プログラム・要旨集

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大会日程                          

11月20日(土)

9:00-9:50 学会賞受賞者講演(ACOP-IVとの共同セッション)

11月21日(日)

14:00-14:10 開会

14:10-15:10 BPAセッション1

15:10-15:25 休憩

15:25-16:25 BPAセッション2

16:25-16:40 休憩

16:40-17:55 BPAセッション3

11月22日(月)

9:00-9:30 口頭発表

9:30-11:30 ポスターセッション

11:30-13:00 昼食

13:00-14:50 総会・授賞式

14:50-15:00 集合写真撮影

15:00-16:00 特別講演1

16:00-16:15 休憩

16:15-16:45 特別講演2

16:45-16:55 閉会


プログラム                         

11月20日(土)

学会賞受賞者講演(9:00-9:50)ACOP-IV Plenary lecture 2

Studies of symbiotic association between green paramecia and their symbiotic algae using feedless culture strain of Paramecium bursaria

Hiroshi Hosoya(細谷 浩史)

Department of Biological Science, Faculty of Science, Kanagawa University, Japan

(神奈川大学 理学部 生物科学科)

座長:洲崎 敏伸(神戸大学 理学研究科)

11月21日(日)

BPAセッション1(14:10-15:10)

座長:西上 幸範(北海道大学 電子科学研究所)

BPA-01

繊毛虫Tetrahymenaにおける螺旋遊泳行動の三次元観察

○丸茂 哲聖, 山岸 雅彦, 矢島 潤一郎

東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

BPA-02

ゾウリムシのラジアルスポークによる繊毛打制御機構の解明

○亀田 奈那, 堀 学

山口大学大学院 創成科学研究科

BPA-03

Colpoda cucullus休眠シストの塩耐性:シストは海を渡るだろうか?

○十亀 陽一郎1, 齊藤 瞭汰1,2, 小泉 亮太1, 鈴木 智大3, 酒井 達弥1, 山野邊 裕樹1, 清水 大雅1, 小野 晶子3, 田中 利彦1, 青山 哲也4, ワーナー マンフレッド5, 渡辺 幸三6

1福島工業高等専門学校, 2現所属:高知大学 理工学部, 3宇都宮大学 バイオサイエンス教育センター, 4理化学研究所 光量子工学研究センター, 5ブランデンブルク工科大学, 6愛媛大学 沿岸環境科学研究センター

BPA-04

Spirostomum ambiguumにおける微小管のすべり運動

○中村 公祐, 大道 真歩, 端山 拓希, 園部 誠司

兵庫県立大学 理学部生命科学科

休憩(15:10-15:25)

BPAセッション2(15:25-16:25)

座長:柴田 あいか(立命館大学 生命科学部 生物工学科)

BPA-05

Paramecium bursariaの増殖とバクテリア

○大港 悠可, 近藤 夏子, 平野 雄生, 松島 佑里, 日野 晶也, 細谷 浩史

神奈川大学 理学部 生物科学科

BPA-06

ミドリゾウリムシ共生藻から検出されたバクテリア

○平野 雄生, 大港 悠可, 松島 佑里, 日野 晶也、細谷 浩史

神奈川大学 理学部

BPA-07

繊毛虫ブレファリズマにおける相補的な接合型細胞が分泌するガモンがジャイアント形成に及ぼす影響

〇前多 毬花¹, 杉浦 真由美²

¹奈良女子大学大学院 化学生物環境学専攻, ²奈良女子大学 研究院 自然科学系

BPA-08

海産貝類に寄生するPerkinsus olseniの感染体形成時の脂質要求性から考えられる伝播機構

〇前田 和輝, 良永 知義, 伊藤 直樹

東京大学大学院 農学生命科学研究科

休憩(16:25-16:40)

BPAセッション3(16:40-17:55)

座長:矢吹 彬憲(海洋研究開発機構)

BPA-09

キクラゲ属子実体より分離されたカボステリウム目の未記載種

○岩本 祥明1, 中山 剛2

1筑波大学大学院 生命地球科学研究群, 2筑波大学 生命環境系

BPA-10

変形菌に寄生する祖先的菌類の新しい宿主の報告

○三浦 翔太1, 矢島 由佳2

1室蘭工業大学大学院 環境創生工学系専攻, 室蘭工業大学大学院 工学研究科

BPA-11

共生クロレラを持つ新規アメーバ (Amoeba) の観察と分類

○早川 昌志1,2, 早川 朝陽2, 早川 卓志3

1大阪大学大学院 人間科学研究科, 2ミクロ・ライフ Project, 3北海道大学大学院 地球環境科学研究院

BPA-12

3種マイクロコズムの長期培養における藻類と細菌の共生の進化

〇中田 章太1, 安部 雄一1, 西山 竜太郎2, 藤井 大将2, 中島 敏幸1

1愛媛大学大学院 理工学研究科, 2愛媛大学 理学部 生物学科

BPA-13

3種マイクロコズムにおける藻類と繊毛虫の細胞内共生進化:共生系外部に依存する必須資源の減少

○米田 侑生1, 松田 達也2, 佐古 壮一朗1, 中島 敏幸2

1愛媛大学 理学部 生物学, 2愛媛大学大学院 理工学研究科

11月22日(月)

口頭発表(9:00-9:30)

座長:杉浦 真由美(奈良女子大学 研究院 自然科学系)

O-01

繊毛虫テトラヒメナの配偶核形成におけるSemi1の働き

○明松 隆彦1, Rosalía Sánchez-Fernández2, Felix Kosta2, Elisabeth Holzer2, Josef Loidl2

1日本大学 文理学部 生命科学科, 2ウィーン大学 マックスFペルーツ研究所

O-02

テトラヒメナの二価染色体形成における減数第一分裂前期特異的タンパク質 Mep1 の役割

○福田 康弘1, 明松 隆彦2, 岩本 政明2, 伴戸 寛徳1, 加藤 健太郎1

1東北大学大学院 農学研究科, 2日本大学 文理学部 生命科学科

ポスターセッション(9:30-11:30)

