建築設備は、私たちが建物に期待することを実現するために働いてくれています。
建物の目的に対して、建築設備はどのようなアプローチで立ち向かっているのでしょうか?
それを、フレームに基づいて考えてみます。
ちなみにフレームとは、中学校の成績でいえば「国社数理英」、プロジェクトマネジメントでは「PDCA」、一日の時間帯でいえば「朝昼夜」、といったように対象としている分野をざっくりを包括的に分けてみる考え方です。
建築設備は、建物が私たちの期待をかなえるために存在します。
もう少し具体的に言うと、私たちの感覚器官に働きかけ、私たちの目的を達成できるような空間とすることが建築設備の役割なのです。
そのため、建築設備は私たちの感覚に直結した機能を持っています。
まずは、私たちの感覚のフレームを見てみましょう。
ちなみに圧覚は、風などによる圧力を感じる感覚のことです。
また、ジメジメムシムシの湿気は、汗を蒸発させにくくするので温冷感覚に含んで考えています。
では次に、感覚のフレームに基づいて、環境工学的なフレームで見てみるとこのようになります。
環境工学の授業でならった光環境や音環境、温熱環境などの単元は、実は人の感覚器官のフレームに基づいていたものなんですね。
それでは最後に、建築設備的なフレームで見てみます。
人の感覚器官にアプローチする建築設備は、人の感覚器官のフレームで分かれているのですね。
空調設備は温熱環境や気流環境をコントロールすることで、人の温熱感覚にアプローチしています。
照明機器は部屋全体の明るさ(照度)や照明器具のまぶしさ(輝度)、暖かい感じやクールな感じ(色温度)をコントロールすることで、人の視覚にアプローチしているのです。
フレームに基づいて建物の設計案を考えたり、課題の解決方法を考えたりすることは、もれなくそしてダブりなく網羅的に考えることができるのでとても有益です。
ちなみに、「もれなくダブりなく」という考え方は、ロジカルシンキングの代表的な手法でMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaoustive)と呼ばれています。
それでは、フレームを使ってMECEに考えた事例を一つ紹介します。
以下は建物の設計を検討するときの課題抽出+解決案検討のときのメモです。具体的には、銭湯と水族館を併設したいがその時の課題を教えてほしいといわれた時の私の回答です。
銭湯はもちろん暖かいけど、水族館は…冷たい?暖かい? なんだか魚臭そうだけど大丈夫? そういえば銭湯って声響くけど、それは魚には影響しない?…というように思いつくがままに課題を挙げていってもいずれゴールにたどり着くかもしれませんが、漏れがあるかもしれませんし効率的ではなさそうです。
それならば、はじめから漏れのないフレームで考えてみるのはどうでしょうか。
熱、空気質、光、音…とフレーム毎に特徴をリストアップして、銭湯と水族館が併設することの課題と解決策を考えていくのです。
フレームを使って考えていくのと、手戻りが少なくて効率的に設計を進められそうです。
次のページでは、建物の用途ごとに目的を考え、着目するフレームを決め、解決方法を提案していきます。