講義概要

「初めてのモデル理論」 坪井明人

以下の項目を含むモデル理論の基礎的部分を説明します.

講義1.コンパクト性定理

講義2.Löwenheim-Skolem 定理,基本鎖定理

講義3.飽和モデルの存在,タイプ排除定理,量化子消去の例

ほとんどの定理には,大まかな(ただし正確な)証明を与えます.完全に理解するためには,素朴集合論の知識(順序数,基数などの概念理解)が必要ですが,大学2年生程度の知識があれば,70%くらいは理解できるはずです.

「0-1法則とモデル理論」 池田宏一朗

グラフの性質に関する0-1法則(Fagin)を解説する.この結果のステートメントを理解するために,特別な知識は必要としない.また,元々の証明は組合せ論を用いているが,ここではモデル理論を用いた見通しのよい証明を紹介する.

「モデル理論的ガロア理論入門」 竹内耕太

一番易しい体のガロア理論を題材に、モデル理論を用いてガロア理論が自然に展開できることを解説する。代数閉体におけるQEによって(部分)体の自己同型写像がBig model (代数閉体)の自己同型写像=elementary mapとみなせること、elementary mapのなす群の作用で動かない元は定義可能な元と対応すること、定義可能集合を元の有限列で"コード"する(仮想元消去)ことによってガロア対応が導かれることなどを順に説明する。

「代数とモデル理論」 桔梗宏孝

モデル完全性や量化記号消去ができるための必要十分条件を示し、代数的閉体の理論がこれらの性質を満たすことを示す。また、標数0の代数的閉体で成り立つことは十分大きい標数の代数的閉体でも成り立つことがわかるので、それを利用したAxの定理を紹介する。モデル理論を用いた無限版のラムゼーの定理の証明とコンパクト性定理から有限版のラムゼーの定理が導けることも紹介する。最後に、最近のモデル理論の代数への応用例も紹介する予定である。

「幾何学的モデル理論:linearityの紹介」 米田郁生

射影幾何やaffine幾何の様にベクトル空間に関連するalgebraic closure がSteinitz exchange property を持つ数学的構造に対して幾何的モデル理論の用語で定式化された様々な幾何的概念を紹介します。