小さい頃から絵を描いてきた。だいぶ事情が変わってしまったけど、今も何とか描いている。
絵が中心にあるわけじゃないと思う。身体があって、眼の前に何かがある。それは友人が大切にしているカーブのある風景だったり、ご飯を食べている父親だったり、散歩をしているときに思い出した何処でみたかも判らない記憶だったり、道端に植えられた一本の柿の木だったりもするし、たった今自分が引いた線だったりする。
筆を持った手を動かすとき、眼の前に何かがある。そのあいだに立ち現れてくるもの、それが絵だ。
その時々で中心っぽいものがある。絵を描くと、中心っぽいものがズレてそうじゃなくなったり、かと思えば、遠くにあったものと結びついてべつの中心ができたりする。