P-01

ナベカムリの移動と力特性

○松本 絃汰1, 西上 幸範1,2, 佐藤 勝彦1,2, 中垣 俊之1,2

1北海道大学大学院 生命科学院, 2北海道大学 電子科学研究所

P-02

繊毛虫ヨツヒメゾウリムシにおけるDNAアデニンメチル化酵素の同定

○川口 隆之1,2, デューアクー サンドラ2

1基礎生物学研究所 クロマチン制御研究部門, 2フランス国立科学研究センター ジャックモノー研究所

P-03

繊毛虫ブレファリズマにおける網羅的解析を用いたガモン2受容体候補の探索

○高木 佑美1, 杉浦 真由美2

1奈良女子大学大学院 人間文化総合科学研究科, 2奈良女子大学 研究院 自然科学系

P-04

細胞の前端部に局在する繊毛虫テトラヒメナのヌクレオポリンMicNup98A

山本 孝治1, 福田 紀子1, 近重 裕次1, 岩本 政明2, ○松田 厚志1

1情報通信研究機構 未来ICT研究所, 2日本大学 文理学部

P-05

繊毛虫Tetrahymenaにおける螺旋遊泳行動の三次元観察

○丸茂 哲聖, 山岸 雅彦, 矢島 潤一郎

東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

P-06

Colpoda cucullus休眠シストの塩耐性:シストは海を渡るだろうか?

○十亀 陽一郎1, 齊藤 瞭汰1,2, 小泉 亮太1, 鈴木 智大3, 酒井 達弥1, 山野邊 裕樹1, 清水 大雅1, 小野 晶子3, 田中 利彦1, 青山 哲也4, ワーナー マンフレッド5, 渡辺 幸三6

1福島工業高等専門学校, 2現所属:高知大学 理工学部, 3宇都宮大学 バイオサイエンス教育センター, 4理化学研究所 光量子工学研究センター, 5ブランデンブルク工科大学, 6愛媛大学 沿岸環境科学研究センター

P-07

海産貝類に寄生するPerkinsus olseniの感染体形成時の脂質要求性から考えられる伝播機構

〇前田 和輝, 良永 知義, 伊藤 直樹

東京大学大学院 農学生命科学研究科

P-08

共生クロレラを持つ新規アメーバ (Amoeba) の観察と分類

○早川 昌志1,2, 早川 朝陽2, 早川 卓志3

1大阪大学大学院 人間科学研究科, 2ミクロ・ライフ Project, 3北海道大学大学院 地球環境科学研究院

昼食(11:30-13:00)

総会・授賞式(13:00-14:50)

集合写真撮影(14:50-15:00)

特別講演1(15:00-16:00)

座長:有川 幹彦(高知大学 理工学部 生物科学科)

SL1-01

早川 昌志(大阪大学大学院 人間科学研究科)

共生クロレラの細胞内共生と関連したミドリゾウリムシの形態変化

SL1-02

島田 雄斗(高知大学大学院 総合人間自然科学研究科)

原生生物繊毛虫Colpoda cucullusにおけるシスト化誘導フェロモンの特性

SL1-03

越後谷 駿(北海道大学大学院 生命科学院)

繊毛虫ソライロラッパムシの内部周期と空間記憶

SL1-04

梁瀬 隆二(オックスフォードブルックス大学 バイオメディカルサイエンス部門)

リーシュマニアのハプトモナド形態における接着斑形成

休憩(16:00-16:15)

特別講演2(16:15-16:45)

座長:西上 幸範(北海道大学 電子科学研究所)

SL2 奨励賞受賞者講演

久冨 理(山梨大学大学院 総合研究部 解剖学講座細胞生物学教室)

原生生物の行動変化に関わる繊毛運動の制御機構の研究


講演要旨                          

学会賞受賞者講演(11月20日(土)9:00-9:50)ACOP-IV Plenary lecture 2

Studies of symbiotic association between green paramecia and their symbiotic algae using feedless culture strain of Paramecium bursaria

Hiroshi Hosoya

Department of Biological Science, Faculty of Science, Kanagawa University, Japan

The green paramecium, Paramecium bursaria, is a unicellular protist, which harbors hundreds of symbiotic algae in its body. It is widely known as a research target for eukaryotic cell-cell symbiosis. Many experiments have been conducted and their results have been also reported for the purpose of clarifying phototaxis, photosynthesis of symbiotic algae and cell proliferation, using Paramecium bursaria. However, in each researcher, various kinds of microorganisms including bacteria are used as food when culturing the ciliate. Further, lettuce infusion is used as a medium, but the composition of lettuce leaf is not always constant. Due to these multiple reasons, common culture conditions have not been established among Paramecium bursaria researchers. This gives a significant problem on the reproducibility of the results of various experiments using Paramecium bursaria. Therefore, in our laboratory, it has been investigated whether Paramecium bursaria collected from the field can be cultivated without feeding. As a result, a "feedless culture strain (KUNY-2)" was established. This strain was isolated from the field in 2015, cultivated with feeding until 2017, and then has been cultivated without feeding until now. Interestingly, it was revealed that bacteria were always present in the culture medium of KUNY-2, even under the condition that the prey bacteria were not fed. Therefore, the composition of bacteria in Paramecium bursaria was analyzed at each time point before and after start of culture without feeding. As a result, it has been clarified that a certain type of bacteria is always detected in the body of Paramecium bursaria. Symbiotic algae in Paramecium bursaria can be easily isolated from the host and cultured. In addition, by co-culturing this cloned symbiotic algae with the host, the endosymbiotic relationship can be simply re-established. Then, Liquid culture of isolated symbiotic algae was carried out, and bacteria in the symbiotic algae were also examined. As a result, it became clear that the types of bacteria detected in each of the host and the symbiotic algae are different. Here, we discuss the role of bacteria in establishment of symbiosis between Paramecium bursaria and symbiotic algae.


特別講演2(11月22日(月)16:15-16:45)

SL-2 奨励賞受賞者講演

原生生物の行動変化に関わる繊毛運動の制御機構の研究

久冨 理

山梨大学大学院 総合研究部 解剖学講座細胞生物学教室

Studies of the controlling mechanisms of ciliary movements involved in behavioral changes in protists.

