鼻に噴射する痛みのない国産インフル予防ワクチン承認申請へ

厚生労働省は十五日、今季のインフルエンザは例年並みだった昨年より一カ月ほど早く流行期入りしたと発表した.

また,阪大微生物病研究会が開発したインフルエンザ経鼻ワクチンの承認申請が近く行われるとのニュースがテレビで流れていた.さっそく,インターネットで調べると,毎日新聞,東京新聞,高知新聞等の関連記事が見つかった.インターネット上の情報の概要は以下のとおりである.

阪大微生物病研究会が開発した「鼻にスプレーするだけで,インフルエンザの感染を防ぐ国産の経鼻ワクチン」の治験(人に予防接種して安全性と有効性を調査)が今年七月に終わり,従来の注射に比べて高い効果が期待できることを確認し,近く国へ承認申請するという.

申請するのは,病原性をなくしたウイルスを利用した不活化ワクチン,細いスプレー容器に入ったワクチンを鼻に差し込んで噴射する方式という.国立感染症研究所で行われた臨床試験では,ウイルスを攻撃する抗体が働くことが確認できたとのことである.

経鼻ワクチンの試作容器

注射ワクチンと経鼻ワクチンの比較

従来の注射によるワクチンは体内に入ったウイルスによる重症化を防ぐのが主目的で,感染は食い止められなかったが,経鼻ワクチンはウイルスが体に入る際に通る気道の粘膜のバリアー機能を高めるため,感染防御ができると考えられている,また,ウイルスのタイプが予想と違った場合でも効きやすいとの研究結果もあるとのことである,

生ワクチンとの比較

経鼻ワクチンは,米国では毒性を弱めたウイルスを鼻に噴射する生ワクチン「フルミスト」が広く使われている.ただ、発熱などの副作用が出る場合もあり,乳幼児や高齢者は使えない.日本での使用は,第一三共が2016年に国に承認申請し,審査中である.

これに比べて阪大微研が開発したものは,病原性をなくしたウイルスを利用した不活化ワクチンを鼻に噴射する.不活化ワクチンのため副作用の恐れが少ないことが期待できる.さらに,痛みがなく簡便なため,お年寄りや乳幼児の使用も可能と言われている.

経鼻ワクチンは,米国では広く使われているが,国産品は初めてとのことである.承認されれば,数年後には実用化され,痛みを伴う注射をしなくても,インフルエンザを予防できる時代が来ることが期待できる.

(2019.11.30)