測した。そして彼は、この遺跡がかなり前から様々な国により発掘されていたことを知った。
階段を下ると、金銀財宝が部屋中にちりばめられた部屋についた。ふと見渡すと一生懸命に金塊や金の装飾品をカバンに詰め込む人を見つけた。近づくとそれは彼の先輩でありライバルでもあるディック博士ではないか。彼はそっと話しかける。
「やぁ。ディック博士じゃないか。」
「君はロクマヌじゃないか。」
「博士はここで何してるんですか。」
「金杯があると聞いていてもたってもいられなくなってヒッチハイクでここまで来たんじゃよ。」
「なるほど。」
「どうして君はここに。」
「実はN軍に頼まれて。」
「実に君らしいな。」
そうである。ロクマヌはいつも発掘作業中に拉致されては軍の私利私欲のために歴史的遺物を取りに行かされていた
「残念だが貴様にはここで死んでもらう。」
ディックはホルスターから拳銃を取り出し、ロクマヌの腹部をめがけて打ち込んだ。
しかしディックも年齢には逆らえず、視力の衰えと、射撃の腕の衰えにより誤って岩場に銃を発砲してしまい、銃弾は跳ね返りディックの目に刺さった。彼はもだえ苦しむとともに、心臓のあたりを押さえた。痛い痛いと悶えながら。
そういえば彼は心臓病の持病があったとか。残念なことに彼は薬を忘れたらしく、痛みは止まることなくさらに激しくもだえる。
そして彼は息絶えた。ロクマヌはナイフで彼の肉をはぎ取り干し肉のもととなるものを作り、骨や内臓は地面に埋めた。彼は時たま矛盾した行動をとることから、大学ではキワモノ扱いされていた。
洞窟をさらに奥まで進むと、吊り橋が見える。彼はその吊り橋を一人コツコツと歩いてゆく。
途中まで進むと真ん中あたりに銀の甲冑を着て、長い槍と大きく丸い盾を持った戦士が見えてきた。彼はその戦士を見るなりすかさず軍から渡された拳銃を発砲し、戦士の腹に命中させた。
戦士はもだえる間もなくバランスを崩し橋から転落した。橋の下には毒蛇がうじゃうじゃと湧いていた。
彼はそこにすかさずガソリンをボトルから垂れ流し、銃を発砲することで引火させ、全ての蛇を焼き尽くした。
その後彼は落ちていた縄梯子を用いて橋の下に降り、焼けた蛇の肉を貪った。その時橋の上に古びた木のドアがあることが確認できた。腹が減っていたのだ。しかし途中で肉が生臭く吐き出してしまった。どうやら腐った肉を食ってしまったようだ。
ひとしきり肉を食べると、彼は残った肉を鞄に全て詰め込んだ。そして縄梯子を上り橋の上に戻り、橋を火で焼き切った。彼はクレイジーなので、それを見て散文的に笑い、笑い声は洞窟全体に響いた。そして、ナイフでリストカットした。彼はメンタルがとても弱いため、たまにこうした行動を起こしてしまう。
さらに洞窟を進むと、軍隊アリがうじゃうじゃといた。
彼は蛇と同様にガソリンで焼き切り、軍隊アリの塊を手でぎゅっと押しつぶすと、それを口の中へ放り込んだ。うまいうまいと彼は言うと、残りもぎゅっと潰し、鞄の中に押し込んだ。
その先を進むと、石造りの神殿が見えた。神殿の前に落ちていた剣を拾うと、彼は神殿の中へ入った。中にはロクマヌの3倍はあるであろう大男が立っていた。
「ここを通りたければ私を倒せ。」
「望むところだ。」
彼は剣を彼に振り下ろそうとするが、急にお腹がキュルルルとなる。しまった、さっきの蛇肉だ。そう悟ると彼は弾丸を大男めがけて打ち込む。
