物質間に働く相互作用は多様な化学現象を生み出す。溶媒和や固体への担持によって引き起こされる化学現象の変化を理解するには、量子化学だけでなく統計力学や固体物理学に基づくアプローチが必要となる。 我々は、溶液内での化学反応やヘテロな構造体の外場(光や電圧)応答機構を原子や電子のレベルで明らかにするべく、量子化学や統計力学の複合的な理論計算手法を開発するととともに、大規模計算を駆使して研究を行ってきた。
現在は、光触媒や電極触媒の反応機構を解明するべく方法論の開発を進めつつ、実験グループと連携して新規な機能性材料や触媒の設計を行うべく研究に取り組んでいる。
第一原理計算プログラムSALMONを用いて、ナノ構造体の光学応答の研究を行っている。そして独自の解析法を用いて、ナノ構造体の光学応答における界面の役割を明らかにしてきた。さらに、分子性液体に対する統計力学理論（3D-RISM理論）とSALMONを融合して方法論を拡張した手法を開発し、溶液内でのナノ物質の光励起の研究を進めている。
J. Phys. Chem. C, 126, 7492 (2022).
電極系を扱うための独自の理論的手法の開発を行っている。そして、ナノ界面系の電子構造について、電圧の印加にともなう帯電や電極電場による変化の機構を明らかにしてきた。さらに、SALMONと3D-RISM理論を融合した手法を用いて、ヘテロな物質と電解質溶液の界面に形成される電気二重層の研究を進めている。
J. Phys. Chem. C, 126, 7492 (2022).
Chem Lett., 49, 1117 (2020).
溶液内化学現象について、RISM-SCF法を用いて研究を行ってきた。さらに、固液界面での溶媒和ダイナミクスを扱うために、拡散方程式や線形応答理論とRISM理論を組み合わせた手法を開発してきた。
