観農亭は広島県安芸高田市向原町坂の奥田家の離れであり、象圓池と名付けられている庭園とともに、賓客などを接待するための施設であったと考えられ、庭園とともに安芸高田市の文化財に指定されています。
象圓池ともにある種のオープンスペース的なものとして公開しており、また見学のご要望にも応じています。
皆様の活用をお待ちしています。
※なお個人宅であり、母屋には居住者がおります。断りなく立ち入ることは厳にお慎み下さい。
管理人敬白
と書いていながら申し訳ないのですが、これがさっぱり分からないのです。
何しろこの離れについての文献等の資料は皆無の上、祖父はえらく無口で屋敷について何も語ってくれていません。で父が私が学生の頃、明治十七年に母屋を立て直した時には既に百年建っていたらしい、以前ここに住んでいた三重(さんしげ)と言う一族が建てたらしいと話してくれたのが唯一の由来らしきものと言った有様で、もちろんこの話についても何の裏付けもありません。
ただし御湯殿の厠に刀掛けがある事、また庭に駕籠を置くための石が設けられており、武士階級を意識した造りと考えられる事から、建築時期は少なくとも江戸時代の後期まではさかのぼれるものと思われます。
奥田家と観農亭の関係は明治初期、私をさかのぼる四代前の源三郎なる人物が、同じ向原町内の当時保垣村の奥田家(屋号杉安)より分家するに際し、この屋敷を買い取った時より始まります。
この際、母屋については明治十七年に建て替えた事が棟札により確認できます。また庭の蔵はこの時に建てたと聞いていますが、離れの観農亭についてはそのまま残したとの事で、必要により修理しながら現在に至っています。
ただし今の世の中では、「こんな離れでもてなさなきゃならん賓客って一体誰。」と言う事になるのは理の当然というもので、現在はほとんど使う事もないのが現状です。
メインはやはり観農亭です。
かって父から近在で最初に立った二階建ての家屋と聞いていますが、例によってどんな根拠によるものかは分かりませんし、「近在」とは具体的にどの範囲かなど、言った父からして分からなかったに違いありません。
ただし通常の二階家よりも高さがあり、またひさしを鴨居で支えるのではなく、鴨居の外側に丸木を渡して柱により支えることにより、庭に対する展望を広く確保する、あまり見られない構造になっており、ある程度の歴史はあるものと考えられます。また内部には三畳のお茶室や水屋なども備えており、襖絵や板絵、調度等にも凝ったものが見受けられます。
また賓客を接待するための建物のため、ひさしを支える丸木や敷居や鴨居などには一木を使用しており、相当にこだわったものと思われます。
なお流しは一か所設けていますが、二階には電気が来ておりませんので、一応お断りしておきます。
象圓池と称する庭園が観農亭の周囲に配されています。
象圓池というからには池が中心になっていると言いたいところですが、実はこの池は川から直接水を引いて、観農亭の周囲と庭を巡って田に水を供給していますので、公的には池ではなく川であり農業用水路なのです。
従って川の生き物は入り放題で、もちろん庭の池ですから鯉もいますが、フナやハヤなどが普通におり、何年か前には絶滅危惧種のオヤニラミが棲みついていました。
御湯殿、つまりはお風呂場が池を挟んで別棟となっており、屋根付きの橋により観農亭と繋がっています。
風呂はいわゆる据え風呂で、その場で湯を沸かすのではなく、お湯を桶により汲んで運んできて風呂桶を満たして入浴していました。冬場などあっという間に冷めてしまいそうで、そもそも湯冷めしないのかと思うのは私だけでしょうか。
平田玉蘊の虎の襖絵で、観農亭の襖絵の中で唯一署名のある襖絵です。
ちなみにテレビの「なんでも鑑定団」の安芸高田市の出張大会において、安河内先生に鑑定いただき、「状態は良くないけれども本物」とのお墨付きをいただいています。
ちなみついでにいえば収録時には大変に盛り上がり、収録順では中頃だったのに、放送時にはトリを務めさせていただきました。
三畳のお茶室がありますので、お茶会やお茶席などに利用いただけますし、床の間が都合五か所あり、生け花の発表会や絵画の発表会や展示会なども考えられます。
いささか古いですが、広さから言えばミニコンサートなども開催でき、もちろん宴会しようが、何もにもせずぼぉ~としていようが、公序良俗に反しない限りは何にご使用いただいても結構です。貧弱な想像力しかない私が仰け反るようなご利用法の申し込みを期待しています。
もちろんご見学だけの申し込みも受け付けさせていただきますので、次項をご確認の上お申し込みください。
・便所は三か所ありますが、いずれも現在は使用できません。母屋右手の外トイレ(男女別)をご利用下さい。
・飛び石等足元が不安定な場所がありますので、足元にご注意ください。また何分古くて欄干、手すりは一切信頼で
きませんので、寄りかかったり腰を降ろしたりしないで下さい。敷地内での事故などには責任は負いかねます。
また盗難等のトラブルにも責任は負いかねます。
・文化財ですので大切に使ってください。破損された場合には損害を賠償いただく場合があります。
・母屋では人が暮らしています。みだりに立ち入らないようにしてください。
・什器類、机、座布団、OA機器等の備え付けは一切ありません。必要な機材類は基本持ち込みになります。
・雨戸の開閉と、ご利用後の建物内の掃除をお願いいたします。また原則使用前の清掃は行いませんのでご利用時に
必要により行って下さい。なお掃除道具はご用意いたします。
木金土日曜日の午前9時より午後5時まで(年末年始・盆の期間は休み、また急遽休むこともあります)
ご利用料
1日(午前9時~午後5時)利用 30,000円
午前(午前9時~午後1時)、午後(午後1時~午後5時)のいづれか半日利用 15,000円
1時間利用(午前9時~午後5時間の任意の時間、ただし二時間以内とします。 3000円/1時間
また半日利用との組み合わせも可能です。)
見学案内 二人まで1000円、以降一人増すごとに500円いただきます。
(なお半日利用、1日利用の方には無料で、1時間利用の方には200円/人で希望によりご案内いたします)
特に事前の掃除を希望される場合は3000円にて申し受けます。
申し込み方法
一週間前まで、六か月以内で受け付けます。ご希望日とご利用時間、お名前、ご利用か見学かを以下のメールアドレスに
メールしてください。受付可能であればその旨返信し、その際添付の申込用紙により正式にお申込みいただきます。
また下見をご希望される場合や、ご質問等あればその旨メールしていただけば対応いたします。
yamaoku0913@ajisai.ne.jp
平成三十年の七月の西日本豪雨において北側を流れる三篠川の堤防が決壊し、観農亭も母屋も床下浸水し、その痕跡は今も随所に残っています。この時はまだ警報が解除されていにもかかわらず、ご近所の方が自主的に集まって、数日にわたって清掃や後片付けなどにあたっていただきました。
改めて地域の方々に支えられていた建物と思い知らされた次第で、感謝の思いとともに紹介する次第です。