Osamu Kutomi

Grad. Sch. of Med., Univ. Yamanashi

繊毛はほぼ全ての真核生物に存在し、原生生物の遊泳や体内の水流の制御に働く毛状の運動性オルガネラです。繊毛は外界の刺激に応じて、繊毛内のCa2+やcAMPなどのセカンドメッセンジャーの濃度が変化し、これによって繊毛打頻度、方向、波形などの運動パターンが変化します。このような生理学的知見はすでに知られているものの、これらの繊毛運動を制御する分子機構については多くの謎が残されています。

これまでに私は、ゾウリムシやクラミドモナスなどを用いて、繊毛運動の解析手法の開発をはじめ、生化学的手法による繊毛タンパク質の解析、遺伝学的手法による目的分子の機能解析など、様々な研究手法を駆使して、上記の課題に取り組んできました。本講演では、これまでに私が行なってきた「ゾウリムシ繊毛運動の制御機構」と、最近報告しました「光を感知する新規の繊毛タンパク質の構造・機能」の研究成果について紹介します。


特別講演1(11月22日(月)15:00-16:00)

SL1-01

共生クロレラの細胞内共生と関連したミドリゾウリムシの形態変化

早川 昌志1,2

1大阪大学大学院 人間科学研究科, 2神戸大学大学院 理学研究科

Morphological changes in Paramecium bursaria associated with algal endosymbiosis

Masashi M. Hayakawa1, 2

1Faculty of Human Sci. Osaka Univ., 2Faculty of Sci., Kobe Univ.

ミドリゾウリムシは、細胞内に数百個の共生クロレラを細胞内共生させている。本研究では、共生株と白化株における形態学的な比較観察を行った。第一に、定常期の共生株では、大型の核小体が消失する現象が観察された。この結果は、ミドリゾウリムシが共生藻に代謝を依存していることを示唆している。第二に、細胞表層のオルガネラ配置のダイナミックな変化が見られた。白化株では、細胞表層にほとんどミトコンドリアは見られないが、共生株では、共生クロレラの包膜や他のオルガネラとの結合を伴った、ミトコンドリアのネットワーク構造が見られた。一方で、トリコシストの密度が低下していた。この変化は、ミトコンドリアが、共生クロレラの表層への定着に強く寄与していることを示唆している。以上の結果から、ミドリゾウリムシにおいて、共生クロレラが機能的・構造的に安定したオルガネラとして振る舞っているということが言えるだろう。

SL1-02

原生生物繊毛虫Colpoda cucullusにおけるシスト化誘導フェロモンの特性

島田 雄斗

高知大学大学院 総合人間自然科学研究科

Characterization of a novel encystment-inducing pheromone in the ciliated protozoan Colpoda cucullus

Yuto Shimada

Grad. Sch. of Integr. Arts and Sci., Kochi Univ.

原生生物繊毛虫コルポーダ(Colpoda cucullus)は生息環境の悪化を感知すると様々な耐性をもつ休眠シストを形成する(シスト化)。シスト化は高密度の細胞懸濁液にCa2+を加えることで誘導される。最近、私は、シスト化を誘導されたコルポーダから、別個体のシスト化を誘導するフェロモン様物質が分泌されることを見出した。私はそれをシスト化誘導フェロモン(Encystment-inducing pheromone, EnIP)と名付け、その物質の特徴付けを行った。その結果、1)EnIPはシスト化誘導後数時間で分泌されること、2)EnIPの放出はエキソサイトーシス阻害剤により阻害されること、3)EnIPは濃度依存的に別個体に対するシスト化誘導効果を示すこと、4)EnIPの別個体に対するシスト化誘導効果は熱処理またはタンパク質分解酵素処理により失われること、そして5)EnIPの分子量は100 kDa以上であることを明らかにした。このことから、シスト化を誘導されたコルポーダの栄養細胞は、数時間のうちに、別個体のシスト化を誘導する100 kDa以上のタンパク質であるフェロモンをエキソサイトーシスにより放出することがわかった。

SL1-03

繊毛虫ソライロラッパムシの内部周期と空間記憶

越後谷 駿

北海道大学大学院 生命科学院

Intrinsic rhythm and spatial memory in the ciliate, Stentor coeruleus

Syun Echigoya

Graduate School of Life Science, Hokkaido University

淡水に生息する繊毛虫ソライロラッパムシは、主に遊泳と固着の2つの運動状態を切り替えながら生活している。原生生物の行動変化は、走光性や走化性など、環境への応答に焦点があてられ発展してきた。一方、細胞自らが環境を変え、行動を制御する例は少ない。

 本発表では、ソライロラッパムシが遊泳時に逆繊毛打を行い、10–20秒程の内部周期を持って止まる行動を紹介する。この一瞬止まる行動は、円環状の準一次元経路において、場所依存的に起こり、その周期のばらつきは無垢な状態と比べて小さくなることが確認された。

 このような場所依存的な遊泳停止行動は、細胞が一瞬止まった際、空間記憶として作用する外部物質を放出し、その物質の濃度勾配に細胞が反応することで、自身の行動を変化させていると考えられ、認知科学の「エナクティビズム」と親和性が高いと言える。今後は外物質の特定と、この行動が持つ生物学的な意味ついて明らかにしていきたい。

SL1-04

リーシュマニアのハプトモナド形態における接着斑形成

梁瀬 隆二

オックスフォードブルックス大学 バイオメディカルサイエンス部門

Attachment plaque development in the haptomonad form of Leishmania

Ryuji Yanase

Dept. of Biol. and Medic. Sci., Oxford Brookes Univ.

