特別講演1
「届けたい教育をチームで叶える~学校作業療法の実践と可能性~」
仲間 知穂 氏
(YUIMAWARU株式会社 代表取締役 、こどもセンターゆいまわる 代表)
特別講演2
「人権モデルで考える学校連携のあり方」
社会福祉士 小谷 綾子 氏
(西宮市立こども未来センター 相談員、京都市教育委員会 スクールソーシャルワーカー、
NPO法人SchoolVoiceProject 理事)
共催セミナー
未定
一般演題
2026年 10月 13日(火)~ 2026年 11 月 25日(水)正午
特別講演1
「届けたい教育をチームで叶える~学校作業療法の実践と可能性~」
仲間 知穂 氏
(YUIMAWARU株式会社 代表取締役 、こどもセンターゆいまわる 代表)
学校現場では、子ども一人ひとりに向き合いたいという願いを抱きながらも、日々生じる様々な課題への対応に追われ、本来届けたかった教育について立ち止まって語り合う時間を持つことが難しくなっています。そのため、多職種連携においても、「目の前の問題をどう解決するか」が中心となり、教師や保護者、本人、専門職が本当に目指したい未来が共有されないまま支援が進むことも少なくありません。
しかし、私たちは「問題」が存在するからこそ、その背景には必ず「この子にこんな姿に育ってほしい」「こんな教育を届けたい」という願いがあると考えています。学校作業療法では、その願いを「届けたい教育」として言語化し、教師・保護者・本人、そして多職種が共有することから支援を始めます。
私たちが目指しているのは、子どもの問題を解決することではありません。届けたい教育をどのようにデザインしていくかをチームで考えることです。そのプロセスを、私たちは作業ストーリーメイキングと呼んでいます。
「できる・できない」という結果だけを追い求めると、子どもの能力とその子自身の価値が結び付けられやすくなります。一方で、届けたい教育をデザインする視点では、「今は難しいことを、チームでどのように実現していくか」という未来に目が向きます。その過程で、教師は自らが届けたかった教育を再確認し、保護者はその思いに共感し、本人もまた、自分が応援されている意味を知りながら歩み始めます。届けたい教育は、実現することだけに価値があるのではありません。それをチームで語り合い、試行錯誤しながら共にデザインしていくプロセスそのものが、人と人との関係を育み、その教育に関わるすべての人の健康につながると考えています。
私はこれまで300名を超える子どもたちへの学校支援に携わる中で、この考え方は教育だけでなく、医療・心理・福祉を含めた多職種連携においても有効であることを実感してきました。本講演では、学校作業療法の実践を通して、「届けたい教育」を軸としたチームづくりの考え方を紹介し、問題解決型の連携から、未来を共にデザインする連携への可能性について考えます。
学校作業療法とは、「届けたい教育」という作業をチームでデザインし、そのプロセスを通して、その教育に関わるすべての人の健康を育む実践です。
特別講演2
「人権モデルで考える学校連携のあり方」
社会福祉士 小谷 綾子 氏
(西宮市立こども未来センター 相談員、京都市教育委員会 スクールソーシャルワーカー、
NPO法人SchoolVoiceProject 理事)
2030年度から実施予定の次期学習指導要領では、
①主体的・対話的・深い学びの実装(Exellence)
②多様性の包摂(Equity)
③実現可能性の確保(Feasibility)
の3つの大きな理念のもと、「学校」という場で、民主的で持続可能な社会の創り手を「みんな」で育むことをめざした、学校のあり方が検討されています。
学習指導要領は、通常の学級を基本とし、通常の教育課程を取ることが難しいとされている子どもたちには、特別な教育課程が認められるようになっています。
特別な教育課程を取る子どもたち=特別支援学級の設置数は、毎年右肩上がりで、特にこの5年間の統計では(2020年~2025年)、9万学級から11万8千学級へ増加しています。また、同時期の学校そのものに行かない選択/不登校になる子どもたちも、19万6千人から35万人近くまで増加しています。
この先、通常の教育課程に在籍しない子どもたちが増加の一途をたどるとしたらどうなっていくのでしょうか。
その疑問を解消できる考え方が「人権モデル」という考え方です。
医療現場では、ある人に困りごとが起こるのは、個人の機能や特徴(impairment)に原因があるという「医学/個人モデル」の考え方になじみがあると思います。治療等を含めた個人の努力でimpairmentに由来する困りごとを解消し、社会参加を促していきます。一方で、社会参加が妨げられることの原因を、個人に目を向けるだけではなく、そのことが問題になってしまう環境そのものに目を向け、見直すことでimpairmentが社会参加の障壁にならなくなる、という考え方を「社会モデル」と言います。そして、社会の中でその人らしく生活していくことを「人権モデル」と言い、社会モデルは、この人権モデルを支えるシステムの一つです。
教育は、医学/個人モデルを否定できません。個人の成長を促す取り組みは、まさに医学/個人モデル的な発想です。その中で、様々な子どもたちの社会参加のために、医療が学校と連携を始めようとしていることは、多くの学校現場へのエンパワメントになっている一方で、医学/個人モデルのみが協調されてしまう場面が多くみられます。
学校と医療が連携を始めた今、様々な子どもたちが、民主的で持続可能な社会の創り手を育む「みんな」になっていくための、人権モデルでの学校連携について触れていただければと思います。