ネットワークが創発する知能研究会設立提案書
(Network Dymanics and Emerging Intelligence)
2004.9.27
NTT未来ねっと研究所 栗原 聡 (現在は大阪大学)~
- 主旨
スケールフリーネットワークやスモールワールドなど、ネットワーク構造がそれを構成する要素間の協調に大きく影響していることが分かってきた。本研究会では、ネットワークダイナミクスに着目し、その特徴や構造発生のしくみを解き明かすとともに、スモールワールドなど様々なネットワークの特徴を積極的に工学的に利用するための方法論を確立することを目指す。
- 概要
(背景)
近年、自然界に存在するネットワークから人工的に組織されたネットワークに至る様々なネットワークがスケールフリー構造を有していることが分かってきた。これは、ネットワークの構造がスケールフリーであることが何らかの意味でそのネットワークにとって好ましいということを意味している。例えば、マルチエージェント協調問題において、各エージェントの構造が同じであっても、エージェント間にて構成するネットワーク構造がスケールフリーであることによって、階層構造では発現しないような知的協調効果が創発されるとすれば、まさに「ネットワークが知能を創発させている」と言える。
一方、集合知や群知能、Swarm-madeアーキテクチャのように、多数の低機能自律主体の行動から創発する全体的知能に関する研究も盛んであり、これらの研究分野においても、各要素が形成するネットワーク構造は重要な意味がある。
興味深いのは、スケールフリーなどのネットワーク構造に着目しているのが、コンピュータネットワークや社会学などに携わる研究者だけでなく、物理、化学、生物、薬学など様々な分野の研究者であることである。例えば、コンピュータネットワークでの解析手法が、化学反応ネットワーク解析に利用できる可能性などが考えられ、また、異分野間に共通する根本的な原理が発見される可能性も考えられる。
本研究会は、このような「ネットワークダイナミクス、ネットワークが創発する知能」をキーワードとして、日本ソフトウェア科学会が中心となり、コンピュータサイエンス、物理、化学、生物、経済、社会学など様々な分野の研究者の交流の場を提供、当分野の世界における高いアクティビティを発揮するとともに、国内研究者の裾野を広げることを目指す。
~(キーワード)
・スケールフリーネットワーク
・スモールワールド
・集合知
・集合学習
・ネットワーク系マルチエージェント
・自己組織化および創発モデル
・Swarm-madeアーキテクチャ
・Webダイナミクス
・社会知能
・複雑系
- 活動
・年2回のワークショップの開催。
(査読を行い、完成度の高い論文発表を主体とするワークショップと、
新規パラダイムの提案や、未完成であるものの興味深い結果の報告など、
議論を主体とするワークショップ)
- 平成16年度活動予定
・2005年3月に第一回ワークショップを開催予定
- 委員構成
主査 中島 秀之 公立はこだて未来大学
幹事 栗原 聡 NTT未来ねっと研究所(現在は大阪大学)
村田 剛 国立情報学研究所(現在は東京工業大学)
プログラム委員は発起人を中心として以降拡充
発起人(あいうえお順):
石田 亨 京都大学
風間 一洋 NTT未来ねっと研究所
栗原 聡 大阪大学
佐藤 健 国立情報学研究所
菅原 俊治 NTTコミュニケーション科学基礎研究所
竹内 郁雄 電気通信大学
内藤 祐介 人工生命研究所
中島 秀之 公立はこだて未来大学
生天目 章 防衛大学校
廣津 登志夫 豊橋科学技術大学
村田 剛志 国立情報学研究所
山田 誠二 国立情報学研究所