日本睡眠環境学会は,1985年工業技術院による「ふとんの規格体型調査委員会」の議論が出発点となっています。この議論の中で「ふとんの完成品の性能評価方法の開発」を目指し,全日本わた寝装品製造協同組合(旧全日綿)の協賛・協力を得て睡眠環境研究会が発足しました。当時, 寝具は睡眠の補助手段でありながら,寝具と睡眠を関連付けた研究がほとんど行われていないことから,睡眠環境の工学系の領域や睡眠の質的解明への取り組みを目的として,8回の睡眠環境シンポジウムを重ね,1992年9月鳥居鎮夫先生を会長に迎え,世界に先駆けて日本睡眠環境学会が発足しました。
この様な歴史を経て,法人学会として更なる研究活動や業界活動の推進を図り,学会事業の革新を目指し,2020年4月1日に一般社団法人となり,2021年9月にWebを用いた会員総会と法人設立記念講演会を開催し,多くの方々にご参加いただきました。会員,並びに,関係各位に心から感謝申し上げます。
今大会は,「次は何? 睡眠環境科学と近隣領域と -未来へ繋ぐ- 」をテーマに,新たな睡眠環境科学を追求するためには,建築,工学,医療(看護・福祉),生理・心理,AIシステム科学等々,近年,急速な進歩を示す近接領域にヒントが隠されいる様で,より多面的観点から学術的基礎研究と実践活動を繋ぐための新たなに 模索してはとの思いと,「次は何?」は,登山家故長谷川恒男氏*の「『果敢に挑む』目標を達成した時に,次のより高度な目標を目指す知識と技術を」との遺志を受け継いだ人たちの思いと聞いたことがあり,法人学会へとの移行期で,「?」は,法人としてまだ1歳,歩み始めた不安と挑戦的思いです。
今大会の1つのセクションとしては,コロナ禍や様々な災害による生活様式の変化が心身に与える影響と睡眠問題について, 他に,コロナ禍における生活様式の変化や在宅時間の増加により、消費者のニーズや意識が変わる中,本学会の「寝具等評価・試験方法検討委員会」が進めている寝室環境の計測機器や測定法の統一化,あるいは,寝室環境と睡眠様相の地域性や1年間の縦断的研究などのプロジェクト研究の取り組みを,さらに,パネル・ディスカッションでは,前述した睡眠環境学を近接領域から捉えた情報を提供し議論の場になればと考えております。また,教育講演は,「睡眠教育委員会」の企画により睡眠環境・寝具指導士®(SBI)の方々の知識・技術向上を視野に開催いたします。
今大会の一部は,日本寝具寝装品協会(JBA),日本ふとん協会(JFA)の共同開催とし,SBIの資格更新ポイントセミナーを兼ねております。Web開催のメリットを生かし,多くの学会員やSBIの方々が,全国各地のご自宅や職場から参加していただけることを期待しております。
2021年10月