Research

振動誘起流れを用いたマイクロミキサの開発

一般的なバイオチップやマイクロ流体デバイスでは,流れを駆動するために通常外付けポンプやチューブを用います.チップのサイズが数cm角と非常に小さいのに対し,ポンプやチューブは数十cmのサイズであり,全体のシステムは大きくなってしまいます.金子が所属している研究室の同学科の早川健先生は,ミクロな振動を使ってマイクロピラーと呼ばれる構造物周りに流れを誘起させ,その流れを制御する技術開発を行っています(この技術を振動誘起流れと呼んでいます).我々は,早川先生と共同研究を行い,この技術をマイクロ混合(ミキシング)に応用する技術開発を行っています.また,この流れを数値シミュレーションで再現する研究を東京大学の長谷川洋介先生と共同で行っています(K. Kaneko et al., Micromachines, 2018).これらを応用し,血液や唾液等の体液に含まれるウィルスやナノ粒子を効率的に回収したり,検出したりする技術につなげることを目指します.

振動誘起流れ[1]の概念図

[1] Hayakawa, T. et al., “A Single Cell Extraction Chip Using Vibration-Induced Whirling Flow and a Thermo-Responsive Gel Pattern”, Micromachines, 5, 681-696, 2014

振動誘起流れを用いた高効率ナノ粒子検出デバイスの開発

ナノ粒子検出のコンセプト図.検出プロセスでは,標的ナノ粒子およびナノ粒子に特異的に吸着するマイクロビーズを含む液体を攪拌しますが,この時に生じるマイクロビーズの凝集サイズからナノ粒子を検出できます.

ナノ粒子検出実験の顕微鏡画像サンプル中に標的のナノ粒子が含まれる場合,マイクロビーズの凝集体が発生する.

振動誘起流れを用いて,ナノ粒子回収および検出を行う研究です.振動誘起流れを用いた混合を行った場合,従来方法である転倒混和やボルテックスでの混合と比較して高感度にナノ粒子を検出することができます.ウイルスや細胞外小胞(エクソソーム)など,疾病診断マーカーとして利用される生体活性ナノ粒子を回収および検出して,効率的な診断デバイスを目指します.


  • 関連業績

Kanji Kaneko, Mamiko Tsugane, Taku Sato, Takeshi Hayakawa, Yosuke Hasegawa and Hiroaki Suzuki et al., Detection of nanoparticles in a minute sample using the vibration induced flow, IEEE-NEMS 2022, No.125, Virtual, pp. 151-156, 2022/4. ※Oral presentation,CM HO Best Paper Award in Micro/Nano Fluidics !
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鈴木宏明,金子完治,早川健,ナノ粒子検出方法,特願2022-144134,出願, 2022/9.

振動誘起流れの3次元流れ場解析に向けた数値シミュレーションおよび実験計測

振動誘起流れの3次元的数値シミュレーションおよびPIV測定

実験でのPIV測定と数値シミュレーション結果の比較.(一方向振動を与えた場合マイクロピラー周囲に誘起される平均流れ場)

振動誘起流れについて,マイクロピラー周りの3次元的な流れを再現する数値シミュレーションを構築しました.また,共焦点マイクロPIVを用いた実験計測も行い,数値シミュレーションの妥当性を検証しました.現在は,複雑形状ピラーや複数の流れパターンでの数値シミュレーションと実験計測も行っています.


  • 関連業績
    Kanji KANEKO, Zhitai HUANG, Taku SATO, Naoto UJIKAWA, Takeshi HAYAKAWA, Yosuke HASEGAWA, and Hiroaki SUZUKI , "Investigation of the vibration-induced local flow around a micro-pillar under various vibrations", Mechanical Engineering Journal (MEJ), (Accepted), 2022.
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    Kanji Kaneko, Takayuki Osawa, Yukinori Kametani, Takeshi Hayakawa, Yosuke Hasegawa, Hiroaki Suzuki, “Numerical and Experimental Analyses of Three- Dimensional Unsteady Flow around a Micro-Pillar Subjected to Rotational Vibration”, Micromachines, 9(12) 668-685, 2018.
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数値シミュレーションを用いた振動誘起流れの混合性能評価

(a-c, e-f) 円柱および複雑形状ピラーを用いた場合の混合の様子、(d, h) ピラー周囲に誘起される流線

Acoustofluidics 2021国際学会での発表動画(3分)

効率的な混合を実現する手段として,カオス理論が知られています.振動誘起流れを用いてカオス混合を実現するために,ピラー形状を非対称のものにしたり,複数の振動モードを組み合わせることを検討しています.この流れ場を数値シミュレーションにより再現し,混合性能の評価を行っています.


  • 関連業績

K. Kaneko, N. Ujikawa, Y. Hasegawa, T. Hayakawa, H. Suzuki, “A Numerical Simulation of Pumpless-Chaotic Micromixer Utilizing the Vibration-Induced Flow,” Proc. Acoustofluidics 2021, online (2021.8).

空圧駆動式マイクロピラーデバイスの開発

空圧駆動式ピラーデバイスのコンセプト図

振動誘起流れではこれまで,基板上に固定されたピラーの形状や配置を変更することで,ピラー周囲に生成される流れ場パターンの制御が行われてきました.本研究では,基板上に形成したエラストマー薄膜を空圧により上下させ,その突起構造周りに振動誘起流れを生成するマイクロデバイスを開発しました.突起構造の空圧制御により,流れ場の時空間制御が可能となります.


  • 関連業績

佐藤拓,金子完治,早川健,鈴木宏明,「空圧駆動式マイクロピラーによる振動誘起流れの生起制御」,化学とマイクロ・ナノシステム学会第44回研究会,オンライン,2021年11月.