関東非線形非平衡バイオソフトマターセミナー

過去のセミナー

第25回


日時: 3月9日(土) 14:30-


場所: 明治大学 駿河台キャンパス グローバルフロント3階 4031教室

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html


講師: 栗田 玲 氏(東京都立大学 理学系研究科 物理学専攻 教授)


演題: 泡沫の物理と関連現象


要旨:

液体中に気泡が高密度に充填した状態である泡沫は,洗浄剤や食品,消火器など日常的によく使われています.これまで界面活性剤の成分や混合比などの化学的要因が注目を浴びることが多いですが,浸透圧など泡沫の物理的性質も古くから研究されています.本セミナーの前半では,シャボン玉と泡沫の違いや,泡沫の持つ基礎的な物性,泡沫の作成方法や実験,解析方法について,物理学的観点からレビューしたいと思います.

セミナー後半では,我々が最近注目している泡沫の動的性質について,お話ししたいと思います.泡沫には,気体,液体,その界面があり,特に液体量は空間不均一に存在しています.それらが結合するため,泡沫の動的性質は複雑になります.動的性質として明らかになってきた一例として,泡沫の構造緩和や泡沫の塗り広げ,泡沫への水の浸透ダイナミクスについて紹介したいと思います.


言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:15 後半



第24回


Date: 2023年9月26日(火) 14:30-


Place:

東京大学本郷キャンパス理学部4号館2階1220教室 & Zoom

Room 1220, 2nd floor of Science Building 4, Hongo Campus, The University of Tokyo

https://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_06_04_j.html



Speaker:Prof. Igor Aronson (Pennsylvania State University)

https://sites.psu.edu/iaronson/home/


Title: Dynamics of swimming  bacteria in liquid crystals and viscoelastic fluids


Abstract:

Bacteria form human and animal microbiota. They are the leading causes of many infections and constitute an important class of active matter. Concentrated bacterial suspensions exhibit large-scale turbulent-like locomotion and swarming. While the collective behavior of bacteria in Newtonian fluids is relatively well understood, many fundamental questions remain open for complex fluids. I will discuss collective behavior of bacteria in two complex fluids: lyotropic liquid crystals and viscoelastic mucus. In liquid crystals, bacteria exhibit rich collective behavior due to formation of topological defects. In viscoelastic mucus, an increase in mucin concentration and, correspondingly, an increase in the suspension’s elasticity monotonously increases the length scale of collective bacterial locomotion. On the contrary, this length remains practically unchanged in Newtonian polymer solution in a wide range of concentrations. The experimental observations are supported by computational modeling.


Language: English


時間割詳細 (Timetable):

14:30-15:30 前半 (introductory)

前半終わり次第-16:00 休憩 (break)

16:00-17:00 後半 (more advanced)



第23回


日時: 7月1日(土) 14:30-


場所: 明治大学 駿河台キャンパス 12号館 2062教室

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html


講師: 杉村 薫 氏(東京大学大学院理学研究科 准教授)


演題: 機械的な力による多細胞秩序形成


要旨:

細胞が集団として動き、パターンを作ることは生き物の最も根幹的な性質の一つであり、

その原理を解き明かすことで生命の本質に迫れると期待されます。興味深いのは、個々の

細胞は全体が見えていないのに集団として秩序が形成されることです。逆に言えば、多細

胞秩序形成が細胞にとって実現可能なタスクに落とし込まれていることが示唆されます。

多細胞秩序形成には様々な要素が働きますが、中でも鍵となるのが、変形や運動を駆動

する機械的な力です。私たちの研究室では、機械的な力による多細胞秩序形成原理を解き

明かすために、実験生物学と統計・データ解析、物理学を統合した学際的アプローチを採

用しています。これまでに、見えない「力」を見える「かたち」からベイズ推定する手法

の開発、力によるパターン形成の方向情報コーディングの発見、細胞の力感知・力抵抗の

分子メカニズムの解明などの成果をあげてきました。本講演では、多細胞秩序形成がどの

ようにして細胞にとって実現可能なタスクに落とし込まれているのか、未発表の最新の知

見を含めて紹介します


言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:15 後半



第22回


日時: 2023年4月1日(土)  13:30-


場所:オンライン(Zoom)


講師:  並河 英紀 氏 (山形大学理学部 教授)


タイトル:

核形成が支配する自己組織化


要旨:

過飽和状態におかれた物質は核形成を経て自己組織化し、核形成から組織化へ至る過程が自然界の多様な構造・機能形成を制御している。本講演では、過飽和度に依存して反応経路が選択される構造形成現象の例として、まず、反応拡散系の一種であるリーゼガング現象について紹介する。最大エントロピー生成速度原理に基づいた周期方位の選択律の発現や、オーストラリアに存在する美しい模様を持つ岩石の形成機構解明に資する化学モデルの構築など最近の実験より見えてきた内容を説明するとともに、100年以上の歴史を持つリーゼガング現象の提案モデルの変遷などを概説したいと思う。後半では、構造自由度の高い生体高分子の核形成・自己組織化に対する議論を行いたい。特に、生命系の本質である非平衡定常状態を再現したin vitro実験系により見えてきた核化・オリゴマー化・組織化の速度論・安定構造・細胞膜毒性の特殊性について紹介する。また、最近始めた液液相分離による作用についても触れたいと思う。



言語: 日本語


時間割詳細:

13:30~14:30 前半

14:30~15:00 休憩

15:00~16:00 後半



第21回


日時: 2022年11月19日(土)  13:00-

*** いつもと異なる開始時間ですので、ご注意ください ***


場所:オンライン(Zoom)


講師:  前多 裕介 氏 (九州大学大学院理学研究院物理学部門 准教授)


タイトル:

生命システムを物理的制御で探る


要旨:

生命システムは複雑な分子集合体であり、その動作原理の解明は非平衡物理学の中心的課題として活発な研究が進められています。近年では自律的に運動する物質群(アクティブマター)が注目され、その知見から生命現象の理解に迫る機運が高まっています。本セミナーでは、発展著しいアクティブマター物理学と生命現象の物理学の新たな交わりについてお話ししたいと思います。特に、セミナー前半では生命現象に関連する内容に焦点を当て、基本的事項を概説する予定です。

