「建築設備」と言われても、いまいちイメージしにくいかと思います。
多くの場合、建築設備は目立たないように、控えめに、静かに、気づかれないように、建物の目的の達成に向けて私たちをサポートしてくれています。
トイレやお風呂のように人が直接触れる建築設備もありますが、多くの場合は光や音、温度や湿度、風や空気質といった建築設備が作り出す環境要素に人は触れています。
ある建築会社の社長さんは、「建物をひっくり返して落ちてこない構造材以外のものが建築設備」と言っていました。
面白くイメージしやすい表現ですね。
ずっと昔、建築設備は生きることに直結するものでした。
私たち人間は、犬より走るのが遅く、猫より高く飛べず、クマのようにたくましくもなく、フクロウのように夜目も効きません。私たちは、夜、危険な生き物に遭遇したら、勝ち目が無いのです。そんな中、発達してきたのが、闇夜で役に立たない私たちの視覚を補ってくれる照明です。
照明設備は、松明、ロウソク、ランタン、ガス灯、白熱電球、LEDへと進化してきました。
私たち人間は、犬のような暖かな毛皮は無く、鳥のような保温性の高い羽毛もなく、象のようにうちわとなる大きな耳もなく、ウサギのように熱を逃がす長い耳もありません。私たちは、暑さ寒さに対して、汗をかいたり震えたり、手足へ送る血の量を調節したりする程度のとても限られた抵抗しかできないのです。そんな中、まず発達してきたのが寒さを和らげてくれる暖房でした。そして、だいぶ遅れて暑さを和らげてくれる冷房も発達してきました。
空調設備は、焚火、囲炉裏、石油ストーブ、床暖房、エアコンへと進化してきました。
もちろん照明や空調以外にも、換気や音響などがさまざまなバックグラウンド・ストーリーのもと開発され進化してきました。
続くページでは、建物の目的の達成において建築設備が大きな役割を担っていることを見ていきます
また、建築設備をうまく使うためのフレームを見ていきます。