 病原性原生生物リーシュマニアは媒介昆虫サシチョウバエの体内において、短縮させた鞭毛で昆虫体内に接着するハプトモナド形態をとる。この接着過程はキネトプラスト類の寄生虫全体で保存されており、寄生虫の発達にとって重要であると考えられる。ハプトモナド形態の理解を深めるため、我々はin vitro細胞分化系を確立した。三次元走査電子顕微鏡観察(SBF-SEM)によってin vitro分化ハプトモナドと昆虫体内のin situハプトモナドの細胞構造を比較し、in vitroハプトモナドがin situハプトモナドの形態、構造を再現することを確かめた。また、光学・電子顕微鏡観察において、in vitroハプトモナドの接着斑形成過程には、1)鞭毛による接着面の探察、2)初期接着の形成、3)鞭毛の分解と接着の成熟の3つの段階が見られた。以上の観察から、ハプトモナドの発達に伴う鞭毛と細胞の形態変化の動態を明らかにした。


BPAセッション(11月21日(日)14:10-17:55)

BPA-01

繊毛虫Tetrahymenaにおける螺旋遊泳行動の三次元観察

○丸茂 哲聖, 山岸 雅彦, 矢島 潤一郎

東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

Direct three-dimensional observation of helical swimming behavior of the ciliate Tetrahymena.

○Akisato Marumo, Masahiko Yamagishi, Junichiro Yajima

Dept. Life Sci., Grad. Arts & Sci., Univ. Tokyo

繊毛虫は楕円体状の形態を持ち、その細胞表面に存在する多数の細胞小器官・繊毛を協同的に動かすことで運動する真核単細胞生物である。なかでもTetrahymenaはモデル生物として広く扱われ、螺旋を描くように遊泳することが知られているが、螺旋の方向を含む遊泳様式の詳細な報告はなされてこなかった。この主な理由として、細胞体が小さく透明であることに加え、三次元的な遊泳をする細胞体が従来は平面的にのみ観察されてきたことが挙げられる。従って、繊毛虫の遊泳機構を明らかにするためには、その遊泳軌跡を三次元的に定量することが必要である。

本研究では三次元位置検出顕微技術を用いて、繊毛虫Tetrahymenaにおける遊泳軌跡の詳細な三次元情報を取得した。加えて、繊毛打が逆転するような脱分極性のCa2+刺激を与えた際の運動変化に対する三次元観察を行い、その結果から繊毛打の連続的な軌跡変化が繊毛虫の遊泳パターンを決定している可能性が示唆された。

BPA-02

ゾウリムシのラジアルスポークによる繊毛打制御機構の解明

○亀田 奈那, 堀 学

山口大学大学院 創成科学研究科

Study on the regulation mechanism of ciliary motility by radial spokes in Paramecium

○Nana Kameda, Manabu Hori

Grad. Sch. Sci. & Tech. for Inov., Yamaguchi Univ.

ヨツヒメゾウリムシでは,繊毛のラジアルスポークタンパク質RSP16やRSHL1をノックダウンすると繊毛打頻度が上昇する。ラジアルスポークは軸糸中心装置からの刺激を内腕・外腕ダイニンに伝達し,繊毛運動を調節すると考えられているが,これらのタンパク質が繊毛運動の調節にどのように関わるのかは明らかになっていない。高速撮影装置をもちいた解析からRSP16やRSHL1ノックダウン細胞では,それぞれの繊毛打波形は異なるが,回復打の半径が減少するため,繊毛打頻度が上昇していることがわかった。また,内腕ダイニンdをノックダウンするとRSP16ノックダウンと同様の波形を示し,内腕ダイニンaをノックダウンするとRSHL1ノックダウンと同様の波形を示した。これらの結果から,RSP16は内腕ダイニンdの活性化を制御し,RSHL1は内腕ダイニンaの活性化を制御することで,繊毛打波形を調節していることが示された。

BPA-03

Colpoda cucullus休眠シストの塩耐性:シストは海を渡るだろうか?

○十亀 陽一郎1, 齊藤 瞭汰1,2, 小泉 亮太1, 鈴木 智大3, 酒井 達弥1, 山野邊 裕樹1, 清水 大雅1, 小野 晶子3, 田中 利彦1, 青山 哲也4, ワーナー マンフレッド5, 渡辺 幸三6

1福島工業高等専門学校, 2現所属:高知大学 理工学部, 3宇都宮大学 バイオサイエンス教育センター, 4理化学研究所 光量子工学研究センター, 5ブランデンブルク工科大学, 6愛媛大学 沿岸環境科学研究センター

Tolerance of Colpoda cucullus resting cysts to high salinity:

Do cysts cross the ocean?

○Yoichiro Sogame1, Ryota Saito1,2, Ryota Koizumi1, Tomohiro Suzuki3, Tatsuya Sakai1, Hiroki Yamanobe1, Taiga Shimizu1, Akiko Ono3, Toshihiko Tanaka1, Tetsuya Aoyama3, Manfred Wanner5, Kozo Watanabe6

1NIT, Fukushima College, 2Present address: Dept. Chem. Biotechnol., Kochi Univ., 3C-Bio., Utsunomiya Univ., 4RAP. Riken., 5Dept. Ecol., Brandenburg Univ. Tech., 6CMES. Ehime Univ.

原生生物の陸上環境に対する適応戦略の一つは、休眠シストを形成することである。休眠シストは、様々な環境ストレスに耐えることができるため、風、動物、人の往来により運搬され、種の長距離分散においても重要な戦略であると考えられてきた。分布域が広い淡水棲原生生物の分散には、海洋分散が関与していると考えざるを得ないが、我々の知る限り淡水棲原生生物におけるシストの海洋分散の可能性に関しては議論されていない。果たして「シストは海を渡ることができるだろうか?」本研究では、Colpoda cucullus休眠シストの塩耐性を調査した結果、C. cucullusの休眠シストは、少なくとも3.5%以上の塩水に1週間以上耐えることが明らかになった。この結果は、シストが海洋分散を行うことができる可能性があることを明確に示している。本発表では、シストの塩耐性とそれを可能にする因子について議論する。

