ご挨拶

第66回 日本脂質生化学会を開催するにあたって


実行委員長   

静岡県立大学 食品栄養科学部 三浦 進司

 

2024年6月6日(木)、7日(金)の両日、第66回日本脂質生化学会研究集会を静岡市清水区の静岡市東部勤労者福祉センター「清水テルサ」で開催いたします。本会開催にあたり、会員の皆様の多大なご支援・ご協力に心より感謝申し上げます。歴史ある日本脂質生化学会を主催するのはたいへん光栄なことであり、その重責を感じております。前回に続き、対面開催とし、脂質研究の魅力・醍醐味を直接感じながら、熱くご討論いただけるような会にしたいと考えています。


学会のホームページで確認したところ、1971年に舟橋三郎先生と松本亮先生が第13回研究集会を開催されて以来、静岡での開催は53年ぶりとなります。大学図書館にあった「脂質生化学研究 Vol.13」には、静岡県立中央図書館を会場に、一講演あたり25分で53演題が掲載されていました。また、手書きのプログラム、会場案内図、講演要旨が、時の流れを感じさせました。その一方で、演題にはスフィンゴ脂質、糖脂質、過酸化脂質、レチノール結合タンパク質、コレステロール生合成についての研究発表や、脂質多様性についての内容もあり、現在おこなわれている多くの研究の礎となっていることを実感しました。


さて、静岡市は、徳川家康公が人生の約3分の1を過ごされた地であり、幼少時代に教育を受けたとされる臨済寺、大御所時代に居城となった駿府城、家康公をお祀りした久能山東照宮などゆかりの地を多数有します。美しい富士山と駿河湾、温暖な気候や美味しい食事など、家康公が静岡を愛された理由を実感していただけることと存じます。会場は静岡市の玄関口であるJR静岡駅から東海道線で東へ3駅のJR清水駅の近くです。会場から徒歩圏内に「清水魚市場 河岸の市」があり、新鮮な魚介類や海産物が販売されているほか、食事処もございます。また、お天気にもよりますが、会場からは、世界文化遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」を構成する富士山、三保の松原を始め、清水港、伊豆半島がご覧いただけます。セッションの合間にどうぞ静岡をご満喫ください。


第66回研究集会の特別講演とシンポジウムは「脂質多様性」をキーワードに準備しています。特別講演は、島野仁先生(筑波大学教授)が「Lipid Codeと病態シグナチュア 〜Lipid Medicineにむけて〜」と題してご講演くださいます。脂肪酸伸長酵素による脂質多様性の形成が生体機能や疾患発症にどのように関与するのかなどをご紹介いただきます。また、初日の午後と2日目の午前にシンポジウム1と2を開催します。シンポジウム1は青木淳賢先生(東京大学)と進藤英雄先生(国立国際医療研究センター)に「脂質多様性の分子機序と生物学的意義」というタイトルで企画いただきました。脂質多様性の形成に深く関与するアシル基転移酵素、アシルCoA合成酵素を中心に、これまでの研究成果とこれからの展望についてご紹介いただきます。シンポジウム2は、梅田会長から若手研究者をオーガナイザーにしたシンポジウムをご提案いただきましたので、新進気鋭の若手研究者である西村多喜先生(東京大学)と土谷正樹先生(静岡県立大学)に「脂質を見る・捉える革新的な新技術」というタイトルで企画いただきました。抽出物の放射線/質量分析などの生化学的脂質解析とは違った異分野手法(化学・物理)や、新発想を積極的に取り入れた新しい脂質プローブ・バイオセンサーを用いて、新たな観点から脂質を見よう・捉えようとする新技術について先駆的な研究をご紹介いただきます。一般演題は15分枠の口頭発表を基本としますが、10分枠のショートトークも設定します。若手および学生を対象とした優秀発表賞を設ける予定ですので、皆さんの積極的な発表をお待ちしております。また、株式会社島津製作所と株式会社エービー・サイエックスのご支援を得て、二つのランチョンセミナー開催を予定しています。


冒頭でも述べましたが、我が国の脂質生化学研究は、先達からの長い研究の歴史を背景にして、常に世界をリードしており、数多くの発見と成果を挙げています。第66回研究集会においても、「未来の研究の礎」になるような研究成果を発表・議論いただいて、本研究集会が脂質生化学研究のさらなる発展に寄与できればと考えております。


多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。