イワムシ

Marphysa iwamushi Izuka, 1907

レア度:たまに見られる

形態:頭部には「感触手」という感覚器を5本持つ。さらに、感触手の根元に眼点が1対ある(非常に小さくわかりにくいが、つぶらでかわいい)。頭部のほっぺのような部分は「前口葉」とよばれる器官で、口は腹側に開く。体には金属光沢がある。日本近海で見られるものでは、遺伝的に異なる数種類の隠蔽種が混ざっていると考えられている。(Abe et al., 2019)。

生息域:世界中に分布する。内湾性の転石帯などに生息し、砂に潜ったり、時には柔らかい岩に穴をあけて棲むこともある。

生態:浮遊幼生期を持つ。成長に伴い体節が増加するため、体節数から日齢を求める関係式が知られる(今井, 1975)。発泡スチロールなどの漂流物に着底・穿孔し、かみ砕いたものを糞として放出するため、マイクロプラスチックの形成源の一つとされる (Jang et al., 2018)。葛登支では紅藻など柔らかい海藻を食べる様子が観察できる。

その他:釣り餌としてよく使われる。一方で酢の物や空揚げにして食すこともできるらしく、イソギンチャクなどと比べると磯臭さは少ないとのこと。ただやはり見た目がネックになるという話である(志村, 1979)。感触手で周囲のものに触れながら巣穴から顔を出す仕草が可愛らしい。クロスジムシロがすぐ近くを歩いていても巣穴に隠れたりしない。
巣穴の入り口に指を置いていると噛みついてくる。カニやクワガタに挟まれる感覚に似ている。噛まれても特に害はない。

2020年6月 青木
2020年6月 青木
2020年6月 青木
2020年10月 大友疣足の背中側にあるのは鰓(鰓糸)、位置によって鰓糸の数は異なる
2021年5月 とみよしとってもシャイ
2020年 青木
2020年 青木

引用文献:

  1. Abe, H., Tanaka, M., Masanori, T., Abe, S. & Nishigaki, A., 2019. Molecular evidence for the existence of five cryptic species within the Japanese species of Marphysa (Annelida: Eunicidae) known as "Iwa-mushi". Plankton Benthos Res. 14(4): 303-314.

  2. Jang, M., Shim, W. J., Han, G. M., Song, Y. K. & Hong, S. H., 2018. Formation of microplastics by polychaetes (Marphysa sanguinea) inhabiting expanded polystyrene marine debris. Marine Pollution Bulletin 131: 365-369.

  3. 今井利為, 1975. イワムシ Marphysa sanguinea (Montagu)の産卵と初期形態について. 水産増殖 23巻1号 pp.14-20.

  4. 志村茂, 1979. 食べられる海辺の生物(2). 調理科学 Vol.12 No.4 pp.36-42.