セミナー後半では、我々が最近注目している遊泳バクテリアや上皮細胞の乱流状態を軸として、物理的制御で発現するアクティブマターの秩序渦構造とその幾何的ルール[1,2]についてお話ししたいと思います。幾何的ルールの破れの計測から注目する系の特徴(キラリティなど)を理解することが、多細胞体制形成にどのような知見を与えられるのか、といった点を皆さんと論じる機会にできればと思います。また、物理的制御の考え方を分子レベルにまで広げることは、新しい解析技術の構築や、まだ細胞内で見つかっていないダイナミクスを発見することにもつながります。一例として、我々が見出したモータータンパク質の力による細胞内対称性の決定機構[3,4,5]を紹介したいと思います。

[1] K Beppu, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 118, e2107461118 (2021)

[2] S Araki, K Beppu, et al. Nano Letters 21, 10478-10485 (2021)

[3] R Sakamoto, et al. Nature Communications 11, 3063 (2020)

[4] R Sakamoto, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 119, e2121147119 (2022)

[5] T Fukuyama, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, in press (2022) 


言語: 日本語


時間割詳細:

13:00-14:00 前半

前半終わり次第-14:30 休憩

14:30-15:30 後半




第20回


日時: 11月27日(土)  13:00-


講師:  村田憲一郎 氏 (北海道大学 低温科学研究所)


タイトル:

高分解光学顕微鏡で見る氷の表面・界面ダイナミクス


概要:

水や氷、水蒸気は地球上に遍く存在し、それらの間の移り変わりは日常生活でしばしば目にするありふれた相転移現象である。とりわけ水や水蒸気から氷への相転移は地球寒冷圏の自然現象にかかわりが深い。このように私たちにとって身近な氷ではあるが、水蒸気や水からどのように成長するのか、その分子レベルの微視的メカニズムについては未だ十分に理解されていない。近年、私たちは独自の高分解光学顕微鏡技術[1]を駆使して、水蒸気や水から氷が成長する過程を一分子レベルで「見る」ことに成功した[2, 3, 4]。これまで数値シミュレーションや理論モデルに頼らざるを得なかった氷の成長の分子論的描像に今まさに手が届きつつある。講演では、光学顕微鏡「その場」観察により明らかになった氷表面・界面の結晶成長ダイナミクスとそのメカニズム、およびそれらの知見がもたらす氷研究の今後の展望について紹介する予定である。また、氷の融点近傍で生じる極薄の液体層、「擬似液体層」の熱力学的起源とその特異な物性[5, 6]についても議論する予定である。


参考文献

[1] Sazaki et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 107, 19702-19707 (2010)

[2] K. Murata, K. Nagashima and G Sazaki, Phys. Rev. Matt. 2, 093402 (2018)

[3] K. Murata , K. Nagashima and G Sazaki, Phys. Rev. Lett. 122, 026102 (2019)

[4] K. Murata et al., submitted

[5] K. Murata et al., Phys. Rev. Lett. 115, 256103 (2015)

[6] K. Murata et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 113, E6741-E6748 (2016)




言語: 日本語


時間割詳細:

13:00-14:00 前半

前半終わり次第-14:30 休憩

14:30-15:30 後半



第19回


日時: 2月20日(土)  13:30-

*** これまでより1時間早い開始時間となっておりますのでご注意ください ***


講師:  角五 彰 氏 (北海道大学大学院 理学研究院 化学部門 准教授)


タイトル:

動く物質「アクティブマター」の活用法


要旨:

『アクティブマター』とは、化学エネルギーなどを運動エネルギーに変換する機構を内在的に有した物質群です。自発的に運動を発現するという点で、従来の物質群とは一線を画しています。本講義では、特に生体由来のアクティブマター(生体分子モーター)を取り上げ、その物性や動作原理、動態挙動について解説したいと思います。さらに、現在、我々が直面するエネルギー問題や医療問題を、アクティブマターを介して解決するアイデアなどに関しても共有したいと思います。


言語: 日本語


時間割詳細:

13:30-14:30 前半

前半終わり次第-15:00 休憩

15:00-16:00 後半




第18回


日時: 12月12日(土) 14:30


講師: 石本健太 氏 (京都大学数理解析研究所)


タイトル: 微生物流体力学:基礎理論からの展開


要旨:

多くの微生物は繊毛や鞭毛といった器官を使って水中を泳いでいます。生物の大きさが微小なため、周りの流れは慣性が無視できる低レイノルズ数のストークス流れとしてよく記述できます。ストークス方程式は比較的単純な線形の偏微分方程式で、一見流体方程式からは複雑さや多様性が現れるように思われないかもしれません。微生物は一般に複雑な形状を有しており、これが変形を伴うことで、流体方程式の境界条件を通じて顕微鏡下の世界に豊かさが生みだされます。


このようなアクティブな境界条件をもつ低レイノルズ数の流体力学として「微生物流体力学」[1]を考えたいと思います。これは、微生物だけでなく、ヤヌス粒子等の人工遊泳粒子など、一般の流体中の微小な自己駆動粒子に適用できる理論的な枠組みで、ソフト・アクティブマター物理を構成する基本的な物理学としての側面も持っています。


本講演では、そのような微生物流体力学の基礎的な理論の包括的な解説を目指したいと思います。具体的な例として講演者のこれまでの研究結果もいくつか取り上げる予定です。また、講演の後半ではバクテリアの遊泳を中心に「流体方程式を通して見た生き物のかたち」に関する最近の研究[2,3]についてもお話したいと思います。


[1] 石本健太「微生物流体力学への招待 : 生き物の形・流れ・動きを探る(第 1回)微生物の流体力学」数理科学 2020年4月号(サイエンス社), 682 (2020) 67-74.

[2] K. Ishimoto, Helicoidal particles and swimmers in a flow at low Reynolds number, J. Fluid Mech., 892 (2020) A11.

[3] K. Ishimoto, Jeffery orbits for an object with discrete rotational symmetry, Phys. Fluids, 32 (2020) 081904.


