サンゴ礁の研究室をオンラインで訪ねてみよう!

2020年11月22日(日曜日) 16:15-17:45 開催 ※小学生以上対象


サンゴって何歳まで生きるの?
サンゴが光るって本当?
サンゴ礁が人の役にたつってどういうこと?
サンゴ礁の研究って、どんなことをしているの?

サンゴ礁に関するさまざまな疑問を募集して、
5人の先生方にお答えしてもらいます!

たくさんの方にご参加いただきました!!

イベントにご参加くださりありがとうございました。

みなさんからいただいた質問は、後日このサイトでも先生方からの回答を公開してゆく予定です!!

また、今後のイベント企画などの参考にさせていただきますので、アンケートにご協力をお願いします。

イベントについて

開催日時:11月22日(日)16:15〜17:45

zoom を利用してオンラインで行います(zoom についてはこちらを参考になさってください)。

参加は無料ですが、事前に参加登録をお願いいたします。

小学生・中学生・高校生の方を主な対象としておりますが、大人の方も参加可能です。

質問にご回答いただく先生方

沿岸生態学・生態系モデリング】中村 隆志(なかむら たかし)先生
東京工業大学 准教授

研究室ウェブサイト
東京工業大学 融合理工学系 News 研究室紹介

Q1. 先生の研究内容について教えてください

サンゴ礁域やマングローブ域を研究対象として、生態学的な調査や地球化学的な手法を用いた水質等のモニタリング、物理観測などの現地観測や、衛星リモートセンシングなど様々なテクニックを駆使して、生態系の複雑な挙動を理解し、背後にあるメカニズムを解明するための研究を行っています。
また、環境に対する生物群集の応答や相互作用を解明するための生態系の統合モデリングシステムの開発ならびに、数値シミュレーションによる生態系の将来予測に関する研究を行っています。

これらを通して、近年の地球温暖化や海洋酸性化などに代表されるグローバルな環境変化や、赤土や栄養塩の流出などのローカルな人為影響下での生態系の変遷や、それを踏まえた持続可能な人間社会と生態系とのかかわり方について研究を進めています。

Q2. 研究者を志したきっかけは?

小さいころは恐竜博士になりたいと思っており、その延長で、大学では地質・古生物学を専攻し、そこでサンゴ礁に関する研究に出会いました。

当初は研究テーマについてあまり真剣に考えおらず、海が好きだったことと石垣島で現地調査できるという単純な理由で研究室とテーマを選び、サンゴ礁の研究を始めました。
そのころは研究者になろうとも、なれるとも思っていませんでしたが、初めて現地に長期滞在し、調査を進めていく中で、サンゴ礁の魅力にどっぷりはまってしまったのがサンゴ礁の研究者を志すきっかけでした。

ちなみに、そのときに与えられた卒論のテーマについては、卒業はできたものの、未だに十分に納得できる答えは導き出せていません。このことも研究を続けることになったきっかけの一つです。

Q3. サンゴ礁の魅力について教えてください

日本の亜熱帯域では裾礁と呼ばれるタイプのサンゴ礁が海岸線を取り巻いていますが、良く発達した裾礁は遠浅で、シュノーケリングなどで比較的簡単に泳ぐことができます。

サンゴ礁は様々な生物種が生息しており、泳いでいると、色とりどりの生き物や変わった形をした生き物に出会い、いつも新しい発見があって飽きることはありません。
このような地形や生態系を、造礁サンゴ自身がその骨格を積み重ねて何千年もかかて造り上げていきました。

このように広大かつ美しい構造物を造るサンゴ礁には、大きな驚きと崇高さを感じさせてくれます。

Q4. 小中高生へのメッセージ

これを読んでくれている皆さんは、サンゴ礁に興味を持ってくれている方々と思います。

サンゴ礁を語るときに生態系という言葉を良く耳にすると思いますが、この生態系という言葉は、生物だけでなく、それを取り巻く環境を含んだシステム全体を指す言葉です。
つまり、生態系を理解しようと思うと、生物学だけでなく、数学、物理学、化学、社会学など、様々な分野について学ぶ必要があります。
今の勉強が何の役に立つのか?と思うこともあるかもしれませんが、サンゴ礁生態系の姿は、知識と経験を積み重ね、俯瞰し、統合してようやく少しづつクリアーになってきます(私自身、まだ理解できているとは言い難いですが、、。)。
国語や英語だって大事です。体育や音楽、生活、図工、家庭科も人生を豊かにしてくれます。

今やっていることは何一つ無駄にはならないので、ぜひ興味を持って一生懸命励んでください。
それと同時に、野山や海に出て、自然の面白さ、不思議さに触れ、様々な経験を積んで欲しいと思います。

