シリス科の1種①

Syllidae sp.

レア度:いつでも見られる

形態:体長は2~5㎝で細長い。副感触手(顔の前に伸びる口のようなもの)が互いに離れること、各疣足の背触手が細長いことからシリス亜科 Syllinae に属すると思われる。本種は前口葉が丸く、副感触手は細長い三角形。眼は赤く、台形状に配置する。前口葉から伸びる感触手は中央のものがやや長い。疣足節は90~130節程度で、疣足の背触手は長短のものが交互に並ぶ。体色はくすんだ黄緑で、体後部のストロンは発達すると青く見える。10~15疣足節の部分が肌色になる個体が多い。

生息域:葛登支ではフジマツモなどをほぐすと大量に見つかる。

生態:シリス亜科の種はほぼ全て「Stolonization」という繁殖様式を持つ(Franke, 1999)。親個体の体の後部が生殖用の個体(ストロン)に変態(親個体そのものが変態する様式は「Epigamy」と呼ばれ、フツウゴカイなどでも見られる。)し、成熟したストロンは親個体から離れて生殖遊泳をする。ストロンは発達した眼と遊泳に特化した形態を持つが、口は持たない。親個体は生存して離れた尾部を再生し、再度繁殖に参加する。葛登支では、ストロン形成中の個体は10月中旬の新月前に見られた。親個体は底生性でのろのろ歩くが、ストロンになる体後部はすでに別の生き物のように激しくくねっていた。

その他:


2020年10月 大友
2020年10月 大友尾部のストロンには赤い眼ができている

引用文献:

  1. Franke, H., 1999. Reproduction of the Syllidae (Annelida: Polychaeta). Hydrobiologia 402: 39-55.