大男は銃弾をまともにくらい倒れる。どうやら銃弾が洞房結節に命中したようだ。彼はすかさず軍のトランクから拾ったメスで大男の脳を切開し、脳みそをぐちゃぐちゃにし、ガソリンを入れガスライターで火をつけた。彼は散文的に笑うとともに、葉巻に火をつけ煙をくゆらせた。
一服した後、彼ははっと教授業について心配になった。給料が出ないと発掘できないからである。彼はパーペチュアルカレンダーを搭載したパテックフィリップのカラトラバを見た。幸いなことに休暇期間中だった。
安心すると彼は神殿の奥へと進んだ。奥には多くの金杯が並ぶ。彼はそれを見るなり、サインが彫られた金杯を取った。
その瞬間ガチャンと鈍い音がした。そしてザァーっという音と共に壁から大量の水が溢れ出した。そういえばこの洞窟は海の下にあったっけなぁ。
そう思う暇もなく彼は来た道を引き返した。金杯だけは手から離さぬよう気を付けて。
途中で不思議な扉を見つけたので好奇心旺盛な彼は入ってみた。なんとその扉は吊り橋の前の扉に繋がっていた。
しかしここでアクシデントが発生した。橋を切り落としたせいで対岸に渡れない。いったん彼は扉を開け通路に隠れ、水が絶えるのを待ったが、5分以上水が途切れない。
そこで彼は扉をボートにし、水が満たされた崖を渡り走り切り何とか洞窟から脱出した。
そこで彼の意識は途絶えた。
彼が目を覚ますと彼の家のベットにいた。彼が自信の寝室を抜け、居間に向かうと夫人が優雅に紅茶を啜り、飼い犬を弄ぶかのようにエサを与えていた。
彼はその光景を見て夢かと錯覚したが、彼が腕を見ると、無数の切れ傷と、パテックフィリップカラトラバが冒険時さながらのままで存在した。
その後彼は、一着三十万円のオーダースーツに着替え、シルクのネクタイ、二十四金のネクタイピン、カフスボタンをつけ、家を出た。
彼はタクシーに乗り込むと、大学まで行ってくれという。運転手はそっとうなずきいつものように大学へ向かう。彼はおもむろに新聞を広げると、散文的に笑った。
「やはり冒険は本当であったか。」
「お疲れさまでした。」
「おう。君にもダイヤをやろうか。」
「いえいえ、そんな高価なもの頂けません。」
「いやいや、いつものお礼と今後もよろしくという事で。」
「では。ご遠慮なく。」
歓談しているところ、激しく後部座席のガラスが割れるとともに、新聞に穴が開く。
「なんだ。」
「どうやらスナイパーが銃を乱射したようです。」
「乱射はしとらんだろ。一発だし。しかもそんなことは分かっておる。どう対策すべきかという事じゃ。」
「ここは逃げ切るのがいちばぁっっっ…」
「どうしたぁぁぁ。」
どうやら敵が二発目を発射したようだ。彼は運転手を後部座席に寝かせて、自分でハンドルを握り、必死で敵を振り切ろうと頑張る。それはジェームズボンドさながらである。彼はこの車に脱出機能がついていたらなぁとしょうもないことを考えながら急に車をUターンさせた。
その瞬間敵の車は近くの建物に激突する。
彼は一息つくとともに急いで病院へ向かい、運転手を医者に見せる。幸い脳に異常はなく、数日で治るという。
その後彼は猛スピードで車を飛ばし大学へと向かう。そして十分もしないうちに大学へと到着する。到着するや否や、彼の同僚はロクマヌに言う。
「ロクマヌ、大丈夫だったか。」
「なぜだ。何かあったのか。」
「さっき大学の方にロクマヌが強盗に殺されかけたと電話があった。」
「なるほど、それで。」
「それだけだ。」
「おう。」
「それにしても大学への金百オンスの寄付感謝するよ。」
「ああ。」
「それとダイヤ鉱脈凄いなぁ。」
「ああ。」
「今度見せてくれよ。」
「いいぞ。」
