2026年9月15日(火) 福岡国際会議場E 会場(405)
第1セッション(9:00-10:00) 座長:
◎小標数における超楕円的な超特別曲線の数え上げ
○大橋 亮(東京大学)
超特別曲線は数論や代数幾何学における重要な研究対象であり, その性質に関して多くの未解決問題が残されている. 例えば「標数pにおける超楕円的な種数g超特別曲線の同型類個数を決定せよ」という問題はその一つであり, 種数g≧3の場合は一般に未解決である. この問題に対する計算機的なアプローチとして, 大橋ら(2025)は同種写像グラフを利用することで, 種数3の場合を標数p≦97の範囲で決定した. また, 工藤-原下(2022)はグレブナー基底を利用することで, 種数4の場合を標数p≦19の範囲で決定している. 本講演ではまず, 一般の超楕円曲線が超特別となるためのRosenhain不変量に関する必要条件を与える. その後, この条件を用いた超楕円的な超特別曲線の新たな数え上げアルゴリズムを提示し, その実行結果について報告する. 具体的には, 種数4および5の場合についてはp≦41の範囲で, 種数6の場合についてはp≦31の範囲で, それぞれ超楕円的な超特別曲線の同型類個数を決定することに成功した.
◎3次元超特別アーベル多様体の同型射と射影Clifford群の対応及び低次元多様体への分解
○黒澤 敦(情報セキュリティ大学院大学), 有田 正剛(情報セキュリティ大学院大学)
近年,耐量子計算機暗号の一種である同種写像暗号の研究・開発が盛んに行われている.同種写像暗号は,超特異楕円曲線間の同種写像計算問題の困難性を安全性の根拠とする方式である.2022年のCastryckとDecruによる同種写像ベース鍵共有プロトコルSIDHへの攻撃手法の提案がブレークスルーとなり,高次元の超特別アーベル多様体間の同種写像を用いた研究も増加している.高次元同種写像計算問題への攻撃手法として,2020年のCostelloとSmithの研究により,高次元アーベル多様体を低次元アーベル多様体の直積に分解し,同種写像を探索する手法が提案された.また,同種写像の計算を効率化するため,近年の研究ではテータ定数というテータ関数を用いたアーベル多様体の表現が利用されている.本発表では,3次元超特別アーベル多様体のテータ定数に作用する同型射の集合が射影Clifford群と同型であることを示す.加えて,CostelloとSmithの手法を適用するために,直積構造をもつ3次元超特別アーベル多様体のテータ定数から,低次元アーベル多様体のテータ定数を導出する手法を提案する.
整数係数多項式列の漸化式・零点分布と有向グラフスペクトルへの応用
柏原 藍(広島大学), ○南出 大樹(東京工業高等専門学校,東京科学大)
本講演では,反角柱型構造に由来する有向グラフ族の隣接特性多項式について考察する.対象とするグラフは,側面が有向サイクルとなるよう辺に向きを与えたものであり,サイクル辺数を$n$,サイクル数を$r$とする.三角形の場合には隣接行列が巡回行列となり,固有値が複素平面上の三葉曲線に沿って現れることが知られている.一方,$n>3$では巡回性は失われるものの,固有値は複素平面上で大きさの異なる正$n$ 角形状の配置を示す.本研究では,これらのグラフから生じる整数係数特性多項式列に着目する.サイクル数$r$に関する線形漸化式を導出し,チェビシェフ多項式との対応を用いて一般項を明示する.その結果,実根の三角関数表示,複素根の$n$乗根による生成,零固有値の重複度,および特性多項式の因子分解構造を統一的に記述できることを示す.特に,サイクル数とサイクル辺数の算術的関係が零点構造や重複度に反映されることを明らかにする.さらに,本研究の枠組みは線形漸化式から生成されるより一般の整数係数多項式列へ拡張できる.数値実験と可視化を交えながら,零点分布と代数的構造の対応について考察する.
〇は登壇者・◎は若手優秀講演賞対象
日本応用数理学会「数論アルゴリズムとその応用」(JANT)