ブドウガイ

Haminoea japonica Pilsbry, 1895

レア度:いつでも見られる

形態:ブドウの実のような貝殻をもつ巻貝。貝殻は1㎝程度で薄く、つるつるしている。螺旋が平面的なので、開口部を手前に向けないと、巻貝にはみえない。軟体部は大きく、白黒の小斑点を散りばめて、貝殻からも透けてみえる。軟体部は通常、貝殻を左右から覆っているが、貝殻にすべて収納することもできる。蓋はもたない。頭の先はへらのように広く、垂れ目に見えるので、案外かわいい(?)。完全に「にわかせんぺい」である。

生息域:北海道から九州に分布し、北米西岸やヨーロッパにも移入している (Hanson et al. 2013)。潮間帯から水深50mの岩礁に生息し、葛登支では春から夏にかけて、護岸壁近くの潮溜まりでよくみられる。海藻の繁茂した泥っぽいエリアを好む。

生態:植食性であり、エゾヒトエグサやキブリイトグサを食べる。葛登支では3月から8月に産卵期があり、産卵期が終わると親貝は死亡する (Ito et al. 1996)。産卵期の初期は大卵多産であり、後期は小卵少産となる (Ito 1997)。卵塊はゼリー状で、なかに黄色の卵がたくさん入っている (網尾 1955)。相模湾の個体群は、ふ化幼生に浮遊幼生と匍匐幼生が混在する「ペシロゴニー」であることが知られている (倉持・倉持 2010)。フローティングによって海中を移動することもできる (倉持・倉持 2015)。

その他:貝殻は非常に壊れやすいが、ヤドカリに使われることもある

2015年5月 りった
2015年5月 りった 眼点のアップ
19年6月 山上
20年4月 青木
20年7月 大友
2016年3月 りった石と同化する
2015年6月 アメフラシの横で寄り添う2個体
2015年5月 海藻にぶら下がり、殻をチラ見せする
2016年2月 りった となりのウニ殻をみてわかる通り、とても小さいです
2017年6月13日 りった 卵塊
21年 とみよし はむはむしておられる
2021年5月 とみよしつぶらな瞳
2021年6月 藤本
2021年4月29日 りった
2021年7月23日 りった貝殻
2021年7月23日 りった

引用文献:

  1. 網尾勝. 1955. 二三の海産腹足類 (Pulmonata, Opisthobranchiata) の卵並びに仔貝の浮泛性について. 農林省水産講習所研究報告, 4: 239–244.

  2. Ito, K., Goshima, S. & Nakao, S. 1996. Growth and reproduction of the generalist opisthobranch Haloa japonica: effect of algal seasonality on growth rate. Marine Biology, 126: 395–401.

  3. Ito, K. 1997. Egg-size and-number variations related to maternal size and age, and the relationship between egg size and larval characteristics in an annual marine gastropod, Haloa japonica (Opisthobranchia; Cephalaspidea). Marine Ecology Progress Series, 152: 187–195.

  4. 倉持敦子・倉持卓司. 2010. 相模湾産ブドウガイにおいて観察された孵化形態の多型. 神奈川自然誌資料, 31: 9–12.

  5. Hanson, D., Hirano, Y. & Valdés, Á. 2013. Population genetics of Haminoea (Haloa) japonica Pilsbry, 1895, a widespread non-indigenous sea slug (Mollusca: Opisthobranchia) in North America and Europe. Biological invasions, 15: 395–406.

  6. 倉持敦子・倉持卓司. 2015. 野外で観察されたブトウガイ(軟体動物門:腹足綱:頭楯目:ブドウガイ科)のフローティング行動. 神奈川自然誌資料, 36: 37–38.