自然界に存在するタンパク質は一説ではおよそ1010種類程度ではないかと言われていますが、たかだか100個のアミノ酸からなるタンパク質であっても、そのアミノ酸配列は原理的にはおおよそ10130通り存在します。この事実は未だ未知の有用なタンパク質が多数存在するのではないかと期待させます。天然のタンパク質を大幅に改造し自在に制御することや、自然界には存在しないタンパク質を新たに創り出すことが自由にできるようになれば、我々の生活をより豊かで快適なものとしてくれるだろうと考えられます。
近年、計算機を用いて効率的にタンパク質を設計する「計算によるタンパク質デザイン技術」が誕生し、それは現実のものとなりつつあります。物理化学や情報科学(AIなどを含む)に基づいた計算により、自在にタンパク質を設計することが可能になってきました。
我々の研究室では計算によるタンパク質デザインとデザインしたタンパク質の構造・機能の実験的検証を両輪として、新奇タンパク質の創出と天然のタンパク質の改造を行っています。さらに、その技術を用いて、生命科学や創薬への応用に向けた研究も進めています。
また、計算によるタンパク質の構造・機能予測や物理化学計算による機能メカニズムの理解による創薬研究も行っています。
計算機を用いて効率的にタンパク質を設計する「計算によるタンパク質デザイン技術」が誕生し、近年次々と成功例が示されています。天然のタンパク質のアミノ酸変異とは異なり、欲しい形を持ったタンパク質を主鎖構造も含め完全に人工的に設計(De Novo設計)することが可能になってきました。
我々は、これまでに天然に存在しない全く新しいアデノシン三リン酸(ATP)水分解酵素を主鎖構造を含めゼロから(de novo)設計することに成功しました。
現在、さらなる技術の開発と生命科学や創薬への応用を目指しています。
タンパク質デザイン技術を天然のタンパク質へと適用し、その複雑な機能の改変も行ってきました。特に、回転モーターの改造では、活性部位を直接的に改変する従来法から脱却し、離れた部分の改造をとおして活性部位を遠隔的に制御する斬新な戦略のもと、アロステリック部位を設計し回転能の向上に成功しました。
その際、我々は進化の過程で酵素活性を失った酵素のホモログ「Pseudo-Enzyme(擬似酵素)」に注目し、改造を行いました。自然界において、擬似酵素は多様なタンパク質複合体に含まれており、その協奏的な機能の制御に役立っていることが明らかになってきています。
今後も、擬似酵素に注目したタンパク質の改造や新規創薬ターゲットの探索などを行っていく予定です。
また、タンパク質デザイン技術を用いて目的のタンパク質の改造を行うことで、生体内外における機能の解明も行っています。
深層学習の利用によりタンパク質の構造・機能予測が急速に発展しています。これらの技術と従来の物理化学計算を組み合わせ、生体分子の機能の解明を行っています。
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