深層展開に基づく信号処理アルゴリズム構築論の深化と展開
13:00~13:05 開会の挨拶 和田山正(名古屋工業大学)
13:05~13:45 「スパース推定:位相復元と確率的サポート推定」 三村和史(広島市立大学)
圧縮センシングの位相復元を応用して、角度分解光電子分光の結果から有機化合物の分子軌道を推定する方法について議論する。いくつかの原子位置を想定した基底を用いることによって有機化合物の立体的な構造を推定できることを示す。また、圧縮センシングにおいて、確率微分方程式を用いたサポート推定手法について紹介する。
13:45~14:25 「Minimax concave penalty を用いたスパース制御の設計」 永原正章(広島大学)
アクティブなアクチュエーションの合計時間を最小化するスパース制御は,L0ノルムを最小化する最適制御問題(L0最適制御)として定式化される.しかし,L0ノルムは扱いにくく最適制御の数値計算も難しいため,従来L1ノルムで近似する方法(L1最適制御)が用いられてきた.L1最適制御とL0最適制御が等価となるための条件として正規性 (normality) が知られているが,正規性が成り立たない場合は,L1最適制御がスパースにならないケースも報告されている.本発表では,信号処理の分野でスパース性を高める方法としてよく知られているminimax concave penaltyを用いた方法をスパース最適制御に応用し,正規性が成り立たないケースでもスパースな制御が得られることを示す.
14:25~15:05 「LCoopPG: 深層展開を用いた完全分散型MIMO検出アルゴリズム」 和田山正(名古屋工業大学)
本講演では,完全分散型MIMO信号検出のための学習型協調射影勾配降下(LCoopPG)アルゴリズムを紹介する.提案アルゴリズムであるLCoopPGアルゴリズムは,CoopISTから発想を得た完全分散型アルゴリズムであり,ネットワーク上で協調動作する射影勾配法に基づく.提案法には,深層展開のパラメータ学習により調整される学習可能ステップサイズと重みパラメータが組み込まれている.数値実験により,提案法は従来のMMSEアルゴリズムと比較して検出性能の優位性を持つことが確認されている.さらに実験結果は深層展開の有効性を裏付けており,学習可能なパラメータの適切な調整により,シンボル誤り率性能が大幅に改善されることが示されている.提案アルゴリズムのもう一つの注目すべき利点はそのスケーラビリティである.処理ユニット(PU)数を拡張することで,信号検出能力を犠牲にすることなく各PUにおける必要計算資源を削減でき,有効な負荷分散が可能であることが実験的に示されている.
15:05~15:15 休憩
15:15~15:45「イベントトリガ制御系におけるイベント条件と制御則の同時最適化」岡野訓尚(立命館大学)
イベントトリガ制御系には,設計対象として通信タイミングを決定するイベント条件と制御入力を決定する制御器が含まれる.これまでに,フィードバック系の安定性やイベント発生間隔の下限を理論的に保証する解析手法や設計手法が提案されてきたが,通信負荷と制御性能を統一的な評価関数のもとで最適化する手法については確立されていない.本発表では,この最適化問題に対して深層展開を用いた解法を提案する.
Zoomリンク: https://us02web.zoom.us/j/82793397108?pwd=VXFWaXObkXfFWPvPezKUwcy5gAOhyj.1
ミーティング ID: 827 9339 7108
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15:45~16:15 「光アナログデバイスを用いた圧縮センシング」林和則(京都大学)
高速な信号処理を低消費電力で実現するために,従来のデジタル信号処理に代わり,アナログ信号処理技術の利用が注目されている.特に光デバイスによるアナログ信号処理では,光信号を回路内に伝搬させるだけで行列-ベクトル積を計算可能なため,深層学習などの機械学習への応用が検討されている.本講演では,代表的な圧縮センシングの問題であるl1-l2最適化を解くためのアルゴリズムに焦点をあて,ISTA(iterative shrinkage thresholding algorithm)やFISTA(fast ISTA),ADMM(alternating direction method of multiplier)に基づいたl1-l2再構成アルゴリズムを光アナログデバイスを用いて実現するための回路構成やその再構成性性能について紹介する.
16:15~16:45 「深層展開の新展開:量子/量子模擬アルゴリズムへの適用」高邉賢史,荒井俊太,萩原涼(東京工業大学)
深層展開はこれまで信号処理における微分可能な連続最適化アルゴリズムや制御分野に使われてきた一方で,自動微分不可能なアルゴリズムへの適用は困難とされてきた.一方,量子アニーリングに代表される量子効果を活用した量子アルゴリズムは組合せ最適化問題への有効性から近年注目を集めている.本講演では,量子アルゴリズムやそれに着想を得た古典的な量子模擬アルゴリズムに深層展開を適用した例を紹介する.
16:45~17:15 「サイボーグインセクト群の編隊行動制御」小蔵正輝(広島大学)
複雑な地形におけるロボット群の航行は衝突回避,環境適応,エネルギー効率限界などの理由から困難な課題である.本発表では昆虫に電子制御デバイスを装着したサイボーグインセクトに対する群制御アルゴリズムの提案とその評価について紹介する.サイボーグインセクトは、周囲の個体や障害物を本能的に回避し,また複雑な地形に自然と適応する能力を持つことが期待される.しかしながらサイボーグインセクトの制御に関する研究は未だ少ない.そこで本研究では,サイボーグインセクト群に対する新たな群制御アルゴリズムを提案し,砂地での実験を通じてその有効性を実証した.本講演がスワームロボティクス分野の発展に寄与することを期待する.
17:15~17:20 閉会の挨拶 TBD()
18:10~21:15 *技術交流会(お好み焼と鉄板焼 和家 )
参加者(順不同,敬称略):和田山,三村,永原,林,高邉,荒井,萩原,魏,小蔵
・大学会館前バス停すぐ
・西条駅から広島大学へのバスは全て基本的に大学会館前に停車します
本研究会は科研費JP22H00514の助成を受けたものです.