文化人類学・民俗学】高橋 そよ(たかはし そよ)先生
琉球大学 准教授

著書紹介ページ

Q1. 先生の研究内容について教えてください

私はサンゴ礁とともに生きる人々の暮らしについて、文化人類学・民俗学的な視点から研究をしています。

サンゴ島は、大陸部と比べて環境変化に脆弱で資源量も限られています。
このような環境に生きる人々はどのように自然を認識し、工夫しながら利用し、社会(コミュニティ)を維持してきたのでしょうか。
人間が編み出してきた「生きる知恵」や自然観の豊かさに魅せられて、サンゴ礁で漁をする素潜り漁師さんに弟子入りし、追い込み漁などを一緒に経験しながら考えてきました(フィールドワーク、参与観察といいます)。

最近は、サンゴ礁とともに生きる文化の記録と継承に向けて、地域の方と一緒に漁具の復元や映像化にも取り組んでいます。

Q2. 研究者を志したきっかけは?

中学・高校の頃は、宇宙飛行士になることを目指していました。
ある宇宙物理学者のエッセーの挿絵にあったポール・ゴーギャンがタヒチで描いた絵画「Where Do We Come From ?What Are We ?Where Are We Going ?」(1897-1898、ボストン美術館所蔵)に衝撃を受け、人間って、なんだろうという問いにとりつかれました。

Q3. サンゴ礁の魅力について教えてください

いろんな生きもの(人間も含めて!)が、いろんな暮らし方をしていること。

Q4. 小中高生へのメッセージ

世界は、まだまだ不思議にあふれています。

日々の暮らしの中で、これはなんだろう?なぜだろう?と意識的に観察をしたり、思考してみましょう。

きっと、感性や観察眼が磨かれて、「当たり前」と思っていたことが、ぐらぐらと揺らいで、新しい世界が見えるかもしれません。

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サンゴの生物学】日高 道雄(ひだか みちお)先生
琉球大学 名誉教授

写真の詳しい説明についてはコチラ

Q1. 先生の研究内容について教えてください

1979年に琉球大学に赴任してサンゴの研究を始めました。はじめは、サンゴはどのようにして炭酸カルシウムという単純な物質で様々な形を作り出すことができるのかを調べたいと思いました。

4年前に琉球大学を定年退職しましたので、退職するまえにやっていた(やろうとしていた)研究についてお話しします。

(1) サンゴの年齢をテロメア長から推定できないか?
染色体の端にはテロメアという部分があり、ヒトや鳥類などではテロメア長が年齢とともに短縮することが知られています。

(2) サンゴはどのくらいのスピードで環境変化に適応できるのだろうか?

① サンゴ群体内の褐虫藻は主に無性的に増えるとされています。褐虫藻は、突然変異によりどのくらいのスピードで環境適応できるのだろうか?

② 大きな群体サンゴでは、群体内に遺伝的変異(体細胞突然変異)があり、たまたま新たな環境に適応した細胞が他の細胞と置き換わっていくことで環境変化に適応できるのだろうか?

(3) 群体サンゴが同種内の異群体とくっつくと、癒合する場合もあるが、拒絶反応を示すことが多い(組織非適合反応)。
サンゴはどうやって自分と自分以外を区別できるのだろうか?

Q2. 研究者を志したきっかけは?

中学生のころSF小説を読んで生命科学に興味をもちました。たしか、DNA配列の情報を利用して亡くなった恋人を蘇らせるような話だったと思います(1960年代では夢物語でした)。

Q3. サンゴ礁の魅力について教えてください

さまざまな形と色のサンゴがみられるのが魅力と思います。
大学院の時はウニの研究をしていたので、いろいろな形や色のサンゴを見て不思議な気がしました。
サンゴは体の外に炭酸カルシウムの骨格を作るのですが、どうやって様々な、そして種に特有の形を作れるのだろうと疑問に思いました。
一方同種でもさまざまな成長形(枝状だったり平板状だったり)を示したり、同一群体の中でも部域によって異なる形をもつサンゴがいたりして不思議です。

当時(1979年)実験器具が何もなかったので、瀬底実験所の水槽でサンゴを飼育して光に対する反応を調べました。

Q4. 小中高生へのメッセージ

私は、大学院のときは動物生理学を専攻し、ウニのトゲを引っ張る実験装置を自作することが必要でした。
講座の教育方針も、どこに行っても研究できるように必要な装置を作れるようになりなさいというものでした。
秋葉原で電気部品を買っては装置を作ることにだいぶ時間をかけました。実験装置をデザインし、自作することは楽しいのですが、結果が出るまでに時間がかかります。
効率は悪いかもしれませんが、若いときはこういう経験をするのも良いのではと思います。