BPA-04

Spirostomum ambiguumにおける微小管のすべり運動

○中村 公祐, 大道 真歩, 端山 拓希, 園部 誠司

兵庫県立大学 理学部生命科学科

Microtubule Sliding in Spirostomum ambiguum

○Kosuke Nakamura, Maho Daidoh, Hiroki Hayama, Seiji Sonobe

Faculty of Sci., Univ. of Hyogo

繊毛虫Spirostomum ambiguumは様々な刺激によって素早く収縮しゆっくりと伸長する。この収縮にはマイオネームが関与していると考えられている。一方、伸長は細胞膜直下に存在する微小管シート、基底小体、繊毛から成る微小管複合体が関与しており、この重なり合った微小管シート間ですべりが起きることで伸長が引き起こされていると考えられているが証明はされていない。本研究では微小管複合体を単離しin vitroにおけるすべり運動を調べた。単離した微小管複合体をATP処理すると、ATP非存在下より基底小体間の距離が広がっていた。またダイニンの阻害剤であるバナジン酸存在下では基底小体間の広がりは見られなかった。これらの結果は微小管複合体間にATP依存的なすべりが起こること、またこのすべりがダイニンによって起こっている可能性を示唆している。

BPA-05

Paramecium bursariaの増殖とバクテリア

○大港 悠可, 近藤 夏子, 平野 雄生, 松島 佑里, 日野 晶也, 細谷 浩史

神奈川大学 理学部生物科学科

Proliferation of green paramecia, Paramecium bursaria, and their endosymbiotic bacteria

○Yuka Ominato, Natsuko Kondo, Yui Hirano, Yuri Matsushima, Akiya Hino, Hiroshi Hosoya

Fac. of Sci., Kanagawa Univ.

繊毛虫ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)(以下Pb)は淡水に生息する真核単細胞生物で、真核細胞間共生の研究対象として広く知られている。Pbを用いた研究では、過去に得られた成果の再現性が必ずしも高くない現状があり、研究者間でさまざまな微生物が餌として使用されていること等の状況がその背景にあるものと考えている。私達の研究室では、野外で採取したPbを2017年から無餌条件下でクローニングを繰り返し、無餌培養が可能な株(KUNY-2)を確立した。KUNY-2株を培養に使用すれば、外部からバクテリアなどの餌を投与せず継代が可能である。興味深いことに、培養液からは常に内在的なバクテリアが検出された。また、遺伝的には同一のクローンであるにも関わらず、各個体の増殖カーブに大きなばらつきが見られた。Pb各個体の体内に局在するバクテリアの網羅的解析を行なったところ、増殖速度が速い個体同士のバクテリアの組成は互いに高い相同性を示すことが明らかになった。

BPA-06

ミドリゾウリムシ共生藻から検出されたバクテリア

○平野 雄生, 大港 悠可, 松島 佑里, 日野 晶也, 細谷 浩史

神奈川大学 理学部

Bacteria identified from the symbiotic algae in the Paramecium bursaria

○Yui Hirano, Yuka Ominato, Yuri Matsushima, Akiya Hino, Hiroshi Hosoya

Fac. of Sci., Kanagawa Univ.

 ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)は、多数の共生藻が細胞内部に共生している単細胞性の原生生物である。共生藻はホストのミドリゾウリムシから単離しホストと独立に培養する事が可能である。本研究室では、ホストから単離後クローン化した複数の共生藻株を寒天培地上で維持、培養を継続させている。寒天培地上に形成された多くの共生藻コロニーの周辺には、白い滲みのようなものがみとめられた。そこで我々は共生藻コロニーを複数ピックアップし、液体培養を実施後、共生藻と培養液中の微生物をそれぞれ別々に遠心で回収、バクテリアの網羅的解析を行なった。その結果、両者から複数のバクテリアを検出した。同時に、ホストとその培養液中の微生物もそれぞれ遠心で回収、バクテリアの網羅的解析を行った。これらの解析結果をもとに、共生藻とホストのミドリゾウリムシそれぞれに共生するバクテリアの種類を比較したのでその結果を報告する。

BPA-07

繊毛虫ブレファリズマにおける相補的な接合型細胞が分泌するガモンがジャイアント形成に及ぼす影響

〇前多 毬花¹, 杉浦 真由美²

 ¹奈良女子大学大学院 化学生物環境学専攻, ²奈良女子大学 研究院 自然科学系

The effect of gamones secreted by complementary mating type cells on the giant formation of Blepharisma

〇Marika Maeda¹, Mayumi Sugiura²

¹Dept. Chem. Biol. and Env. Sci., Nara Women’s Univ., ²Res. Group Biol. Sci., Div. Nat. Sci., Nara Women’s Univ.

繊毛虫Blepharismaは通常、バクテリアを食べて二分裂によって増殖する。しかし、貧栄養条件下では、接合・ジャイアント形成・シスト形成の3つの現象が起こることが知られており、これらは飢餓条件下で種を存続させるための生存戦略と考えられている。本研究では、これら3つの現象がいずれも起こり得る条件下で優先的に起こる現象はあるのか、各現象間に関連性があるのか検討するため、相補的なガモンがジャイアント形成に及ぼす影響を調べた。B. japonicumのⅠ型細胞(R48株)は同種のⅡ型細胞が少数(約1/10量)存在する条件下においてジャイアント形成数が減少する傾向が見られた。さらに、B. japonicumのⅠ型細胞(R48株、NS-IV株)はガモン2が、B. stolteiのⅡ型細胞(WK-IV株)はガモン1が高濃度で存在するほどジャイアントを形成しにくくなる傾向が見られた。これらの結果から、相補的なガモンが存在するとジャイアント形成が抑制されることが、異なる種、異なる接合型の細胞において示された。

BPA-08

海産貝類に寄生するPerkinsus olseniの感染体形成時の脂質要求性から考えられる伝播機構

〇前田 和輝, 良永 知義, 伊藤 直樹

東京大学大学院 農学生命科学研究科

An estimated transmission mode of Perkinsus olseni, a protozoan parasite of marine mollusks, from lipid requirements for zoosporulation

