プロフィール
茅葺屋根職人
宮本 宗和 みやもと むねかず
長野県の片田舎で庭師の家に生まれた私は、父から人と自然の調和を教えられ、自然の森や林、山などが織りなす造形美に親しんで育ちました。
高校卒業後、一度は地元以外の環境に触れてみたいという気持ちや、困っている人の役に立ちたい、人々の生活や命を守りたいという気持ちから、航空自衛隊に入隊し、北海道の部隊に赴任しました。北海道の気候は厳しく、自衛官の私にとっても楽に過ごせるものではありませんでした。古くからこの厳しい自然環境を生き抜いて来たアイヌの人々の知恵に感銘を受けたことを覚えています。自衛官時代には仕事以外でも、趣味で国内や海外を旅し、多くの異なった文化や自然、人々の営みに触れ、その尊さを目の当たりにし、人々や自然、文化への思いを強くしました。
自衛隊の仕事は屋外での訓練や作業が多く、仕事の中においても、この日本の文化や環境を守りたい、自然との調和の中で生き抜いてきた日本人の知恵や技術を後世に残したいと思うようになりました。そして、自分が生きている現代から、自分の力で子孫に残せるものは何かと考え、木を使ったぬくもりのある家屋を残して行こうと思い、きこりの職に転身しました。きこりの仕事の中で、多くの人や文化に触れ、現在の茅葺の仕事に巡り会いました。「日本古来の知恵と技術で人々の生活や文化を守る。」これこそ自分の求めるものであり、人生をかける仕事であると感じました。そして、人々の生活や命を守りたいと、かつて自衛官を志した時と同じ思いで茅葺屋根職人の門を叩きました。
茅葺の家は全て竹・木・荒縄・ススキ等の自然の材料で出来ていて、使われなくなった後も、全て朽ちて土に帰ることができます。この自然との調和が茅葺屋根が我々に心の安らぎをもたらす根源であると考えています。一人の日本人として、この心が落ち着く茅葺屋根を自分の力で一つでも多く残していきたいという思いから独立し、現在、三重県を拠点に全国の職人さんと助け合いながら全国の茅葺屋根に携わっています。