資源昆虫学研究分野・現代養蚕学グループは、

昆虫・オス生殖妊性の生理機構解明

新規無細胞タンパク質合成系の

構築と利用に向けた研究に取り組んでいます。

<主要な研究テーマ>

オスからみた昆虫生殖学

 ヒトでも昆虫でも体内受精型動物では,精巣で作られたばかりの完成精子は,激しい運動能を持つわけでなく,ましてや,卵子と受精する能力を持ちません。精巣から放出された精子は,射精やメス体内での移動に伴い,多数の因子の影響をうけることが必要です。

 研究室では,特に,カイコガの精子以外の精液部分(精しょう)に注目することで,オス生殖において重要な精子成熟の仕組みを解明しようとしています。この知見を利用すれば,長期冷蔵保存した完成精子を,人工的に成熟させた後,メスに注入することで受精卵をえる昆虫版人工受精法の確立や精子成熟機構の破綻による昆虫数を管理する方法(害虫防除法)の確立が期待できます。

 昆虫に限らず体内受精型動物に広く共通するメカニズムが解明できれば,昨今のヒト男性に起因する不妊問題や家畜の人工授精成功率改善などに対して新しい考え方を提供出来るかもしれません。

👉オスの生殖分子メカニズム(PDF)

無細胞タンパク質合成系開発

近年,DNA情報はPCR,次世代シークエンス,コンピューターテクノロジーの発展により,割合容易に得られるようになりました。しかし,そこから作られるタンパク質を人為的に作る方法は,様々で複雑であり,その目的に応じて選択されいます。生きた細胞を利用した外来タンパク質合成法は,工業利用するために必要な量を得るには,優れた方法ですが,合成タンパク質を得られるようになるまでには,かなりの時間を有するといった問題があります。一方,細胞から抽出した翻訳に必要な因子を基盤として構築した試験管タンパク質合成系である無細胞タンパク質合成法は,多くの合成量は望めませんが,短時間で多種類のタンパク質を合成させることができる特徴を持っています。

 研究室では,カイコガの豊富な絹糸タンパク質能力を支える絹糸腺組織の抽出液をベースにし,DNAの添加により合成が可能な安価で使い勝手のよい転写・翻訳共役型無細胞タンパク質反応系の構築を目指しています。創薬研究などの初期検討や,パンデミックなどの緊急時のワクチン原体合成などへの貢献が期待できます。

👉新しい転写・翻訳共役型無細胞タンパク質合成系の開発
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