ちょうすけのごはんどき
スーパーで売られている精肉は血や骨が取り除かれているため、猛禽類を長期間保護したりする際のエサとしては不向きです。
応援団では、動物園や花鳥園、獣医師等からの聞き取りの結果、猟友会から分けていただくシカ肉やイノシシ肉をごはんにしています。
カルシウム補給には、獣医師の方に相談したところ小鳥用のカトルボーンがよいとのことでした。カトルボーンを削った粉を毎食一定量与えているため、過剰摂食による胃炎を防ぎ、適切な栄養補給に寄与しています。
とはいえ、本当にイノシシやシカ肉で栄養は足りているのだろうか?
栄養分布を調べてみることにしました。
ジビエ肉とマウス等の栄養分析
ジビエ肉(イノシシ肉・シカ肉)と鶏むね肉・鶏レバー・豚レバーの栄養分布は「カロリーSlim」サイトを参考にさせていただきました。マウス・ラット・ウズラの栄養分布は「Raptor Nutrition(Forbes and flint(2000))」より抜粋しました。
分布を比較すると、イノシシ肉がこれらの肉の中で一番カロリーが高く、換羽期に必要な栄養素であるビオチンが鶏むね肉の約2倍多く含まれています。またカルシウム吸収率を上げるビタミンDも多く含まれていることがわかります。
シカ肉は脂質がどの肉に比べても少なく、タンパク質は豚レバーの次に高くなっています。シカ肉に含まれるナトリウムが鶏レバー並みに高いですが、カリウムの含有率から考えるとそこまで懸念する必要はなさそうです。リンの含有量は鶏レバーより低いということがわかります。
ひよこやウズラをみると、タンパク質の表記がないので比較できませんが、カロリーで比較する1日齢ひよこが高くなっています。1日齢のひよこのビタミンEが突出していますが、卵黄を含んでいると推測されます。
カルシウムやマグネシウム、微量元素はイノシシやシカ肉と比べて圧倒的に少ないですが、マンガンはイノシシやシカ肉と比べて多く含まれています。
ところで、チョウゲンボウのろう膜や脚の黄色はビタミンA由来とされています。これは、主食とするハタネズミが主に植物を主食とし、植物に含まれるカロテンがハタネズミに多く含まれているのではないかと考えられます。
つまり、より多くのハタネズミを狩ることができる個体はろう膜や脚の色が鮮やかな黄色になるので、メスからモテるといわれています。ちなみに、ビタミンAは脂溶性で体内に蓄積されやすいといわれています。
分布図から分かったことは、イノシシやシカ肉でもチョウゲンボウのごはんとして成立しうること、サプリメントやカトルボーンなどの栄養補助剤を組み合わせることで栄養バランスの取れたごはんになるんですね。
では、どれくらいの量をあげたらいいのでしょうか。
古いデータですが、「飼育猛禽類のケアと管理(ミネソタ大学猛禽センター ロリィ・アント&マークマーテル,1996)」によれば、アメリカチョウゲンボウの平均的な1日の給餌量は1日齢のひよこで1羽(25g)とされています。
最近の論文では、野生の小型猛禽類は1日に体重の20~25%の餌量を摂取するとのことです。(Joeke Nijboer,2020,https://www.msdvetmanual.com/management-and-nutrition/nutrition-exotic-and-zoo-animals/nutrition-in-raptors)
飼育下と野生下では活動量が大幅に異なるため比較は難しいですが、一つの目安になると思います。
ちなみにちょうすけは平均体重が185g程度のため、36~46gの餌を食べることができますが、常に飛んでいるわけではないため大体30~40gのごはんをあげています。
ごはんの研究はこれからも続けていきたいと思います。
保護当初のちょうすけのろう膜は黄色い
2023年に撮影したちょうすけ。すこしクリーム色かかっている。