異分野融合研究

~地球温暖化を科学する

地層に記録された過去の気候変動の証拠をみつけだす」,

温室効果ガスによる温暖化の視覚的な理解」,

「材料科学:二酸化炭素から燃料を作る」

2023年8月8日(火) 
岡山理科大学 C1号館8階ロビーに集合 
12:30 受付開始 
13:00 全体説明会 
13:30 イベント開始
15:30 終了

本日は基礎理学科のイベントにご来場いただきましてありがとうございました。来年以降も色々な企画を考えておりますのでよろしくお願いいたします。

皆さん,「グリーントランスフォーメーション(GX)」という言葉を知っていますか?
温室効果ガスによる地球の温暖化が引き起こす大規模な気候変動を止めて,私たちがこれからも安心して暮らせるように,温室効果ガスの排出をコントロールできるクリーンなエネルギーや技術を用いて新しい産業を生み出し,これに合わせて社会全体の仕組みを変えていく取り組みです.中学生や高校生の皆さんは,将来,社会の一員として,この大きな社会の変革を担っていきます.「文系だからあまり関係ない」,「物理や化学は苦手なので私には難しそう」と思う必要はありません.この社会変革には様々な視点や切り口がありこの中で皆さんが主役となれる場所を見つけるチャンスがあります.例えば、過去の気候変動を調べて防災に役立てる,クリーンなエネルギーを作る方法を開発する,温暖化の原因を理解して教育に役立てる,その他にも多くの例がありますが,様々です.今回の課題研究では、地球科学,数理科学,材料科学の3つの視点から,気候変動に関連した実験やシミュレーションを体験してもらいます.夏休みの体験を通して,皆さんが将来何になりたいのか,何に向いているのかを考えるきっかけになればと思います.

【地球科学】

地層に記録された過去の気候変動の証拠をみつけだす 

背景:我々人類が出現して進化してきた時代にあたる過去260万年前から現在にかけては,約90万年前までは約4.1万年周期の,そこから現在までは約10万年周期の氷期・間氷期サイクルを伴った気候変動が全地球的にあったことが知られています.ここ数十万年間の氷期・間氷期サイクルの中では,おおよそ120mの海面変動があったとされており、この時代の陸棚上で形成された地層には,気候変動を反映した堆積相や産出する化石種の変化がみられます.


実施内容:本課題では,千葉県に分布する約40~12.5万年前の地層(下総層群)を題材に,堆積構造や含まれる貝化石群の特徴から地層が形成された当時の水深や水温などを推定し,地層から氷期・間氷期サイクルをみいだすことができることを理解することを目的とした実習を行います.


ポイント:地層から得られた貝化石の種の同定から,現在の生息水深や水域からその貝化石が産出した地層が形成された水深や大まかな水温を推定します.地層や化石の情報から古環境を復元していくプロセスを体験してもらいます.

理学部基礎理学科 教授 鎌滝孝信

略歴 

京都大学理学研究科博士課程 修了 博士(理学)

応用地質株式会社,秋田大学地方創生センター准教授を経て

2020年10月から現職

地層から過去の環境変化や津波、洪水などの痕跡を読み取り、自然災害のリスク評価や防災につなげる研究をしています。

数理科学】
温室効果ガスによる温暖化の視覚的な理解

背景:我々の社会活動は大量の化石燃料を様々なエネルギーに変換して消費することで成り立っています.一方で、化石燃料をエネルギーに変換すると,温暖化の原因となる温室効果ガスが大量に放出されることから, 温室効果ガスの排出を2050年までに実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」の実現が大きな目標となっています.


実施内容:本課題では,温室効果の原因となる二酸化炭素(CO2)による赤外線吸収に着目し,エネルギー蓄積の微視的なメカニズムを体験してもらいます.大学で学習する非同次線形微分方程式として有名な強制振動の問題は,古典的な外場の吸収(共鳴)を理解するモデルとしてよく知られています.Geogebraを用いて共鳴条件に対する分子振動の増幅を体験し,分子軌道計算(MOPAC法)と比較することで,CO2赤外線を吸収することによる蓄熱効果を視覚的に理解することが目的です.


ポイント:数式を直接使わずに, CO2が光のエネルギーを吸収して,熱をため込むことを視覚的に体験してもらいます.

理学部基礎理学科 准教授 田邉洋一

略歴 

東北大学工学研究科博士課程 修了   博士(工学)
東北大学理学研究科物理学専攻  助教を経て
2019年から現職

炭素の2次元シートを滑らかに曲げた3次元の曲面とトポロジカル絶縁体の物性を研究しています.

詳しくはこちらをご覧ください 

【材料科学】

二酸化炭素から燃料を作る  

背景:EUは2035年に新車を100%電気自動車とすることを目指していましたが,最近になって合成燃料を利用する車の販売を新たに認めることになりました.合成燃料とはCO2H2で還元して合成できる低級アルカンなどのことで,ガソリンと同様に扱える物質です.原料にCO2を用いるので,燃焼により排出するCO2相殺でき,実質的にCO2排出しないというものです.


実施内容:低級アルカンが、CO2H2還元で本当に合成できるのか,エネルギー的に調べます.CO2に加えて,ヘキサンの生成熱を分子軌道計算から求めることで,エネルギー的に可能なことを理解してもらいます.

 H2は現在、化石燃料の改質反応で製造されていますが,追加エネルギーが必要なだけでなくCO2も排出されるため,これでは意味がありません。CO2を排出しない水素製造が求められており、ここでは再生可能エネルギーを用いて水から水素を製造する方法を紹介します。

 また,CO2をMgで還元する実験を観察してもらいますが、Mg製造にエネルギーが必要になることを合わせて理解してもらいます.


ポイント:CO2を燃料にするには還元エネルギーが必要で,再生可能エネルギーをどのように利用するかが課題であることを解説します.

理学部基礎理学科 教授 東村秀之

略歴

京都大学工学研究科修士修了・同論文博士取得・
住友化学(株)上席研究員を経て、2016年から現職

生体に学びながら、社会に役立つ新材料を開発しています。

有機材料創製研究室 東村 秀之 教授 Blog | 岡山理科大学 | 基礎理学科BLOG (ous.ac.jp)