○Kazuki Maeda, Tomoyoshi Yoshinaga, Naoki Itoh

Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo

二枚貝アサリの寄生原虫Perkinsus olseni は、死亡した宿主組織内で前遊走子嚢へと発達する。これを海水に移すと主要感染体である遊走子の形成が開始されるため、自然界では海水中で形成・放出された遊走子がアサリに取り込まれて感染が成立すると考えられている。しかし、海水中では3割程度の前遊走子嚢しか遊走子を形成せず、放出された遊走子も海水中に拡散するため、自然界での高い感染レベルをうまく説明できていない。本研究ではP. olseni の遊走子形成効率を高める条件を検討、脂質添加海水中では前遊走子嚢の約8割が遊走子形成することがわかり、同様の効果はアサリの体表粘液にも認められた。自然界の海水中に脂質はほぼ含まれていないことを鑑みると、P. olseni の前遊走子嚢はアサリの殻内部に入り込んで遊走子形成を行い、形成された大量の遊走子が感染を成立させることで重篤感染をもたらすと考えられた。

BPA-09

キクラゲ属子実体より分離されたカボステリウム目の未記載種

○岩本 祥明1, 中山 剛2

1筑波大学大学院 生命地球科学研究群, 2筑波大学 生命環境系

Undescribed Cavosteliida amoeba isolated from Auricularia

○Yoshiaki Iwamoto1, Takeshi Nakayama2

1Grad. Sch. of Life and Env. Sci., Univ. of Tsukuba, 2Life and Env. Sci. of Univ. of Tsukuba.

キクラゲ属子実体より分離されたアメーバYIP-63株は、細い糸状仮足をもつ小型の分岐アメーバであり、生活環中に鞭毛・多核の変形体ステージは観察されず、非離散性胞子をもつ小型の原生粘菌様子実体を形成した。SSU rRNA遺伝子に基づく分子系統解析からは、本株がカボステリウム目に属することが示唆された。カボステリウム目は原生粘菌様子実体を形成するCavostelium属、Schizoplasmodiopsis属、Tychosporium属の3属より構成され、これら3属は子実体やアメーバの形態、生活環中の鞭毛・変形体ステージの有無で区別される。本株はカボステリウム目で共有される非離散性胞子の子実体をもつこと、また分岐型アメーバがSchizoplasmodiopsis属と類似することから、カボステリウム目に属することが支持される。しかしアメーバがSchizoplasmodiopsis属と比較して著しく小さいこと、鞭毛・変形体ステージを欠くことから、いずれの属とも区別される。以上により本株はカボステリウム目の未記載種であり、また新属に分類すべきものと考えられる。

BPA-10

変形菌に寄生する祖先的菌類の新しい宿主の報告

○三浦 翔太1, 矢島 由佳2

1室蘭工業大学大学院 環境創生工学系専攻, 室蘭工業大学大学院 工学研究科

New host records of early-diverging fungal parasite of Myxomycetes

○Shota Miura1, Yuka Yajima2

1Grad. Sch. of Sus. Env. Eng., Muroran IT, 2 Faculty of Sci. and Eng. Muroran IT.

 祖先的菌類群のRozellomycota (Cryptomycota, Rozellida) は、そのほとんどが環境DNAにより報告されており実体の確保が現状困難なグループである。この菌類群の実体が確認できているものは寄生性であることから、その宿主の認識が実体の確保やその多様性の検討に重要と考えられる。本研究では、子実体が肉眼で観察可能という変形菌の特徴を生かし、野外から変形菌を宿主とする祖先的寄生性菌類の実体を確保し、その宿主範囲を検討した。北海道胆振地域で雪解けから晩秋まで変形菌を採集し、感染有無を形態観察とPCRによって調査した結果、根雪の融雪下という低温環境で子実体形成する好雪性変形菌にのみ当該菌類が確認された。得られた祖先的寄生性菌類を18S rDNA配列を用いて分子系統解析した結果、宿主である変形菌の種や採集環境に対応したクレードを形成する傾向が見られた。これまで報告のある変形菌のLamproderma属に加え、新たに2属を宿主として本発表で報告する。

BPA-11

共生クロレラを持つ新規アメーバ (Amoeba) の観察と分類

○早川 昌志1, 2, 早川 朝陽2, 早川 卓志3

1大阪大学大学院 人間科学研究科, 2ミクロ・ライフ Project, 3北海道大学大学院 地球環境科学研究院

Observation and taxonomy of novel Amoeba with zoochlorellae

○Masashi Hayakawa1, Asahi Hayakawa1, Takashi Hayakawa2

1Faculty of Human Sci. Osaka Univ., 2MicroLife Project, 3Faculty of Envir. Earth Sci., Hokkaido Univ.

細胞内に球状の単細胞緑藻類(共生クロレラ)を共生させている裸アメーバとしては,Chaos属やMayorella属が報告されている.今回,京都市内の鴨川水系において,共生クロレラを持つAmoeba属の特徴を示すアメーバを採集し,培養株とした.Amoeba属において,共生クロレラを持つものはこれまでに報告はなく,共生クロレラを持つ新規のAmoebaだと考えられる.一般的に,Amoeba属は光条件を嫌うが,本アメーバは,光条件下において活発に増殖し,共生クロレラを持つことによって光耐性を獲得している可能性がある.本アメーバの細胞内において,共生クロレラは宿主アメーバの原形質流動と連動して動いており,ミドリゾウリムシなどの多くの共生クロレラを持つ繊毛虫でよく見られる細胞表層直下への定着現象は見られなかった.共生クロレラは,市販の植物用の液体肥料であるHyponexによって容易に単独培養することができた.

BPA-12

3種マイクロコズムの長期培養における藻類と細菌の共生の進化

〇中田 章太1, 安部 雄一1, 西山 竜太郎2, 藤井 大将2, 中島 敏幸1

1愛媛大学大学院 理工学研究科, 2愛媛大学 理学部 生物学科

Evolution of symbiotic association between an alga and a bacterium in the long-term experimental culture of a three-species microcosm

〇Shota Nakata1, Yuichi Abe1, Ryotaro Nishiyama2, Daisuke Fujii2, Toshiyuki Nakajima1

1Grad. Sch. of Sci. and Eng., Ehime Univ., 2Dept. of Biol. Faculty of Sci., Ehime Univ.