言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半




関東非線形非平衡バイオソフトマターセミナー世話人

石原(東京大学)、北畑(千葉大学)、郡(東京大学)、

末松(明治大学)、高江(東京大学)、谷(東京都立大学)、

中尾(東京工業大学)、中島(東京大学)、西口(東京大学)、

平岩(National University of Singapore)




第17回


日時: 10月24日(土) 14:30-


場所: Zoomによるオンラインセミナー


講師: 酒井 崇匡 氏 (東京大学大学院工学系研究科)


タイトル: 高分子ゲルの学理解明とバイオマテリアルとしての応用


要旨:

ハイドロゲルは高分子網目が大量の水を含んで膨潤した物質であり、

生体軟組織と非常に似通った組成・性質を有しているために、バイオ

マテリアルとして非常に有用である。理想的にはバイオマテリアルは、

生体内において「つくられ」疾患を「なおし」→生体内で「こわれる」

必要がある。しかしながら、構造・物性相関の本質的な理解がなされて

おらず、これらすべてを満たすような合理的な材料設計は困難であった。

本発表では、このような問題意識の下で行った、制御された網目構造を

有する高分子ゲルについての研究を紹介する。重要な物理特性であるゲ

ルの弾性率、浸透圧について概説すると共に、人工硝子体を始めとした

バイオマテリアルとしての応用可能性について紹介する。



言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半





東工大非線形セミナーとの共催セミナー


日時: 2020年1月24日(金)13:30-15:00


場所: 東京工業大学大岡山キャンパス 西8号館 E棟10階 大会議室 (1001)

https://www.titech.ac.jp/maps/ookayama/ookayama.html (19番の建物)


講演者: Seth Fraden (Professor of Physics / MRSEC Director, Brandeis University, USA)

https://www.fradenlab.com/

https://www.brandeis.edu/mrsec/


題目: Optimal Control of Synchronization Patterns in a 3-Ring Network of Repulsively Coupled Oscillators


概要: Networks of diffusively coupled Belousov-Zhabotinsky (BZ) oscillators exhibit spatiotemporal patterns with the complexity of central pattern generators found in animals. We consider the simplest network with two stable steady states; a ring of three inhibitor-coupled wells. Experimentally we observe several oscillatory patterns in this system, including two stable configurations that appear as traveling clockwise (CW) and counterclockwise (CCW) waves. Either state is equally likely to emerge in the homogeneous case where all 3 wells and their interactions are identical. However, by introducing differences in the intrinsic frequencies of the oscillators, the bifurcation results of the Kuramoto model and a model derived using phase reduction of a chemical model of the BZ reaction suggest the possibility of switching the system’s chirality by removing one of the stable configurations. An optimal control formulation is then applied to uncover the minimal perturbations in the oscillators’ frequencies needed to transition the system between these states. These results not only suggest a way of transitioning between steady states in the physical 3-ring BZ system, but also lay the groundwork for optimally switching between dynamical patterns in larger networks in general.





第16回


日時: 2019年10月26日(土)14:30から17:00頃まで


場所: 明治大学駿河台キャンパス12号館6階 2062教室


会場へのアクセスはこちらをごらんください:


キャンパスへのアクセス

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html


キャンパス内地図

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html




講師: 坂上 貴洋 氏 (青山学院大学 理工学部 物理・数理学科)


タイトル: クロマチン物理入門


要旨:

クロマチンの構造やダイナミクスについて、高分子物理からのアプローチを紹介する。ライブイメージングやHi-C法により明ら

かになってきたクロマチンの性質を概観した後、それらを考察していくための高分子物理学における基礎的概念を解説する。また、クロマチンダイナミクスの記述を目指したアクティブ高分子モデルや、環状高分子の濃厚系で顕著になるトポロジカルな拘束効果について最近の研究を紹介する。



言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半





第15回


日時: 2019年7月27日(土)14:30から17:00頃まで


場所: 明治大学駿河台キャンパスリバティタワー16階1164号室

(会場へのアクセスはこちらをごらんください https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html )



講師:野村暢彦(筑波大学 生命環境系・微生物サステイナビリティ研究センター 

JST ERATO野村集団微生物制御プロジェクト)


演題:微生物も群れて会話する 〜単細胞と不均一性〜


要旨:

単細胞生物である微生物も、ほとんどが集団(バイオフィルム(BF))で存在することが明らかになってきた。バイオフィルムは、細胞外にマトリクスに覆われる事で、様々な環境ストレスや敵から守られる。さらに興味深いことに、単一の微生物から形成さたバイオフィルムですら、様々な多様性(自然突然変異株)を持つ細胞が出現することもわかってきた。バイオフィルムになることで、環境ストレスに対応するだけでなく、内部の細胞の多様性・不均一性を発現しているようである。


また、微生物も細胞外にシグナル(言語)を分泌し、細胞間で会話することが明らかになってきた。さらに近年、我々は細菌がメンブレンベシクル(MV)と呼ばれる細胞外膜粒子(20〜500 nm)を一部の細胞が死にながら産生することを明らかにした。そして、そのMVには核酸(DNA, RNA)・タンパク質さらに細菌シグナル(言語)などが含まれ、様々な物質の輸送体として機能していることが明らかとなってきた(1,2)。つまり、1)細菌シグナルが細胞外に放たれ自由拡散による細胞間コミュニケーションと、2)MVにシグナルが含まれることで遠くまであるいは特異的な細胞間コミュニケーションを細菌は有している。


 我々グループは、微生物の集団形態・コミュニケーション・不均一性・多様性などを出来るだけ細胞をこわさず生きたまま理解しようとしている。それらのために開発したイメージング解析技術なども紹介しながら、得られた動画により微生物のふるまいそして生き様を垣間見て頂き、異分野の皆様に考察・解釈そしていろいろと教えて頂きたい。


[1] Toyofuku, M., et al. (2015)  Adv. Colloid Interface Sci. 226, 65-77.

