自由学園ではなぜ全員が体操をするのか
創立者羽仁吉一・もと子は、子どもたちが将来よく生きる人となり、社会に役立つ人となるためには、健康的でバランスの取れた心身の発育が望ましいと考え、創立当初から体操で身体をきたえることも大切にしていました。体操を特別なものと捉えず、人が生活していく上で、よく動ける身体を作るために必要なことと考えたのです。
「体操会は体操が嫌いな人のためにあるのだよ。」と羽仁吉一は言いました。
自由学園の体操会では好きな人、得意な人だけが体操をするのでなく、全員が参加することが大きな特徴です。
自由学園とデンマーク体操
自由学園では、創立後間もなくデンマーク体操を取り入れています。ニルス・ブック氏率いるデンマークのオレロップ国民高等体操学校の体操チームが、初めて自由学園(現在の自由学園明日館)で演技発表をしたのは1931年。以後現在に到るまで交流は続いています。
これまでの交流の歴史は下記の「写真で見る体操会の歴史」前編・後編の動画をご覧ください。
デンマーク体操は力強さと、柔軟性、巧緻性、リズムを大事にし、若者に健康的でバランスのとれた身体と品性が備わることを目的としています。当初は学園にデンマークより指導者を迎えました。
その後は、オレロップ体操学校に留学した代々の自由学園男女卒業生や体操指導者が指導しています。
(下の写真は初めて学園から留学し、1935年に帰国した女子部卒業生2名)
また、2003年からは毎年2学期に、オレロップ体操学校の若い卒業生2名がデンマークから来日して、体操会に向けて教師と共に指導に当たっており、生徒も良い刺激を受けています。
さらに、2017年度からは最高学部とオレロップの間で奨学制度が整い、毎年学部生がオレロップ体育アカデミーへ留学しています。今年度は5名の学生が留学中です。
デンマーク体操を取り入れてる学校はありますが、自由学園はデンマーク体操を一貫教育の全ての段階を通じて、日常的に行っていることが特徴といえます。
「世界体操祭」への参加
自由学園最高学部では、有志の学生が国際的な舞台である「世界体操祭」に継続して参加しています。
2023年には、最高学部学生有志23名が、オランダ・アムステルダムで開催された第17回世界体操祭に参加しました。
世界体操祭は4年に一度、国際体操連盟(FIG)が主催する祭典で、競技ではなく、各国の体操文化を披露し合い、体操を通じて交流と理解を深めることを目的としています。2023年の大会には、日本から12チームが参加し、自由学園は一貫教育で培ったデンマーク体操に日本的要素を加えた演技を発表しました。
最高学部はこれまで、2015年にフィンランドで行われた第15回大会で初参加し、2019年にオーストリアで開かれた第16回大会にも有志が参加して発表を行っています。