本研究室では、藻類(Micractinium sp. Ehime)、細菌(Escherichia coli)、繊毛虫(Tetrahymena thermophila)の3種から構成される人工生態系(CETマイクロコズム)で長期間培養を13年間行ってきた。これまでの解析により、この長期培養において藻類と細菌の間の細胞集塊による共生と藻類と繊毛虫の間の細胞内共生が進化しつつあることが明らかになった。本発表では、培養8年および13年の藻類及び細菌の分離株のそれぞれ50株の性状を調べ、どのような進化的変化を生じたかを解析した。特に、細菌のアミノ酸要求性の解析、藻類ろ液のアミノ酸分析を行い、細菌と藻類の共生関係の進化を解析した。その結果、培養過程でアミノ酸要求性を持つ細菌株の割合が増加したことが明らかになり、藻類が細菌にアミノ酸を提供し共生関係が進化したことが示唆された。

BPA-13

3種マイクロコズムにおける藻類と繊毛虫の細胞内共生進化:共生系外部に依存する必須資源の減少

○米田 侑生1, 松田 達也2, 佐古 壮一朗1, 中島 敏幸2

1愛媛大学 理学部 生物学, 2愛媛大学大学院 理工学研究科

Evolution of endosymbiotic association between an alga and a ciliate in an experimental microcosm: Reduction in essential resources for ciliate survival required from outside the symbiotic system

○Yuki Yoneda1, Tatsuya Matsuda2, Soichiro Sako1, Toshiyuki Nakajima2

1Dept. of Biol. Faculty of Sci., Ehime University, 2Grad. Sch. of Sci. and Eng., Ehime Univ.

 本研究室では、藻類(Micractinium sp. Ehime)、繊毛虫(Tetrahymena thermophila細菌(Escherichia coli)からなるマイクロコズムを13年間培養し、共生の進化を解析してきた。このマイクロコズムの培養初期には藻類を細胞内に取り込み共生した繊毛虫が出現した。また、培養開始5〜7年から得た両種の分離株を用いた解析により、繊毛虫は細胞内に取り込んだ藻類が分泌する資源を利用することで、本来細菌から得ていた必須アミノ酸やビタミン等の外部資源を藻類から得ることが示唆された。本発表では、培養5年あるいは13年のいくつかの藻類分離株と7年に分離した繊毛虫基準株とを様々な資源添加条件(アミノ酸、ヌクレオシド、ビタミン)の下で、二者共培養し繊毛虫の生存過程を調べた。その結果、藻類の培養年数が進むほど、繊毛虫基準株の生存維持に必須な資源の種類が減少した。


口頭発表(11月22日(月)9:00-9:30 )

O-01

繊毛虫テトラヒメナの配偶核形成におけるSemi1の働き

○明松 隆彦1, Rosalía Sánchez-Fernández2, Felix Kosta2, Elisabeth Holzer2, Josef Loidl2

1日本大学文理学部 生命科学科, 2ウィーン大学 マックスFペルーツ研究所

Semi1 marks the selected haploid micronucleus that gives rise to gametic pronuclei in Tetrahymena thermophila

○Takahiko Akematsu1, Rosalía Sánchez-Fernández2, Felix Kosta2, Elisabeth Holzer2, Josef Loidl2

1Dept. of Biosci., Coll. of Humant. and Sci., Nihon Univ., 2MFPL, Univ. Vienna

繊毛虫テトラヒメナの接合では、減数分裂した小核(4個の半数体小核)が細胞内を動き回り、やがて1核のみが選択されて配偶核へと成熟する。一方、非選択な3核は、未熟な状態で速やかに消失する。これまで半数体小核の選択現象(核選択)は、細胞内の限定された領域でのみ起こると考えられてきた。しかしながら我々は最近、核選択が細胞内のあらゆる領域で起こるsemi1Δ株を発見したことから、位置情報以外のシグナルも関与していると予想される。テトラヒメナに固有の遺伝子であるSEMI1は、選択核の核膜にのみ局在する膜タンパク質をコードしている。核膜に発現したSemi1は、選択核を接合面(異性細胞が連結する部分)へ付着させる機能を担うが、選択現象には一切関与していない。Semi1の発見は、これまでに描かれてきた核選択現象の理解の枠組みを大きく転換するものであり、繊毛虫類における配偶核形成過程の詳細なステージ化に役立つ可能性がある。

O-02

テトラヒメナの二価染色体形成における減数第一分裂前期特異的タンパク質 Mep1 の役割

○福田 康弘1, 明松 隆彦2, 岩本 政明2, 伴戸 寛徳1, 加藤 健太郎1

1東北大学大学院 農学研究科, 2日本大学 文理学部 生命科学科

Role of Mep1 (meiosis prophase specific protein1) in the bivalent chromosome formation of Tetrahymena thermophila

○Yasuhiro Fukuda1, Takahiko Akematsu2, Masaaki Iwamoto2, Hironori Bando1, Kentaro Kato1

1Grad. Sch. of Agric. Sci. Tohoku Univ., 2Dep. of Biosci., Coll. of Humanities and Sci., Nihon Univ.

減数第一分裂前期の二価染色体形成は,相同染色体の乗換えおよび染色体分離の正常な進行において重要である.繊毛虫テトラヒメナの二価染色体形成はシナプトネマ複合体を伴わずに起こるが,その分子機構には不明な点が多く残っている.我々は,減数第一分裂前期において特異的に発現するタンパク質(Mep: Meiosis prophase specific protein)を探索し,接合に必須な Mep1 を発見した.Mep1 はクロマチン再編成因子 Snf2 ファミリーのドメイン構造をもち,系統的には Smarcal1 と近い関係にあった.局在解析の結果,Mep1 は減数第一分裂前期の小核へ局在することが分かったが,その foci は相同染色体の乗換えに伴う DNA 切断や DNA 修復のマーカーとは異なる領域にあった.mep1 の発現を抑制したところ,乗換えに伴う DNA 切断や修復について影響は認められなかったが,減数第一分裂中期において一価染色体が有意に確認された.これらの結果は,Mep1 が二価染色体形成における相同染色体対合に寄与することを示唆している.