[2] Toyofuku M., Nomura N., Eberl, L. (2019)  Nature Reviews Microbiology 17 (1):13-24



時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半



第14回

日時: 2019年 5月 25日(土)14:30から17:00頃まで


場所: 東京大学生産技術研究所 An棟4階401

※いつもと会場が異なりますのでご注意ください

会場へのアクセスはこちらをごらんください:

http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/access/

土曜日は建物が施錠されておりますので、建物正面入口にて案内いたします。



講師:田中肇(東京大学生産技術研究所)


演題:粘弾性相分離と破壊現象


要旨:

相分離は、自然界において不均一な空間構造を形成する最も基本的な物理現象である。

近年、細胞内での相分離現象とその生物学的機能とのかかわりが生物学・医学・物理学など広い分野で注目を集めている。

この問題を理解するのに必要な一般的な液体相分離の常識1-2)、さらには、生物系と同様に液体を含み、かつ、

階層的な構造を内包するタンパク質や核酸に代表されるソフトマターの相分離の特異性に焦点を当て、相分離の基礎的な物理的メカニズムについて解説する。


ソフトマターには、高分子溶液系、コロイド分散系、タンパク質溶液に代表されるように大きてのろまな分子と小さくてすばしっこい分子からなる動的に著しく非対称な混合系が数多く存在する。

また、成分間のガラス転移温度に大きな差があれば、動的非対称性は金属、酸化物混合系を含むあらゆる物質群に存在する可能性がある。

我々は、これらの動的非対称系において、従来の相分離の常識では理解不可能な特異な相分離挙動を発見し、「粘弾性相分離」と名づけた。

この相分離では、常識に反し、遅いダイナミクスを持つ成分がたとえ少数相であっても、空間的に連結したネットワーク構造を過渡的に形成する。

相分離パターン・運動学的経路の選択という観点からは、従来の相分離パターンが熱力学的な力のバランスにより決まるのに対し、この相分離では力学的な力がパターン選択の重要な因子となる3-6)。

特に、相分離に伴う変形速度が系の緩和速度をはるかに上回る場合には、相分離が破壊により進行する破壊型相分離が観察されることが明らかになった7)。


さらに、最近の研究により、これらの動的非対称系の相分離は、変形下で起きるガラス状物質の破壊様式(延性・脆性破壊)と深い関係があることも明らかとなった8)。

時間があれば、力学的変形の下での物質の空間不均一化の普遍的な機構についても考察する。


文献

1) A. Onuki, Phase Transition Dynamics (Cambridge Univ. Press,Cambridge 2002).

2) R. Shimizu & H. Tanaka, Nature Commun. 6, 7407 (2015).

3) 田中 肇,高分子学会誌 「高分子」 58巻 9月号 683-688 (2009).

4) H. Tanaka, Soft interfaces: Lecture Notes of the Les Houches Summer School (Oxford University Press, Oxford, 2017), Chap. 13.

5) H. Tanaka, Faraday Discuss. 158, 371 (2012); Adv. Mater. 21, 1872-1880 (2009); J. Phys: Condens Matter 12, R207-R264 (2000)

6) H. Tanaka & T. Araki, Chem. Eng. Sci. 61, 2108-2141 (2006)

7) T. Koyama, T. Araki, and H. Tanaka, Phys. Rev. Lett. 102, 065701 (2009).

8) A. Furukawa and H. Tanaka, Nature, 443, 434-438 (2006); Nature Mater. 8, 601-609 (2009); 古川亮,田中肇, 日本物理学会誌, 65, 432-436 (2010).


(言語: 日本語)


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半


関東非線形非平衡バイオソフトマターセミナー世話人

石原(東京大学)、北畑(千葉大学)、郡(東京大学)、

末松(明治大学)、高江(東京大学)、谷(首都大学東京)、

中尾(東京工業大学)、中島(東京大学)、平岩(National University of Singapore)






第13回


日時: 2019年 3月 9日(土)14:30から17:00頃まで


場所: 明治大学駿河台キャンパス アカデミーコモン 309C

会場へのアクセスはこちらをごらんください:

キャンパスへのアクセス

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

キャンパス内地図

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html


講師:平岩徹也(東京大学大学院 理学系研究科)


演題:生き物の形と機能を生みだす動きに潜む力学――ソフトマター物理、アクティブマター、メカノバイオロジー


要旨:

 生き物の中では、細胞や組織あるいは生体高分子の柔軟で多彩な動きがあり、それが全体の形作りや機能発現を可能にしている。

例えば多細胞生物の形が出来上がっていく過程では、細胞が分裂したり移動したり、コミュニケーションしたりひしめき合ったりといった

多彩な動きをしなければ、その複雑な形態は実現され得ない。では、それらはどのような力学過程のもとで達成されているのだろうか。

この研究テーマはメカノバイオロジーと呼ばれる分野の一種に位置する。メカノバイオロジーとは力学的作用が生き物の振る舞いや性質に

どのように寄与しているかを探求する分野であり、現在様々な側面から精力的に研究が進む学際的研究領域である。

このテーマにソフトマター物理やアクティブマターといった物理系の概念の理論からどうアプローチするかを話したい。

 このセミナーは基礎事項を説明する前半部と、最新の研究を紹介する後半部から構成される。前半は、生き物の話題の導入をした後、

ソフトマター物理やアクティブマターなど物理系の動きの理論の簡単な例を紹介する。特に、馴染みのない学生も多いであろう

アクティブマターについて、テーマを絞りつつ少し丁寧に説明したい。後半では、本題である細胞や組織の動きの背後にある力学に

ついての自身の理論研究を紹介する。特に、細胞間コミュニケーションの結果として遊走細胞集団に自発的に生じ得る多様な

振る舞いについての研究を説明したい。

(言語: 日本語)



時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半







第12回

日時: 2018年12月22日(土)14:30から17:00頃まで

場所: 明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント3階 中教室4031

会場へのアクセスはこちらをごらんください:

キャンパスへのアクセス

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

キャンパス内地図

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講師:郡 宏(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)

タイトル:同期現象に対する数理的・実験的アプローチと応用

アブスト:

