玉田ゼミとは


研究分野

従来の価格理論に加え、ゲーム理論、情報の経済学、インセンティブ・契約理論などを分析ツールとして獲得したことにより、ミクロ経済学はその分析対象の大幅な拡張に成功し、それは産業組織論や公共経済学をはじめ、マクロ経済学も含めて経済学の全分野に及んでいます。

そのキーワードとしては「戦略」、「競争と協調」、「(非対称)情報」、「インセンティブ」などがあげられます。

これらのキ-ワードが相互に密接に関連しているのはもちろんですが、とくに、いかにして経済主体に対して連切なインセンティブを与えるかという問題意識を設定し、経済現象に関する分析・議論を行いたいと考えています。市場・組織・取引関係の様々な局面で利用可能な情報には偏りがあり、経済主体が情報を戦略的に活用すると、典型的にはモラルハザードなどの問題が発生し、経済の効率性を損なうことになります。個別の経済主体に適切なインセンティブを与える処方箋としては、競争の導入や制度・組織の設計などをあげることができるでしょう。

インセンティブと市場・組織・制度との関係を理論と現実の両面から研究・評価することに当研究会の輪をおきます(これは、私自身の研究分野でもあります)。さらに、上記キーワードを軸としたミクロ経済分析の対象をより広範囲にあげると、企業戦略の理論、企業行動・組織の分析、規制の理論、オークション理論、公共経済学、労働経済学、法と経済学、政治経済学などがあります。当研究会の各参加者はこれらの中から自らの関心に従って研究対象を選ぶことになります。

したがって、広い意味では、当研究会の研究分野はミクロ経済理論とその応用といえるでしょう。

研究会の目的と運営方法

当研究会の目標は『専門的知識としての経済学の習得,及び現実経済の分析』にあります。教養を人や社会とのかかわり方とすると、重要な柱は、

『視点の確立』と『視野の拡大』

の2つに求められます。現実の経済現象に対する視野を広げ、問題意識を培うことは重要ですが、闇雲な視野拡大は無意味です。視点・裏づけがない問題意識は、しばしば(ジャーナリスティックな)直感のみに頼った結論や処方箋に帰結します。しかし、経済学的真理は直感的にも正しいですが、直感的に妥当と思えることは必ずしも正しくはありません。

したがって、現実経済を眺め、問題意識を培うためには、まず視点の確立が不可欠です。他方、視点を確立したとしても、視野を広げ問題意識を持たなければ何も視ていないことと同じです。視点を確立した上で、バランスよく視野を拡大していく、これが現代的な意味での教養につながると考えています。

当研究会では経済理論、とくにミクロ経済理論を「視点」にあて、そして、「視野」は現実の経済現象すべてに及びます。経済理論を専門的知識として習得することにより、現実の経済現象を個人として普遍的な眼差しで見ることができ、また、国際的にも確立された共通の基盤の上に立つことができるのです。

このような目標に基づいて、本ゼミでは、教科書を用いて価格理論やゲーム理論などの経済理論の正確な理解を目指します。そして、現実の経済現象を理論的に分析した応用的文献を輪読・議論します。さらに、3年生はサブゼミとパートゼミに参加します。サブゼミは本ゼミを補完するものとして位置付け、テキストの輪読、演習を行い、また、現実的なトピックを題材にしたディベートも取り扱います。パートゼミでは学生が関心ある具体的な研究テーマ(主に、現実の経済問題)について分かれて研究をおこない、その成果を三田祭論文やインゼミに結実させます。4年生は卒論の作成を行います。卒論は、研究会に参加したことから得た経済学の知識と自らの具体的な関心を1つの構築物として作成するものであり、研究会活動の目標と位置づけられます。テーマ選びの自由度は高いですが、研究会を通じて獲得した経済理論の知識の発揮を求めています。


本ゼミについて

本ゼミでは、教科書を用いて価格理論やゲーム理論、インセンティブ理論(契約理論)の正確な理解を目指します。

今年度(2023年度)は本ゼミは輪読形式で進められ毎週水曜日の4、5時限に対面で行っています。今年度の3年生の参考書は『企業の経済学』Luis M.B.Cabral (著)と『政治の数理分析入門』浅古泰史(著)です。また、4年生は『行動経済学』 室岡健志(著)と『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』伊神満(著)の輪講及び卒論作成を行っています。担当者がプレゼンテーションをする中で、疑問点や重要な個所を先生とともに確認しながら進めていきます。

サブゼミについて

3年生はサブゼミ必修です。サブゼミでは本ゼミを補完するものとして位置付け、本ゼミでは扱う事のできない基礎的な内容について学習します。サブゼミはゼミ生により自主的に進められ、毎週火曜日の4限に対面で行っています。今年度の参考書は『経済学のためのゲーム理論入門』ロバート・ギボンズ(著)等です。毎週1章ずつ進めています。基本的にはゼミ生の中で議論しながら理解を深めていきますが、先生が来られてアドバイスを下さる事もあります。

パートゼミについて

3年生はパートゼミ必修です。パートゼミでは学生が関心のある研究テーマについてパートに分かれ、三田際論文の作成を中心に取り組みます。パートゼミは、ゼミ生により自主的に進められ、毎週火曜日の5限に対面で行っています。パートの選択は自由で、2023年度は「インセンティブ」、「行動経済学」、「企業戦略A」、「企業戦略B」の4つのパートに分かれています。また、この他にミクロ経済学と関係がある範囲で、マクロ経済学や国際経済学、公共経済学などをテーマとして選ぶ事もできます。研究テーマに沿った既存の論文や先生が提示して下さった文献などを中心に研究を進めています。

夏合宿について

3年生は三田祭論文、4年生は卒業論文の中間報告を行います。

2023年度の夏合宿は9月19日から21日に山梨県の八ヶ岳で行われました。滝や牧場に行き、全員で交流を深めることができました。

インゼミについて

2023年度は、12月9日に名古屋大学の花薗ゼミと同志社大学の本領ゼミ、大阪大学の安田ゼミ、慶應義塾大学のグレーヴァゼミと合同でのインゼミがありました。今年度は対面で「SDGsをゲーム理論、ミクロ経済理論を使って考える」という共通のお題で研究内容についての発表や質疑を行いました。優秀なゼミとのインゼミで大きな刺激を受けるとともに、互いの親交を深めることができました。懇親会も3つのゼミ合同で行い、大変貴重な経験となりました。