奈良県高等学校人権教育研究会について
奈良県高等学校人権教育研究会(以下、高人教)は、1957年に県内の高校で惹起し た部落差別事象をきっかけに、差別事象をたんに当該校の問題として終わらせるのではなく、部落の子どもたちの暮らしの中に見られる厳しい差別の実態に深く学び、すべての生徒の教育と進路を保障し、差別に立ち向かう意欲と実践力を育むことを目的として、奈良県高等学校同和教育研究会(高同教)として出発しました。以来、「教育の機会均等の権利と進路を保障する取り組みを進めよう」を大きな柱として、教職員の人権・部落問題認識、教育内容の創造と実践、生徒の進路保障、自主活動の支援と集団づくり、ともに生きる社会の実現等を課題としながら、人権教育の研究・推進に取り組み、2002年に現在の組織名称に変更して活動を続けています。
○ 組織と活動について
高人教は、県内の高等学校、中等教育学校、特別支援学校の高等部等の全教職員を会員 としています(奈良工業高等専門学校、県立高等技術専門校はオブザーバー参加)。各校からは高人教推進委員が選任され、年間7回の機関会議を開催して課題の共有や取り組みの交流を行っています。また、各種研究委員会として、現在「部落差別と教育」「くらしと環境」「生きる力と進路保障」「障害児(者)教育」「特別支援教育」の5つの研究委員会を設けて、各推進委員が教材作成などの研究に取り組んでおり、その成果は毎年『高人教 研究・実践レポート』として刊行されています。
○ 主な取り組み
1.奈良県高等学校人権教育研究大会
1973年より、毎年夏に開催されています。午前中の基調提起、特別講演に始まり、 午後には複数の分科会に分かれ(教育内容の創造・進路保障・自主活動)に分かれ、例 年10校程度の学校からの実践報告をうけ、研究協議を行います。
2.新会員研修会・夏期研修会
今、各学校では教員の世代交代が急速に進んでいます。新会員研修会では、新任の教員 に人権教育について より深く学んでもらうことを目的に、県教育委員会の委託を受け て、7月と12月の2回、研修会を実施しています。
夏期研修会は、毎年8月下旬に2回(推進委員対象、全会員と保護者対象)、推進委員 や会員の資質向上、保護者啓発を目的に実施しています。
3.ブロック別公開ホームルーム研修会
毎年11月頃、地域ブロック別に、4つの学校で輪番による人権教育ホームルームの公 開と研究協議を行い、研修と交流を行っています。
4 編集・発行事業
まず人権教育テキストの『なかま 高等学校』の編集・発行があります。『なかま 高 等学校』は、1972年が初版で、長年にわたり県内すべての高校生に無償配布され、 子どもたちの学習の糧となってきました。現在は各校が全校生徒分を常備しています。 また、2015年3月には県教育委員会の制作による人権学習資料『なかまとともに 高等学校』が刊行され、各校で『なかま』と併用して学習することになりました。また、 高人教で は、各校の生徒が自らの経験や思いを綴った人権作文集『ひとりひとり の願 いを』を1961年から毎年刊行しており、2024年度で第64集を数えています。
さらに、性的指向や性自認等に関わる「多様な性」「セクシュアルマイ ノリティ」の 人権課題について、2014年度より「多様な性について の人権学習教材等検討部会」 を立ち上げ、厚生労働省科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業の研究班(代表 宝 塚大学 日高庸晴さん)と共同で、ガイドブック『多様な性を考える授業』(2017)を編 集・発行しました。現在、各学校のホームルーム等での実践に取り組んでいます。
○生徒の「人権自主活動」の活性化を!
今、各校では人権に関わる生徒の自主的な活動が、さまざまな形で行われています。部 落解放研究会(解放研)や人権研究会などのサークルに集う生徒は、以前に比べると数は少ないですが、地道な活動を続け、文化祭での発表や他校との交流などに取り組んでいます。また、子ども食堂をはじめ、地域社会でのボランティア活動などに取り組むサークルも多くの学校にありますし、生徒会の中に「人権委員会」等の名称で位置づけられた組織があり、高校と特別支援学校の交流や、高齢者や障害者施設の訪問、全校の人権行事の運営などに取り組んでいる学校も多くあります。高人教ではこれら人権自主活動の担当者で連絡会議を開き、さらなる活性化に向けて取り組んでいます。
1.高解研(奈良県高等学校解放研等連絡会議)の活動
県内各校の解放研をはじめとする人権サークルや、人権委員会等、有志の生徒による 研修・交流会を年間2回開催しています。また7月には夏期研修会があります。
2.高校生の人権広報誌“Freedom”(フリーダム)の発行
各校のさまざまな人権自主活動の報告や、高解研の研修・交流会参加記、フィールドワ ークのレポートなど、高校生の有志スタッフの執筆・編集により、県教育委員会よりの 委託事業として、2009年から広報誌を年3回発行しています。県内全ての会員校で 教室掲示または個人配布されており、また「ふりがな付きの冊子版」も作成して、特別 支援学校などで活用されています。