 同期現象は様々なシステムで重要な役割を担う。我々の心臓や24時間の体内時計は

細胞レベルの振動が集団で同期した活動をすることによって作動している。生き物の

歩行や遊泳も、四肢や繊毛集団が特定の同期パターンを作ることによって実現する。

芸術やスポーツでも、オーケストラ、コーラス、シンクロナイズドスイミングなどに

見られるように、動作の正確な同期がそのパフォーマンスを決定づける。同期は我々

の生命と生活に密接に関係している。

 この発表は2部で構成される。前半は学部生が、後半は概ねは修士の学生が無理なく

聞ける内容を心がける。前半では、自然界に現れる同期現象を広く浅く紹介し、同期の

メカニズムや機能について触れる。その後、蔵本らによって確立された同期の数理的

記述法(位相モデル)の基礎を簡単に解説する。そして、位相モデルを用いた体内時計

と時差ボケに関する理論研究とその実験検証を紹介する。後半では、様々な理論的話題

を紹介する.同期現象のノイズに対する安定性、共通ノイズによる同期の促進、集団記述、

集団的効果によるノイズの低減、最適ネットワーク構造の自己組織的形成モデルなどを

ざっと紹介し、質問に応じて詳しく解説したい。

 本発表で紹介する研究の多くはまだまだ発展の余地があり、また、まだ実験がなされ

てないものも多い。特に、学生や実験研究者からの質問・フィードバックを期待したい。

そして、共同研究してほしい。

言語: 日本語

時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半





第11回


日時: 2018年8月20日(月)14:30から17:00頃まで


場所: 明治大学駿河台キャンパス アカデミーコモン8階308E教室


会場へのアクセスはこちらをごらんください:


キャンパスへのアクセス

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html


キャンパス内地図

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html



講師: 多辺 由佳 氏 (早稲田大学 先進理工学部応用物理学科)


タイトル: 線形流が駆動する液晶の散逸構造


要旨:

ネマチックやスメクチックA, Cなどの液体に近い液晶は、高い流動性と異方性を併せ持つため、外場に対して様々な応答を示す。

その応答は、相の対称性と実験系の対称性を変えると、劇的に変わる。

本発表では、キラルな液晶(具体的には、ホストのネマチックやスメクチック液晶に、不斉炭素を持つキラルドーパントを少量混合した液晶)に見られる、

熱流・物質流駆動一方向回転について、いくつかの実験例を紹介し、その超分子機械への応用を議論する。


言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半





第10回


日時: 2017年4月21日(土)14:30から17:00頃まで


場所: 明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント3階 4031号室

会場へのアクセスはこちらをごらんください:

キャンパスへのアクセス

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

キャンパス内地図

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html


講師: 木村 暁 氏 (国立遺伝学研究所・細胞建築研究室)


タイトル: 細胞建築学のめざすところ:分子機械と自己組織化


要旨:

本セミナーでは、せっかく幅広い分野の研究者に参加いただける可能性があるので、私の研究の理想(やりたいこと)と現実(できていること・できていないこと)を紹介させていただき、「生きている細胞が化学物質である分子からどのようにできあがっているか」について議論したいと願っています。

 私は、「個々の要素がわがままに振舞っているのに、全体として秩序らしきものが生まれる」という自然・社会のあらゆる局面でみられる特徴に興味を持ち、細胞生物学研究に足を踏み入れました。(自己組織化という言葉を知ったのはしばらく後のことでした。)生体分子と細胞の関係が、この要素と全体の関係の具体例として研究対象にふさわしいと考えたからです。一方で、現代生物学で主流の細胞観は、生体分子が細胞の部品として精巧に設計されていて、それらが緻密に全体のために働くことによって細胞が機能するという「細胞=分子でできた機械」というものです。確かに、遺伝子がコードする何万種類ものタンパク質は、それぞれが特徴的な形状や酵素活性を持ち、一種類を欠くだけでも細胞は死に至ることもあるので、細胞は精巧な機械なのかもしれません。私の研究目標は「”自己組織化”と”分子機械”という細胞に対する2つの見方を融合させて納得できる細胞像を描くこと」であり、これを(勝手に)細胞建築学と呼んでいます。

 私が具体的に行っている研究は、線虫という生き物の細胞(大きくて透明)を使い、「細胞核が細胞の中央に向かって進み、中央で止まれるしくみ」(1-3)、「細胞内で流動が生じる時に同じ方向に向きが揃うしくみ」(4)などを明らかにしようとするものです。細胞全体の秩序(真ん中に配置する、同じ向きに動く)が、分子のどのような働きで達成されているか、について解析しています。これらの研究によって、分子機械と自己組織化の両面から細胞が機能するしくみに迫れるのではないかと狙っています。が、道半ばであり、適切な方向に歩んでいるのかもわかりません。本セミナーでは、我々の研究例を肴に、幅広い観点から「細胞がいかに建築されているのか」について意見交換させてもらいたいと考えます。


(1) Kimura A, Onami S. Computer simulations and image processing reveal length-dependent pulling force as the primary mechanism for C. elegans male pronuclear migration. Dev Cell 8, 765-775 (2005).

(2) Kimura K, Kimura A. Intracellular organelles mediate cytoplasmic pulling force for centrosome centration in the Caenorhabditis elegans early embryo. Proc Natl Acad Sci USA 108, 137-142 (2011).

(3) Tanimoto H, Kimura A, Minc N. Shape-motion relationships of centering microtubule asters. J Cell Biol 212, 777-787 (2016).

(4) Kimura K et al. Endoplasmic reticulum-mediated microtubule alignment governs cytoplasmic streaming. Nat Cell Biol 19, 399-406 (2017).


