カルガモ

Anas zonorhyncha Swinhoe, 1866

レア度:いつでも見られる

形態:体長約60cm (マガモと同大)。全体的に褐色の羽に覆われていて地味であり、体色の性差はほとんどない。ただし、繫殖期のペアを見比べると、雄は雌よりもべったりと一様に黒くみえる。これは、1枚1枚の羽の縁辺部にある淡色帯の幅が、雌でいっそう広いためである。したがって雌はまだら模様に見えるが、単独で見るとどちらかわからないような個体も多い。また、雄は上尾筒("腰" 的な場所)の色が雌よりも黒っぽい。本種はマガモの雌に似ているが、首より上が白いため胴体とのコントラストが強く、顔にはアイラインだけでなく口元から伸びる "微笑み" ラインがある点で区別できる。本種の嘴は先端部のみ黄色でほかは黒い。ただし、本種はマガモと雑種をつくり (通称: マルガモ)、両種の特徴を何割ずつか (半々というわけではない) そなえた個体が普通に存在する。

生息域:ユーラシア大陸東部に分布し、淡水域から海水域まで広く生息する普通種。日本では留鳥。函館近郊ではマガモより多く、葛登支では満水時によく水面に浮かんでいる。水産学部キャンパスの隣を流れる小田島川でもよく見られる。

生態:雑食性で、植物の種子や根のほかに水生昆虫や貝類、小魚なども食べる (羽田 1962; 水野 2006)。餌は歩行してついばんだり、水面に浮かんで濾しとったりして食べる。また、しばしば下半身を水面に突き出すようして、水底の餌をとる (逆立ち採餌)。繁殖期は4–7月。つがいは12–2月頃形成され、抱卵期に解消し、子の保護は雌のみがおこなう。雛は約1か月でふ化する (中村・中村 1995)。初夏に10羽前後のがみられ、これが信じられないくらい可愛い。生息密度の高い繫殖地では、親鳥は他個体や近縁種の雛を殺すこともある (Shimada et al. 2002)。

その他:種小名は「帯のある嘴」の意。zonoが「帯」、rhynchaが「鼻先 (ここでは嘴)」を意味する。rhynchaは、水産学部生なら全員知っている (Oncorhynchus =曲がった鼻先)。

2020年7月@函館 大友だいぶ大きくなった雛たちだが、兄弟で集まり休むところがあどけない。
2020年3月@埼玉・見沼自然公園 大友
2020年4月@函館キャンパス 山上右が雌、左が雄

引用文献:

  1. 羽田健三. 1962. 内水面に生活する雁鴨科鳥類の採食型と群集に関する研究. XIII. 雁鴨科鳥類の食物. 生理生態, 10: 98–129.

  2. 中村登流・中村雅彦. 1995. 原色日本野鳥生態図鑑〈水鳥編〉. 保育社.

  3. 水野千代. 2006. カルガモの魚類捕食に関する事例報告. Strix, 24: 201–203.

  4. Shimada, T., Kuwabara, K., Yamakoshi, S. & Shichi, T. 2002. A case of infanticide in the spot-billed duck in circumstances of high breeding density. Journal of Ethology, 20: 87–88.