スナモグリ

Nihonotrypaea petalura

(Stimpson, 1860)

レア度:めったに見ない

形態:英名をGhost Shrimpというが、体色はふつう半透明の乳白色で、柔らかい甲を持つため納得の名前である。エビやシャコの仲間ではなく、アナジャコ Upogebia major などとアナジャコ下目 Thalassinidea を形成する。よく目立つはさみは左右で大きさが異なる。眼は体の前端にあるが退化的で小さく、つぶらな瞳。繁殖期には、少なくともメスは、全身が鮮やかな濃いピンク色になる。近縁種にニホンスナモグリ N. japonica があるが、スナモグリのはさみ脚は大きな歯を持たず幅も狭いこと、頭胸甲の後半の部分が狭いこと(甲長の1/4程度、ニホンスナモグリは1/3程度)であることで識別できる。

生息域:全国の温帯域に分布するとされ、恐らくだがニホンスナモグリも葛登支に生息しているはず。スナモグリは、小石が点々としてその間に泥がたまっている環境を好むらしく、巣を掘って生活する。

生態:

その他:スナモグリ類、特にニホンスナモグリでは、巣穴の形成の際に粒径の細かい砂泥を大量に排出し、底層表面の環境を改変することが知られる。この攪拌作用は、”生物攪拌(Bioturbation)”とよばれる。表在性のホソウミニナは表面の粒子が細かいことで泥に埋まってしまう(”沈み込み現象”)ため、個体数に負の影響を受ける(東ら, 2014)。対して、スナモグリの巣内に共生するトリウミアカイソモドキ Sestrostoma toriumii (小型のカニの仲間) といった種の多様性は増すことも分かっている(東ら, 2017)。

2018年7月 山上
2018年7月 山上すぐ潜る
2021年6月@茂辺地 とみ抱卵mother 

引用文献:

  1. 東和之・大田直友・河井崇・上月康則, 2014. 徳島県沖洲人工干潟でのホソウミニナの生息阻害要因. 沿岸域学会誌 27(3): 41-50.

  2. 東和之・大田直友・橋本温・大谷壮介・上月康則, 2017. ニホンスナモグリの生物攪拌による底質環境の改変と底生生物相への影響. 土木学会論文集 B3(海洋開発) 73(2): 857-862.