言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半






第9回


日時: 2017年12月16日(土)14:30から17:00頃まで


場所: 東京大学本郷キャンパス 理学部一号館 207号室

(建物には西棟一階ドトール側の入り口から入ることができます。)

講師: 内田  就也氏

   (東北大学理学研究科 准教授)


タイトル: 遊泳する微生物の集団運動


要旨:

バクテリアやクラミドモナス、ゾウリムシなどの微生物の遊泳やそれらに伴う集団運動は、

生物学的観点からのみならず非平衡アクティブマターの例としても近年研究が進められている。

これらの微生物の運動を支配する相互作用は環境条件に応じてさまざまであるが、その中でも

流体力学相互作用はその長距離性および異方性のために多様かつ非自明な現象を生み出す。

本講演の前半では遊泳する微生物の代表的な理論モデルのいくつかを概観するとともに、

低レイノルズ数流体力学の特徴について述べる(レビューとして [1],[2] を参照)。

また、一例としてアーキアの歳差運動を伴う遊泳 [3] について紹介する。

後半ではバクテリアの集団運動について、走化性、整列相互作用、排除体積相互作用などの効果を

概観した後、流体力学効果が顕著に作用する例として、バクテリアカーペットにおけるべん毛の

整列相転移に関する研究 [4,5] を紹介する。また、流体効果による繊毛ビーティング運動の

同期に関する研究 [6,7] を紹介する。


[1] E. Lauga and T. R. Powers, Rep. Prog. Phys. 72, 096601 (2009).

[2] J. Elgeti, R.G. Winkler and G. Gompper, Rep. Prog. Phys. 78, 056601 (2015).

[3] Y. Kinosita, NU, D. Nakane, and T. Nishizaka, Nature Microbiology

1, 16148 (2016).

[4] NU and R. Golestanian, Phys. Rev. Lett. 104, 178103 (2010);

Europhys. Lett. 89, 50011 (2010).

[5] Y. T. Hsiao et al. Appl. Phys. Lett. 105, 203702 (2014);  Appl.

Phys. Lett. 108, 183701 (2016).

[6] NU and R. Golestanian, Phys. Rev. Lett. 106, 058104 (2011); Eur.

Phys. J. E 35, 135 (2012).

[7] NU, R. Golestanian and R. R. Bennette, J. Phys. Soc. Japan 86,

101007 (2017).



言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半


会場詳細:

最寄駅とそこからのアクセス

■地下鉄丸の内線 本郷三丁目駅 下車徒歩10分

■地下鉄大江戸線 本郷三丁目駅 下車徒歩10分

■地下鉄千代田線 根津駅 下車徒歩約10分

■地下鉄南北線 東大前駅 下車徒歩約10分

です。会場までの地図は

http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_06_01_j.html

をご参照下さい。







第8回

日時: 2017年9月2日(土)14:30から17:00頃まで 


場所: 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー12階 1124教室

会場へのアクセスはこちらをごらんください:

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

キャンパス内地図:

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html



講師: 池田 昌司 氏 (東京大学 大学院総合文化研究科)


タイトル: ガラス物理入門 


要旨:

我々の身の回りには、結晶固体だけでなく、乱れた構造を持った固体が多数存在する。

窓ガラスなどのガラスに始まり、マヨネーズなどのエマルション、ヨーグルトのようなゲル、

砂山のような粉体は、その例である。このような物質群を総称して、ガラス系と呼ぶことにする。

近年、ガラス系を統計力学で記述しようとする研究が非常に進んできた。

セミナーの前半では、ガラス系に対する一般的なイントロダクションからはじめ、完成に近づきつつある

ガラス転移の平均場描像[1]という理論的シナリオを、講演者の研究[2,3]も交えつつ説明する。

セミナーの後半では、講演者の最近の共同研究から、平均場描像との関係は現時点では良くわかっていないが、

今後のガラス物理の進展において重要だと考えられる現象群についての研究を紹介する。まず、

hyperuniformityと呼ばれる、ガラス系の大域的な密度揺らぎに関する研究[4]を紹介し、その後、

ガラス系における特徴的な低エネルギー振動に関する研究[5]を紹介する。

[1] G. Parisi & F. Zamponi, Rev. Mod. Phys. 82, 789 (2010). など

[2] A. Ikeda & K. Miyazaki, Phys. Rev. Lett. 104, 255704 (2010). 

[3] A. Ikeda, L. Berthier, P. Sollich, Phys. Rev. Lett. 109, 018301 (2012). 

[4] A. Ikeda, L. Berthier, G. Parisi, Phys. Rev. E 95, 052125 (2017).

[5] H. Mizuno, H. Shiba, A. Ikeda, submitted (2017). [arXiv:1703.10004]


言語: 日本語


時間割詳細:

14:30-15:30 前半

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半






第7回


日時: 2017年6月17日(土)14:30から17:00頃まで

(詳細は下をご参照ください。)

!!!  第6回と開始時間が異なりますのでご注意下さい !!!


場所: 東京大学本郷キャンパス 理学部一号館 207号室

!!!  第6回までと会場が異なりますのでご注意ください !!!

建物には西棟一階ドトール近くの入り口から入ることができます。


講師: 住野 豊 氏

   (東京理科大学応用物理学科 専任講師)


タイトル: 自発運動する液液界面のパターンダイナミクス


要旨:

界面とは様々な定義で用いられており、界面運動と一つとっても結晶成長時の界面の伸長様相や、パルスのダイナミクス、さらには強磁性体のドメイン運動など多岐に渡る。

私はこの中でも特に、液液界面の自発運動系に強く興味を持って研究を行ってきた。このような系ではパターン運動に伴い、バルクの運動といったマクロに秩序だった運動が観察される。私はこのようなマクロな自発運動に対して、生命現象との類似を感じ強く興味を持って研究を行ってきている。

本セミナーでは、自発運動する液液界面に焦点をあてその実験系の詳細な解説や運動機構などに関して紹介する。セミナーの前半においては、自発駆動する液液界面系の歴史的な紹介、即ちDupeyrat, Nakacheらの研究に遡った話[1]より近年の実験系に関しても紹介を行う。加えて、自発運動する液液界面系の駆動機構に関しても簡単に説明を行う。また、セミナーの後半においては、最近の研究である会合体生成に伴って運動を示す実験系に関して、受動的な会合体生成系[2]と能動的な会合体生成系[3]の実験系を紹介議論する。


[1] M. Dupeyrat, E. Nakache, Bioelectrochem. Bioenerg. 5 134 (1978).

