設立趣意書
『場』を作ろう
マーダーミステリーという刺激的で心揺り動かすコミュニケーションゲームが日本に根付いてから、5年ほどが経ちました。その過程にはコロナ禍があり、店舗公演作品はともすればここで潰えるかとも思われましたが、少人数で遊べる創意工夫、各地店舗での衛生管理などの甲斐あって、危機を乗り越え、昨今は益々大きな盛り上がりをみせています。
また、黎明期に生まれたオンライン作品も進化の途上です。新進気鋭の作家を続々と迎え入れ、繰り出される作品は連日界隈を賑わせています。配信活動で外の業界にもリーチするなど、メディアミックスも盛んです。手軽にマーダーミステリーを遊べるアプリケーションが普及し、オンライン環境は創作の苗床となりました。
このようにマーダーミステリーは多様化し、店舗公演作品、オンライン作品、コンポーネント作品と、今では様々なスタイルが生まれたのです。また、マーダーミステリーから派生した近縁のコンテンツも多種多様に広がりました。ですが、多様であるが故の問題もあります。裾野が広がりすぎて、どんな作者がどんな作品を作っているのか、判然としないのです。
マーダーミステリーを取り巻く環境が大きくなるのは、もちろん良いことです。たくさんの人が、その中で楽しむことができるのですから。ですが、そこにいるひとりびとりが言葉を掛け合うことができなかったら。孤独であったら。これは寂しいことです。ひとりの声が届かない。ひとりの想いが誰にも伝わらない。これでは、豊かな環境とはいえません。
作家ひとりびとりが、孤立に直面していると思うのです。
創作したものを世に出したい。創作を誰かといっしょにしたい。創作したものを大切に扱ってほしい。どれも、作家ひとりの力で成し遂げるのは難しいでしょう。作家ひとりの意見が、ただの愚痴となって雲散霧消してしまいます。
でも、こうした声が集まる『場』があれば。作家が集い語らう『場』があれば。
作家を取り巻く環境を、少しずつ良い方向へ変えていけると、そう思うのです。
わたしたちが作りたいのは、そんな『場』です。世の中をこうしたい、とか。作家はこうあるべきだ、とか。大上段から物申すつもりはありません。
ただ『場』があれば。
作家ひとりびとりが集まれる『場』があれば。声をかけあい、互いの理解を広げ、今より良い環境を構築していけると思うのです。
このたび、マーダーミステリー作家の集まる『場』となる会を、多くの方々の御賛同、御協力のもとに形作ることができました。ここに集った皆様と、そして、これから集う皆様と共に、一歩、また一歩と、あゆみを進めてまいります。
何卒、御見守りくださいませ。
令和6年 10月 4日
代表 しゃみずい