歓談を続けていると講義の時間になったので、彼は教室へと向かう。
「さあ講義を始めるぞ。静かにしろ。」
いつものようにロクマヌは講義開始の合図をした。
「うるせーはげじじー。」
見た目どころか中身までも幼稚な女子学生の言葉が講堂に響き渡る。
「黙れ。単位やらんぞ。」
「うるせー。」
お決まりの流れである。彼も彼女らも楽しんでいるので何ら問題もない。事実彼女らも見た目こそ派手だが、中身は真面目であり、単位も毎回しっかりとっていく。
講義の途中、彼はふと考える。この中にスナイパーがいたらどうしようか。大学は自由な校風な為誰でも簡単に侵入できるしなぁ。
数分後、彼の予感は見事に的中する。とある男子学生がおもむろに立ち上がった。
「おう。じいさんよ。てめぇだけ金儲けしていい気になりやがって。少しは儲けられるようなことを教えろよ。」
「黙れ。大学はそのような場ではない。貴様のような学生は出ていけ。講義の邪魔だ。」
「うるせぇ。これでもくらえ。」
学生はマシンガンをさっと構えると、ロクマヌめがけて打ち込む。
ロクマヌはさっと身をかがめ、その男子学生めがけて講義資料を投げつける。
しかし男子学生はそのような応戦に臆することもなく、ロクマヌの体にマシンガンを打ち込む。マシンガンの弾はどんどんロクマヌの体に刺さっていく。ロクマヌは立っているのもやっとだったが、学生からマシンガンを取り上げる。そして、ポケットから酒瓶を取り出し、口に含むと、ダンヒルのガスライターをさっとひねり、火元めがけて勢いよくガソリンを口から噴き出した。そう、口の中に含んだものは酒ではなくガソリンだったのである。
学生の顔は真っ黒こげとなる。学生は悶絶し、気を失う。すぐに警官隊が駆け付け、学生は救急車で病院へと運ばれた。どうやら警察の話曰く、学生は例のカーチェイス時の敵の仲間だったらしい。
病院で傷の手当てを受けると、その後彼は自身のの研究室へと戻り、金杯を眺める。いやぁ。あの時神殿に落ちていた偽物の金杯と本物をすり替えといてよかったなぁ。本物がまさか帽子の中にあるなんて将軍も思わないだろうなぁ。その後彼は金杯の中に酒を数滴たらして飲んだ。
その瞬間彼は床に伏せた。なんと金杯の底に毒が塗られていたのだ。それと同時に彼に幻聴が聞こえる。シンデンノユカヲホレと。その後彼は神殿へと向かった。神殿は軍により整備されており、奥までは簡単に進めた。奥まで進むと、彼は神殿の床を掘り出した。タイルを引っぺがすと、地下に部屋があり、将軍と一緒にそこに入る。
そこには、多数の神像が立っており、将軍はガハハと笑いながら中心に金杯を置き、神様、私を世界一の金持ちにしてくださいと大声で叫んだ。
その瞬間7つの神像が1つになり、将軍に雷を落とした。将軍は灰となり、その灰を基に新たな金杯が生み出された。
ロクマヌは本物の金塊を中心におくと、「神様、私を自由にしてください。」と叫んだ。その瞬間ロクマヌの体は砕け散った。
彼は考古学でも特に死生観に深いつながりを持つ遺物や神殿を研究しており、死こそが肉体の自由という結論にたどり着いた。
その後神殿はプスという音とともに崩壊し、軍関係者もほとんど生き埋めとなった。
結論この神殿には、死をつかさどる冥界の神が住んでおり、望むものには死を与え、望まぬものや、どん欲な物にも死を与えるという事である。
最後に皆は死についてどのように考えるだろうか。私はロクマヌのように死=肉体からの解放、つまり自由と考えるが、あなたはどう考えるか。それが人生の最終課題である。