[2] S. Wagatsuma, T. Higashi, Y. Sumino, and A. Achiwa, Phys. Rev. E 95, 052220 (2017).

[3] Y. Sumino, et al., Langmuir 32, 2891-2899 (2016).


言語: 日本語 


時間割詳細: 

14:30-15:30 前半 

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半 


会場詳細: 

最寄駅とそこからのアクセス 

■地下鉄丸の内線 本郷三丁目駅 下車徒歩約10分

■地下鉄大江戸線 本郷三丁目駅 下車徒歩約10分

■地下鉄千代田線 根津駅 下車徒歩約10分

■地下鉄南北線 東大前駅 下車徒歩約10分

です。地図等は

http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_06_01_j.html

をご参照下さい。







第6回


日時: 2017年3月25日(土) 15:00から17:30頃


場所: 明治大学駿河台キャンパス 12号館5階 2052教室

(会場へのアクセスはこちらをごらんください

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

キャンパス内地図

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html


///いつもと開始時間と建物が異なりますのでご注意ください///


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講師: 本多久夫 氏 (神戸大学医学研究科)


タイトル:

上皮シートの世界とそこでおこなわれる形態形成の機構


要旨:

前半

多細胞動物の形態形成は上皮組織に注目するとわかりやすい。上皮組織は内外を

仕切るシートである。動物体に見られる数々の器官はこの上皮シートが変形した

ものである。変形には、伸張・陥入・分岐・融合つなぎ替え・裏返りなどの変形

要素とよぶべきものがある。上皮シートの機能は仕切りであるからシートの形は

袋にならざるをえない。袋に対して変形要素の組み合せがはたらいて数々の形が

できる。これが上皮シートの世界である。また、上皮シートを構成しているのは

上皮細胞であるが、これはapical面とbasolateral面をもち、よく観察すると幾

つかのタイプがある事がわかる。上皮シートの袋形成や上皮細胞にタイプがある

ことは、細胞器官であるVAC (vacuolar apical compartment)の働きに注目する

と納得できる。また、上皮細胞のapical-basalの極性が形成される分子機構につ

いて述べる。


後半

上皮シートの変形を、与えられた条件下で安定な形に自立的に変化していく過程

としてとらえる試みについて述べる。組織中の細胞を多角形や多面体と考え、こ

の集合の形を論じる。細胞塊の形はすべての頂点の座標と頂点の隣接関係がわか

れば記述できる。Vertex dynamicsとよばれる微分方程式を含む方法を使うと、

頂点の座標や隣接関係が刻々と計算できる、すなわち形態形成過程を記述できる。

これを使って行った袋の形成、チューブ型器官の伸張、ヘリックスループ形成な

どの研究について述べる。

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第5回


    日時: 2016年12月17日(土) 14:30から17:00頃


     場所: 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー1086号室(8階)

    (会場へのアクセスはこちらをごらんください

     https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html


    Speaker: Philippe Marcq (Curie Institute)


    Title: Inference of internal stress in a cell monolayer


    The mechanical behavior of living tissues is deeply connected with many

    important biological questions, yet little is known about internal tissue mechanics. 

    Since the traction forces exerted by cells on a planar, deformable substrate can 

    be measured, we propose to combine traction force data with Bayesian inversion 

    to estimate the internal stress field of a cell monolayer. The method is validated 

    using numerical simulations performed in a wide range of conditions. It is robust 

    to changes in each ingredient of the underlying statistical model. Importantly, 

    its accuracy does not depend on the rheology of the tissue. Combining Bayesian 

    inversion with Kalman filtering allows to process time-lapse movies of the traction 

    force field. Examples of applications to epithelial cell monolayers  include experimental

    evidence for stress waves in confined geometries and an estimate of the tissue stress 

    field close to cell delaminations.




第4回

        11月19日(土)に予定されておりました第4回セミナーは、

        講演者の都合により中止となりました。

        ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。




第3回

日時: 2016年9月3日(土)14:30から17:00頃まで (詳細は下をご参照ください。)


場所: 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー7階 1076号室 (階数にご注意ください。詳細は下をご参照ください。) 


講師: 好村 滋行 氏

   (首都大学東京 大学院理工学研究科 准教授)


タイトル: 生体膜における不均一構造の物理


要旨:

生体膜のラフトモデルが提唱されて以来、従来の流動モザイクモデル 的な描像が変わりつつある。ラフトモデルでは、多成分の脂質二重膜における動的な不均一構造が重要な役割を果たしている。講演の前半では生体膜や ベシクルにおける側方相分離現象を主題として、最近10年程度の研究動向を概観する。ここでは主に物理化学的な立場の実験研究を中心にレビューし、 さらにソフトマター物理の観点から理論的な考察を行う[1,2]。最初に多成分の脂質二重膜の相挙動や形態について説明する。次に生体膜と溶媒の流体力学 効果の定式化を用いて、ドメインサイズの成長則や濃度ゆらぎの減衰率について議論する[3]。


講演の後半では、生体膜における不均一構造を考察する中で出てきた、「生体膜マイクロレオロジー」という新しい概念を紹介する[4,5]。マイク ロレオロジーとは、コロイド粒子などの微粒子のブラウン運動や、その外力に対する応答を測定することによって、極めて微小量の物質の粘弾性的性質を調べる 新しい実験手法である。近年では、細胞一個の弾性率の周波数依存性を測定することができるようになりつつある。生体膜マイクロレオロジーでは、生体膜中の 拡散挙動や生体膜自体のゆらぎの性質を用いて、細胞質の粘弾性を測定することができる。講演の最後では、マイクロレオロジーを用いた医療研究の可能性につ いても言及する予定である。


[1] 好村滋行, 今井正幸, 日本物理学会誌 68, 714 (2013).

[2] S. Komura and D. Andelman, Adv. Coll. Int. Sci. 208, 34 (2014).

[3] R. Okamoto, Y. Kanemori, S. Komura, and J.-B. Fournier, EPJE 39, 52 (2016).

[4] S. Komura, S. Ramachandran, and K. Seki, EPL 97, 68007 (6pp) (2012).

