研究発表・事例報告 発表要旨
インプットからアウトプットにつなげる多読授業ー大学編
平野 亜也子(京都産業大学)
英語を読む力をつけるには、たくさん読むことが有効だとされており、英語多読は大量の英語インプットが可能になるため、英語運用能力の育成に効果があるとされている。ただ、大学で「多読指導」はそれほど行われておらず、具体的な指導法についてもあまり論議されていない。発表者は大学で「多読」クラスを担当しており、試行錯誤しながらさまざまな授業内アクティビティを行ってきた。その中で、特にインプットからアウトプットへつなげることが重要だと考え、「多読」プレゼンテーションなどを取り入れている。また、発表者の授業ではOxford Reading Tree(ORT)という幼児向けの絵本を使用している。当初は大学生向けとは思えない簡単なこのORTシリーズから始めることに疑問を持っていたが、現在はその効用を実感している。そこで本発表では、インプットからアウトプットへつなげる授業内アクティビティについて紹介するとともに、大学の「多読」授業でORTシリーズから始めることの効用についても議論する。
スピーキング・リスニング科目のオンライン授業実践―ESPアプローチを取り入れて―
今村 梨沙(関西大学 非常勤講師)
本研究は、2020年度春学期の私立女子大学日本語日本文学を専攻する1年生のリスニング・スピーキングに重点を置いた必修科目において、英語で日本文化を学んで表現するというESP的要素を取り入れたオンライン授業実践を行い、ESPアプローチを取り入れた授業と同期型・非同期型併用のオンライン授業の有効性を明らかにすることを目的とした。
全15回授業中、10回は資料提示と課題提出の非同期型、5回は同期型で英語でのプレゼンテーションを実施した。非同期型では、学生は音声ストリーミングで教科書のリスニングと内容理解を行い、与えられたトピックのレポートを英語で作成した。
最後の授業で11問の多肢選択式と記述式で構成した質問紙調査を実施し、多肢選択式は項目別に最大値、最小値、平均値、標準偏差を算出し、記述式に関してはコメントをキーワード別に分類した。
結果として、日本文化を英語で学習するというESP的要素を取り入れた授業の有効性の示唆を得ることができた。授業形態に関しては、多くの学生が非同期型と同期型を併用した授業に満足し、とりわけ非同期型の授業を支持した。その理由や学生の考えをwithコロナの時代の英語教育に生かすべく発表にて報告する。
発信力を高める英語ディベート実践―課外活動から授業まで―
泉 美穂(神戸大学附属中等教育学校)
英語ディベートにどのようなイメージを持たれていますか?日本では「ディベート」というと難易度が高く、討論=言葉での言い合いというような否定的なイメージを持たれている方が多いようです。欧米では小・中学校での授業にディベートが組み込まれており、コミュニケーションツールで発表力や思考力を鍛えるものといった肯定的なイメージがあるようです。中・高校生に課外活動や授業で英語ディベートを実施したところ、「論理的思考力」・「コミュニケーションスキル」・「聞く力」・「話す力」などの伸びを実感した生徒が非常に多く、ディベートを高く評価しています。英語ディベートは現行の教科書にも扱われているものの、取り組みへのハードルが高いという心理面や技術的な理由により取り組むことなく生徒も教師も効果を感じることが少ないようです。今回は初心者の私の3年間の実践と生徒がその効果を実感している英語ディベートの実践を報告します。