ポスターセッション(11月22日(月)9:30-11:30 )

P-01

ナベカムリの移動と力特性

○松本 絃汰1, 西上 幸範1,2, 佐藤 勝彦1,2, 中垣 俊之1,2

1北海道大学大学院 生命科学院, 2北海道大学 電子科学研究所

The property of migration and traction by Arcella sp.

○Genta Matsumoto1, Yukinori Nishigami1,2, Katsuhiko Sato1,2, Toshiyuki Nakagaki1,2

1Grad. of Life Sci., Hokkaido Univ., 2Res. Inst. for Electronic Sci., Hokkaido Univ.

有殻アメーバの一種であるナベカムリ (Arcella sp.) は,半球状の殻の底に空いた穴から細胞体を出して移動する.このとき,移動のための推進力になる力(牽引力)を接着基板へと伝達していることが考えられる.しかしながら細胞がどのように力伝達を行うことで,移動が実現されるのかは不明であった.そこで本研究では,ナベカムリの牽引力による移動メカニズムを解明するため,単純な2次元平面で移動する細胞の牽引力測定を行った.そして,牽引力場の方向を主軸と補軸の代表的な2方向に分解した.その後,代表的な牽引力方向と細胞の移動方向との相関関数を算出した.その結果,牽引力が現れてから細胞が移動するまでに30秒程度の時間遅れが存在し,移動方向と牽引方向との成す角は,90度程度となった.

P-02

繊毛虫ヨツヒメゾウリムシにおけるDNAアデニンメチル化酵素の同定

○川口 隆之1,2, デューアクー サンドラ2

1基礎生物学研究所 クロマチン制御研究部門, 2フランス国立科学研究センター ジャックモノー研究所

Identification of DNA adenine methyltransferases in Paramecium tetraurelia

○Takayuki Kawaguchi1,2, Sandra Duharcourt2

1National Institute for Basic Biology, Division of Chromatin Regulation, 2Université de Paris, CNRS, Institut Jacques Monod

DNA methylation on adenine (6mA) is a newly rediscovered modification that has been described in a wide range of eukaryotes. Yet its function in eukaryote remains unclear. In the Paramecium tetraurelia macronuclear genome, we previously reported that 1.6% of all adenines are methylated. To identify DNA adenine methyltransferases, we performed RNAi-mediated knockdown of genes encoding putative MT-A70 domain-containing enzymes. We found that co-silencing of two distinct gene families during vegetative growth led to a drastic reduction of symmetric 6mA levels, and to cell proliferation defects. Consistent with these proteins functioning in the same pathway, we showed that they can co-immunoprecipitate when produced in a heterologous insect system. The recombinant proteins exhibited methyltransferase activities on double-stranded DNA in vitro. Altogether, these results suggest that two distinct gene families encoding MT-A70 containing enzymes are required for symmetric 6mA in vegetative cells.

P-03

繊毛虫ブレファリズマにおける網羅的解析を用いたガモン2受容体候補の探索

○高木 佑美1, 杉浦 真由美2

1奈良女子大学大学院 人間文化総合科学研究科, 2奈良女子大学 研究院 自然科学系

Screening of gamone2 receptor candidates by comprehensive analysis in the ciliate Blepharisma

○Yumi Takagi1, Mayumi Sugiura2

1Dept. Chem. Biol. And Env. Sci., Nara Women's Univ., 2Res. Group Biol. Sci., Div. Nat. Sci., Nara Women's Univ.

 繊毛虫ブレファリズマは、性的成熟期に飢餓状態におかれると接合と呼ばれる有性生殖を行う。ブレファリズマには、Ⅰ型とⅡ型の2種類の接合型があり、接合は相補的な接合型細胞が分泌する接合誘導物質を受容することで誘導される。Ⅰ型細胞、Ⅱ型細胞が分泌する接合誘導物質はそれぞれガモン1、ガモン2と呼ばれ、接合型特異的に作用する。ガモンによる接合誘導機構を解明するためには、各ガモン受容体分子の同定が必要となる。本研究では、ガモン2受容体候補の探索を目的として、ブレファリズマのⅠ型細胞、Ⅱ型細胞、性的未熟期細胞を用いて行われたトランスクリプトーム解析のデータをもとに、発現パターンや配列情報を調べ、Ⅰ型細胞で有意に発現していると考えられる候補遺伝子を選別した。そして、各候補遺伝子について、接合型特異的な発現パターンの再現性を検証し、分子的特徴を調べることにより、ガモン2受容体候補配列となる可能性を検討した。

P-04

細胞の前端部に局在する繊毛虫テトラヒメナのヌクレオポリンMicNup98A

山本 孝治1, 福田 紀子1, 近重 裕次1, 岩本 政明2, ○松田 厚志1

1情報通信研究機構 未来ICT研究所, 2日本大学 文理学部

Basal bodies in the anterior region of the Tetrahymena cell are binding sites for nucleoporin MicNup98A

Takaharu Yamamoto1, Noriko Fukuta1, Yuji Chikashige1, Masaaki Iwamoto2, ○Atsushi Matsuda1

1KARC, NICT, 2College of Humanities and Sciences, Nihon University

繊毛虫を含む単細胞生物では、内在する情報により前後軸が決定されるが、その極性形成機構はほとんどわかっていない。我々は繊毛虫テトラヒメナの核膜孔タンパク質であるMicNup98Aが細胞前端部の基底小体に局在することを見出した。脊椎動物では核膜孔複合体タンパク質が基底小体に局在し、繊毛機能を介して体の左右軸の決定に重要な役割を果たしていることが知られており、テトラヒメナにおいても繊毛基部における機能が予想される。MicNup98Aの核膜孔への局在にはタンパク質のC末端側が必要であることが知られていたが、細胞前端部の基底小体への局在にはタンパク質のN末端部が必要であることが明らかになった。超解像顕微鏡などを用いた解析などを報告し、テトラヒメナの前後軸形成に関して考察する。

P-05

BPA-01をご参照ください。

P-06

BPA-03をご参照ください。

P-07

BPA-08をご参照ください。

P-08

BPA-11をご参照ください。