【海洋生物学】安田 仁奈(やすだ にな)先生
宮崎大学 准教授

宮崎大学 農学部 海洋生物環境学科 教員紹介ページ

Q1. 先生の研究内容について教えてください

サンゴ礁生態系の保全の基礎となる知見の提供および今ある生物多様性への理解を深めるべく、野外調査、遺伝子解析、時に飼育実験などを行いながら様々な手法を取り入れ多角的に研究に取り組んでいます。
主に、サンゴやサンゴを食べるオニヒトデの生態に関する研究、どこの海域を海洋保護区として保全するとサンゴ集団を維持していくのに効果的であるかを明らかにするための初期生態(産卵から幼生分散、着底まで)の過程を明らかにする研究などを行っています。

Q2. 研究者を志したきっかけは?

高校の時の数学の先生が、研究者に向いてくれると言ってくれたこと。

大学受験では親の強い意向で医学部をうけたが、血を見るのが嫌でやはり医学部は嫌だとなった時に、やりたいことを大学院に行く際にいろいろ模索して最終的に興味のあった生物系の研究者を目指した。

Q3. サンゴ礁の魅力について教えてください

美しいこと

地球にこんな美しく多くの種が共存できる生態系があることは尊い

Q4. 小中高生へのメッセージ

これまで当たり前にあったはずの美しい景色、自然が、気が付いたら消滅して2度と戻らない状態になってしまうという現実を、人類は目の当たりにしてきました。

人と人はもちろん、人と自然とのつながりによって生かされているということを再認識すること、大事だと思います。

一人でも多くの人が豊かな自然との繋がりやかけがえのなさに気が付き、人と自然がともに幸福に生きていける未来を一緒につくっていけたらいいなと思います。

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【サンゴ礁地球環境学】渡邊 剛(わたなべ つよし)先生
北海道大学 講師

北海道大学 サンゴ礁地球環境学 渡邊研究室
研究室の twitter
九州大学 サンゴ礁地球環境学研究室
喜界島サンゴ礁科学研究所

Q1. 先生の研究内容について教えてください

サンゴを使って地球と人間を知ることです。
サンゴというのは、5億年も前から地球環境の変化に適応、進化することによって生き延びてきています。さらにサンゴは沿岸域という陸上と海の間にいて、環境の変化に敏感なところに生息しています。なので、サンゴを調べると地球の歴史やその時の環境の変化を知ることができます。
サンゴの重要な特徴の一つとして骨格を作るという特徴があります。そのサンゴの骨格は付加成長といって、一日一日、毎年毎年、形成され続けているので、その骨格や化学組成などを分析することによって、当時の地球環境の変化を定量的に復元することができます。
また、サンゴ礁は、熱帯域の生物多様性を支えており、同時に、そこに住む人間や社会の営みにも重要な役割を果たしています。サンゴ礁を通じて、地球の歴史や人間社会の過去から現在までの関係性を研究し、未来につながる価値を発見してきたいと思っています。

Q2. 研究者を志したきっかけは?

初めて見たサンゴ礁があまりにも綺麗で、また同時にたくさんの不思議を感じました。その美しさと不思議さに対峙するうちに、いつの間にか科学者を目指していました。

Q3. サンゴ礁の魅力について教えてください

サンゴ礁の魅力は一言では表せません。サンゴ礁の美しさ、多様性、そして色々な世代や文化、異なる背景を持つ人々を引きつけます。
また、サンゴ礁のもつ儚さ、敏感さにも色々なことを考えさせられます。一度でもその不思議を知ろうとして足を踏みいれたが最後、そこから2度と出ることができませんでした。それほどに魅力的な研究対象がサンゴ礁です。

Q4. 小中高生へのメッセージ

小中高生のみなさん、次世代はあなたたちのものです。
今の学校の勉強は面白いですか。サンゴ礁には美しさと不思議さといろいろな面白いことが詰まっています。勉強に疲れたら、ぜひサンゴ礁に来て、いろいろ感じてみてください。今は勉強が大変でしょうけれど、いろいろな経験をして感性を磨くというのは大事なことだと思います。
いつか、サンゴ礁でお会いしましょう。

イベントのチラシ

ご自由にダウンロードしてSNSに投稿したり、他の方にご案内したりなどにお使いください。

主催:日本サンゴ礁学会教育普及啓発委員会

このイベントは日本サンゴ礁学会第23回大会中に行われます。
お問い合わせ:
coralreefseducationoutreachgmail.com
○を@に変更してください。

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