[5] S. Komura, K. Yasuda, and R. Okamoto, JPCM, 432001 (2015).


言語: 日本語 


時間割詳細: 

14:30-15:30 前半 

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半 


会場詳細: 

最寄駅とそこからのアクセス 

■JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線/御茶ノ水駅 下車徒歩約3分 

■東京メトロ千代田線/新御茶ノ水駅 下車徒歩約5分 

■都営地下鉄三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線/神保町駅 下車徒歩約5分 

です。地図等は 

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html 

をご参照下さい。

 



第2回

日時: 2016年7月2日(土)14:30から17:00頃まで (詳細は下をご参照ください。) 

場所: 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー16階 1165号室 (階数にご注意ください。詳細は下をご参照ください。) 


講師: 澤井 哲 氏 

  (東京大学大学院総合文化研究科准教授)


演題: 細胞の巧みさと非平衡系のパターン形成


要旨: 

物 理系、数理系の学生や研究者に向けて、細胞ダイナミクスの巧みさを探る話題を提供する。前回の太田先生のご講演でのご指摘のとおり、『80年代は非線形ダ イナミクスやパターン形成などのマクロ非平衡系に関わる研究が行われ、90年代には生体1分子計測の発展とともにミクロ非平衡系のゆらぎも対象になっ た。』これらの進展とともに、2000年代以降、より複雑な系への理論的アプローチと実験科学の融合から、細胞や組織レベルの生物物理学、定量生物学がい わば再興されてきた。この流れについて私が理解していることを述べ、内容になじみの薄い学生や周辺分野の方々へのイントロとする。後半は当方のこれまでの 研究[1-5]も踏まえて、細胞の動態、細胞集団の動態の理解という視点に絞り、技術の進展や、理論を背景にした実験設定や解析はもとより、元来の確立し た学問体系の延長線上の科学との関係についても一考し、今後の展望を探る機会としたい。


[1] S. Sawai, Y. Aizawa (1998) J Phys Soc Jpn  67, 2557-2560.

http://journals.jps.jp/doi/abs/10.1143/JPSJ.67.2557

[2] S. Sawai, P.Thomason & E.C. Cox (2005) Nature 433, 323-326.

http://www.nature.com/nature/journal/v433/n7023/full/nature03228.html

[3] T. Gregor et al (2010) Science 328, 1021-1025.

http://science.sciencemag.org/content/328/5981/1021

[4] D. Taniguchi, S. Ishihara et al (2013) PNAS 110 (2013) 5016.

http://www.pnas.org/content/110/13/5016.short

[5] A. Nakajima et al (2014) Nature Commun.5, 5367.

http://dx.doi.org/10.1038/ncomms6367



言語: 日本語 


時間割詳細: 

14:30-15:30 前半 

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半 


会場詳細: 

最寄駅とそこからのアクセス 

■JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線/御茶ノ水駅 下車徒歩約3分 

■東京メトロ千代田線/新御茶ノ水駅 下車徒歩約5分 

■都営地下鉄三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線/神保町駅 下車徒歩約5分 

です。地図等は 

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html 

をご参照下さい。

 



第1回


日時: 2016年5月14日(土)14:30から17:00頃まで (詳細は下をご参照ください。) 

場所: 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー7階 1076号室 (階数にご注意ください。詳細は下をご参照ください。) 


講師: 太田 隆夫 氏 

  (お茶の水女子大学名誉教授、京都大学名誉教授、東京大学大学院理学系研究科客員共同研究員、豊田理化学研究所客員フェロー) 


演題: 非平衡統計物理学研究の現状と将来 

 

要旨:

非 平衡統計物理学関係のこれまでの国内研究集会を調べると、1971年2月に「統計力学における基礎的諸問題」研究会が開かれている[1]。 “従来の統計力学の適用限界とその拡張に関する問題”がテーマの一つであった。熱平衡近傍での線形応答領域を超えた非平衡系を意識していることがわかる。 1973年2月には「自己組織・自己制御系の統計力学とその周辺」研究会が行われている[2]。生命現象を熱平衡から離れた非平衡系として理解を深めるこ とを目的としていた。さらには生体をシステムと捉え、物理科学、情報科学、生物科学の三者による統一的理解にも言及されている。1970年以前の事情を知 らないが、これらが我が国における、まとまった形での、非線形・非平衡研究の出発点であると思われる。 

1980 年代は非線形ダイナミクスやパターン形成などの、主としてマクロ非平衡系に関わる研究が行われた。1990年代になると、生体1分子計 測などの実験技術の著しい発展とともにミクロ非平衡系のゆらぎに関心がもたれるようになり、その活動は今日まで続いている。今世紀に入ってからはソフトマ ターやアクティブマターの概念が浸透し、材料科学から生命科学における非平衡現象の基礎的包括的研究が行われている。 セミナーでは世話人からの要請により、前半にこれらの進展を簡単に振り返ったあと未解決問題に言及する。後半では、進行中の具体的研究として、アクティブソフトマター、特に、生体細胞の遊走ダイナミクス[3,4,5]について議論する。 


[1] 松田博嗣,物性研究,16, B1-B2 (1971) 

[2] 清水博,物性研究, 20, A1-A6 (1973) 

[3] F. Ziebert and I. S. Aranson, Eur. Phys. J. ST 223 (2014) 1265. 

[4] D. Taniguchi, S. Ishihara, T. Oonuki, M. Honda-Kitahara, K.Kaneko and S. Sawai, Proc. Natio. Acad. Sci. USA 110 (2013) 5016. 

[5] T. Ohta, M.Tarama and M.Sano, Physica D 318-319 (2016) 3-11. 


言語: 日本語 


時間割詳細: 

14:30-15:30 前半 

前半終わり次第-16:00 休憩

16:00-17:00 後半 


会場詳細: 

最寄駅とそこからのアクセス 

■JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線/御茶ノ水駅 下車徒歩約3分 

■東京メトロ千代田線/新御茶ノ水駅 下車徒歩約5分 

■都営地下鉄三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線/神保町駅 下車徒歩約5分 

です。地図等は 

https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html 

をご参照下さい。