研究テーマ
主な関心
認知言語学(フレーム意味論)
コーパス言語学
プロジェクト基盤型英語プログラム (Project-based English Program; PEP)
科学哲学(言語学の哲学[特にコーパスを用いた意味研究に関する方法論的な問題について])
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認知言語学(フレーム意味論)
私たちは使われた語の意味だけを利用してある言語表現を理解しているわけではありません.例えば,"Alice bought a car" のような事例を聞いた際には,買い手として Alice という人物がおり,その人物が支払った代金と引き換えに何らかの車を手に入れ,そして,そこには(いくらかは分からなくても)代金があり,特定の代金と引き換えにその車を手放すことを同意した売り手がいることを理解します.これは Fillmore (1977, 1982, 1985) から始まるフレーム意味論 (frame semantics) の考え方です.
ヒトの認知能力と言語使用の関係を考察する認知言語学 (cognitive linguistics) において (cf. Lakoff 1987, Langacker 2008),フレーム意味論は非常に重要な役割を果たすものとして評価されています.その中でもフレーム意味論は独自の発展を遂げ,その分析結果を FrameNet というデータベースとして構築することが試みられています.私のフレーム意味論に関わる研究は大学院時代から継続しており,次のような論文としてその成果をまとめています.
フレーム意味論の名詞の意味論への拡張
フレームと名詞の意味の関係から名詞の意味クラスとして,(i)普通名詞,(ii)関係名詞,(iii)事態名詞という三つを提案し,それぞれの特徴を論じました(大学院時代の主な研究の総括です).
神原一帆. 2021.「フレーム意味論にもとづく名詞の意味分析」博士論文. 京都大学大学院 人間・環境学研究科. URL
「理解の意味論」に向けて
大学院修了後は意味役割付与のような現象を中心に,コーパスを利用した質的・量的事例分析を展開しています.「我々が言語表現を理解する際にどのような特徴を利用しているのか?」ということを主なテーマとして,以下のような論文を発表しています.特に,Kambara et al. (2023) は動詞 replace をもとに,「どのようなフレームであればどのような対象がどのように振る舞いうるか」という参与可能性 (participatability) を分析したものです.
Kambara, Kazuho, Hajime Nozawa, and Takeshi Takahashi. 2023. Differentiating valence patterns: A quantitative analysis based on formal and semantic attributes. Constructions 15(2). DOI: https://doi.org/10.24338/cons-571
神原一帆, 野澤元, 高橋武志. 2024.「意味フレームの同定に利用可能な参与者の意味属性の比較: 動詞replaceをもちいた予備調査 」『人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会』100, 222--227. DOI: https://doi.org/10.11517/jsaislud.100.0_222.
神原一帆, 野澤元, 高橋武志. 2024.「事態の焦点化と構文選択に関する量的分析: 動詞stabの事例分析をとおして」『日本認知言語学会論文集』24: xxx--xxx.
「フレーム」とは何か?
(工事中)
Kambara, Kazuho and Tsukasa Yamanaka. 2023. Philosophy of data science for corpus linguistics: A pragmatistic point of view. Annals of the Japan Association for Philosophy of Science 32: 47--73. [Fulltext]
山中司, 神原一帆. 2023. 『プラグマティズム言語学序説: 意味の構築とその発生』東京: ひつじ書房. https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1184-7.htm
コーパス言語学
(工事中)
Kambara, Kazuho, Taishi Chika, and Takahashi Norihisa. 2024. Conflating directional association measures: A case study on NP constructions. Journal of Corpus-based Lexicology Studies 6, xxx--xxx.
Kambara, Kazuho and Taishi Chika. 2023. Toward a corpus-based identification of nominal relationality and uniqueness: A constructionist approach. In Proceedings of the 37th Pacific Asia Conference on Language, Information and Computation. 661–669. [Fulltext]
神原一帆. 「コロケーション研究における「適切な」抽象度を検討する」, 第2回メソドロジー研究会. 2023年 11月.
論文化のための準備中[2024年2月現在]
科学哲学(言語学の哲学[特にコーパスを用いた意味研究に関する方法論的な問題について],コーパス言語学的手法を用いた科学哲学研究)
「科学哲学」という分野でおこなわれている研究は多岐に渡りますが,概ねある科学分野における研究者たちの営みを明らかにする分野として特徴づけられることが多いように思われます.これを私が関心をもつ言語学的な議論に寄せるのであれば,「(コーパス)言語学者は何をしているのか?」という問いに集約することができます.このような研究は言語学の方法論の原理を明らかにするものです.それと同時に,私が専門としているコーパス言語学は分析者の直観が「届かない」内容を量的な証拠とともに明らかにするものです.これをふまえると,(i) (コーパス)言語学の科学哲学と,(ii) コーパス言語学的手法の応用という二つの方向性を考えることができます.私は両方の研究についてどちらも進めており,現時点では以下のような研究成果を発表しております.
(コーパス)言語学者は何をしているのか?
(工事中)
Kambara, Kazuho and Tsukasa Yamanaka. 2023. Philosophy of data science for corpus linguistics: A pragmatistic point of view. Annals of the Japan Association for Philosophy of Science 32: 47--73. [Fulltext]
菅原裕輝, 神原一帆. 「コーパス研究は仮説検証型の科学か?: 形式概念分析を用いたメタ分析 」, 英語コーパス学会 第49回大会. 2023年9月 於 関西大学.
同じ内容を論文化したものを著者を加え,別題でかつ神原を第一著者として某雑誌に投稿しています(査読中[2024年2月現在]).
神原一帆, 春日悠生, 田中悠介.「「意味」を科学する:認知言語学の観点から」, 応用哲学会第 12 回年次研究大会 口頭発表 2020 年 4 月 於 信州大学.
論文化のための準備中[2024年2月現在]
コーパス言語学的な手法の応用
(工事中)
Sugawara, Yuki, and Kambara, Kazuho. 2024. Revisiting semantic prosody of cause: A sentiment analysis. Journal of Corpus-based Lexicology Studies 6, xxx--xxx.
Sugawara, Yuki, and Kambara, Kazuho. 2023. The many uses of explain: Quantitative corpus method and philosophy of science. Annals of the Japan Association for Philosophy of Science 32: 23--46. [Fulltext]
プロジェクト基盤英語プログラム
(工事中)
山中司 (編). 2024.『AI・機械翻訳と英語学習: 教育実践から見えてきた未来』東京: 朝日出版.(第4章「知識の伝達から蒸留へ:「教師」としての機械翻訳論のための試論」を担当)
山中司, 神原一帆. 2023. 『プラグマティズム言語学序説: 意味の構築とその発生』東京: ひつじ書房. https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1184-7.htm
山中司, 神原一帆. 2022.「フレーム理論にもとづく「交渉される意味」のモデル化: エージェント志向の言語観を目指して」『神戸大学大学教育推進機構国際コミュニケーションセンター論集』18: 77-100.
神原一帆, 山中司. 2022.「意味の交渉人としての教員の役割:プロジェクト発信型英語プログラムの記号論的解釈を巡って」『立命館大学理工学研究所紀要』80: 67-78. URL