最近の研究のいくつかをご紹介します。産学連携も大歓迎ですので、気軽にお問い合わせください。
近く(near field)にだけ音を届けられるスピーカアレイ
ここで言う「近く」とは、いわゆるnear fieldを意味し、「音の波長の6分の1より十分近く」が目安です。
音声通話の周波数帯300~3400Hzを想定すると、0.02~0.17mより十分近い距離が目安となります。
ヘッドレスト・スピーカやウェアラブル・スピーカに応用すれば、ユーザにだけ音が届き、周囲の人々には音が漏れません。
少数のスピーカから構成される小型のアレイで、音を閉じ込められます。
一般化放射モードという理論に基づく技術ですが、詳しくは文献(https://doi.org/10.1016/j.apacoust.2022.109135)をご覧ください。
近く(near and far fields)にだけ音を届けられるスピーカアレイ
ここで言う「近く」とは、near fieldかfar fieldかの制約はなく、「所望の距離以内」です。
つまり、どこまで音を届けるか、設計者が自由に指定できます。
上記の技術に比べると、スピーカは多く、アレイは長くなりますが、波長の6分の1という制約を受けないため、ユーザから離れたところにスピーカアレイを置け、デジタルサイネージやテレビに応用できる可能性があります。
接線法という理論に基づく技術ですが、詳しくは文献(https://doi.org/10.1121/10.0020812)をご覧ください。
近く(near field)の音だけ聞き取れるマイクアレイ
near fieldの音源から出された音のみ計測し、far fieldの音源から出された音を計測しません。
話者の口は通話機器の近くにあり、騒音源は通話機器の遠くにありますから、この技術を応用すれば、音声を計測しつつ騒音を除去できます。
少数のマイクから構成される小型のアレイで、音声を強調できます。
一般化放射モードという理論に基づく技術ですが、詳しくは文献(https://doi.org/10.1121/10.0005940)をご覧ください。
騒音低減のための振動制御
振動モードの直交性は、騒音に対しては成り立たず、モード同士は、連成して騒音に寄与します。
モードごとの騒音への寄与を見積もるのは一筋縄にはいきませんが、それを便宜的に計算し、寄与の大きいモードを特定して、そのモードに優先的に対処することで、効果的に騒音を減らせます。
モード同士の連成は、現象の見通しを悪くするという意味では嫌なものですが、逆手にとれば、ひとつのモードに対策するだけで、他のモードに由来する騒音まで芋づる式に減らせます。
モード音響透過率という理論に基づく技術ですが、詳しくは文献(https://doi.org/10.1016/j.apacoust.2021.107965)をご覧ください。
驚かせない警報音
自動車の警報システムでは、従来の警報音に加え、画像(HUD等)も使われるようになってきています。
聴覚や視覚の刺激には、ドライバの抱く切迫感を高め、危険回避の反応を速める効果があります。
しかし、音と画像を闇雲に組み合わせると、切迫感を高めすぎ、ドライバを驚かせてしまい、反応を速める効果が損なわれます。
よって、両者を組み合わせる際には、警報音と画像の刺激の強さを控え目に調整すること(警報音であれば、音量や周波数の調整)が大切です。
詳しくは文献(https://doi.org/10.1007/s13177-018-0174-6)をご覧ください。